マサチューセッツ総合病院のAI、人間と同程度の正確さで脳出血を検出

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AI システムで分析した脳のスキャン映像

National Center for Biotechnology Information(国立生物工学情報センター)の報告によると、頭蓋内出血、つまり脳出血は2番目に多い脳卒中のタイプである。脳出血で脳の中や周囲の血流が止められ酸素が奪われる。だからこそ治療にはタイミングが重要となる。3分か4分後には脳細胞が死に始めるのだ。

幸いなことに、人工知能(AI)は診断の最前線における進歩を保証している。先月(2018年12月)ある論文(An explainable deep-learning algorithm for the detection of acute intracranial hemorrhages from small datasets/小さなデータセットから急性脳内出血を検知するための、説明可能な深層学習アルゴリズム)が Nature Biomedical Engineering のジャーナルで発表され、ボストンのマサチューセッツ総合病院の研究者が急性脳内出血(ICH)を高い精度で検出する深層学習アルゴリズムについて説明している。

この発表のおよそ1ヶ月前には、カリフォルニア大学バークレー校の研究者が脳スキャンから6年先までのアルツハイマー病を予測する AI システムを披露した。

ハーバード大学 Engineering and Applied Sciences の大学院生であり、この研究の2人の主執筆者のうちの1人である Hyunkwang Lee 氏は MedicalXpress にこう語った。

深層学習を使った研究に「スモールデータ」や「説明可能な」という言葉を使うのは、少々逆説的かもしれません。しかしながら、医療分野では高品質なビッグデータを集めることが極めて困難なのです。データの一貫性を保つためにデータセットを分類する複数の専門家を集めることが非常に重要です。このプロセスには費用も時間も、とてもかかります。

研究者は904枚の頭部 CT スキャン画像からなるデータセットを使って AI をトレーニングした。このスキャンは別々の角度から撮られた一連の X 線画像を合わせたものであり、それぞれが約40種類の画像からなっている。5名の神経放射線科医のチームがそれぞれを分類し、5種類の出血タイプのどれになるのかを特定した。

モデルはそれぞれのスキャンを取り込む際に、分析の精度を上げるため変換を行った。たとえば、画像のコントラストや明るさを調整したり、直前・直後の画像を精査して出血の兆候の中からアーチファクトを選り分けたりといったことだ。

ICH あり100スキャンとなし100スキャンからなるレトロスペクティブ(後ろ向き)なセットと、出血あり79スキャンと出血なし117スキャンからなるプロスペクティブ(前向き)なセットという別々の2つのデータセットを使ったテストにおいて、AI システムは非常に良好なパフォーマンスを示した。レトロスペクティブなセットでは専門的な放射線医師と同等のパフォーマンスを示した。そしてプロスペクティブなセットである2番目のデータセットの評価においては、非専門家の人間よりも優れた正確さを達成した。

このモデルのもう1つの新しい点は、その説明可能なデザインである。決断を下す理論的根拠を透明化しようとする取り組みの中で、チームは AI システムにレビューをさせ、5つの出血タイプの特徴それぞれを明確に示すスキャンを訓練用データセットから強調表示させた。アルゴリズムが下した予測には、類似の分析結果となったスキャン画像グループが添えられる。

論文の共著者の1人である Michael Lev 博士は、このような AI システムはいつの日か熟達した臨床医にセカンドオピニオンを提供できるようになるかもしれない、もしくは施設や医療プロバイダに熟達した神経放射線科医がいないという場合に介入できるかもしれないと述べる。

神経放射線科医の訓練を受けた頼れる「バーチャルなセカンドオピニオン」が利用できるようなれば、そういったサービス提供者により多くの効率性や自信、手助けを提供できるようになり、患者も適切な手当てを受けることが確実にできるようになるでしょう。

間もなくチームはこのシステムを臨床領域にも展開し、そのパフォーマンスをより多くの症例でさらに確認する計画である。共著者の Shahein Tajmir 博士は、マサチューセッツ総合病院における研究はすでに「こういったツールの適用を広める」ことを見越したプラットフォームに取り組み始めていると述べた。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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