AIヘッドハント「scouty」がHR領域以外にも拡大へーーユーザーが自分の情報を確認可能、社名は「LAPRAS」に【島田氏インタビュー】

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scouty(社名変更後はLAPRAS)代表取締役の島田寛基氏

ニュースサマリ:エンジニア向けのAIヘッドハンティングscoutyは3月4日、クローリングおよび機械学習技術を活用し、HR領域以外の展開を開始することを公表した。具体的には2019年春を目処に社名を「LAPRAS(ラプラス)」変更し、サービスとしてはオープンデータから構成したユーザーに関する情報を自分自身で確認、一部編集できるようになる。

scoutyのオープンβ版公開は2017年5月。インターネット上に公開されているエンジニアのブログやGitHubなどのオープンデータを解析し、企業とのマッチングを促進させる。同社によると、2018年3月までの累計導入社数は100社以上で、IT、ネット系のベンチャー企業が積極的に活用している。

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scouty利用企業(一部)

話題のポイント:かねてから注目していた「AIヘッドハンティング」のscoutyが社名を変更し、業務内容を拡大させるそうです。同社に確認したところ導入企業が増加傾向で、月次で10社以上のペースで拡大しているとか。知人企業でも採用チャネルとして上位にあるという話も聞いています。

scoutyは見方によってガラリと印象の変わるサービスです。

いわゆる「ヘッドハント」的要素が強く、ウェブ上に公開している情報を採用目的で収集閲覧してお仕事しませんかと提案してきます。転職意欲がない人にとっては余計なお世話ですし、何よりオープンデータとは言え、その人にとっては意図しない使途になりますからひっかかりを感じる人もいるかもしれません。

一方で逆に仕事が欲しいと思っていろいろな情報を発信している立場の人からすれば、勝手にまとめて提案してくれるわけですから機会があればウェルカム、となるわけです。

今回のサービス変更では、これまでscouty側でまとめた情報が企業側のみしか閲覧できなかったのに対して、ユーザーの側でも確認、編集できるようになる、というものになります。同社に確認したところ、サービスにソーシャルアカウントなどでログインすると、該当するレジュメがある場合には表示されるそうです。

また、現行でもありますが、こういった情報を検索して欲しくない場合はページもしくはサービスサイトからオプトアウトができるようにもなっています。

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scoutyのサービスイメージ(同社提供)

非常にアグレッシブかつテクノロジードリブンなサービスである一方、データを正しく伝えなければ単なるスパムになる可能性もあります。そこでscouty(社名変更後はLAPRAS)代表取締役の島田寛基さんにサービス変更の意図や今後のビジョンについてショートインタビューしてきました(太字の質問は全て筆者、回答は島田氏)。

scoutyは従来の「転職したい」顕在層ではなく、潜在的に転職のポテンシャルがある層を掘り起こすというアイデアで画期的だった。サービス公開から1年半ほど経過して各社の評価と課題は

島田:最近は働き方・採用手法の多様化により優秀な人材が転職市場に現れにくい傾向にあり、エージェント・既存の転職媒体で優秀な人材(特にエンジニアにおいては)が採用しにくくなっています。scoutyは転職媒体にいる候補者層とは違う層をデータベースとして持っているので、その点に価値を感じてくださる企業が多いです。

逆に課題感としては、オープンデータにあるGitHubや技術ブログの情報だけでは人事単体では能力を判定しきれないといったものがあります。また、転職前提ではないので、マッチング成立までに時間やノウハウが必要という課題もあります。

また、今回のリリースによりユーザー側に直接情報を入力してもらったり新規SNSを連携してもらうことによって情報を増やしたり、転職意思を直接取得するという意図もあります。

今回のシステム変更で具体的にユーザーは何が可能になる

島田:いままではscoutyがある意味で候補者に関する情報を「独占」するような形になっていましたが、弊社のバリューである「オープンであれ」に反する形であったので、情報提供者である本人に情報を返すというのが大きな枠組みです。

それによりユーザーは自分の情報がどのような形で収集されているかを知ることができるようになるので、まだ紐付いていないSNSのアカウントを紐づけたり、情報を編集したりすることが可能になります。

ユーザー側で積極的に利用したい場合、どういった情報や価値・体験を得られるのか

島田:通常は「登録➝情報を入力➝企業に興味を持たれる」という順番ですが、scoutyではすでに情報があり、企業が興味を持っているというところから登録するという順番なので、既存の転職サービスとは体験が異なると思います。候補者は自分の市場価値を理解したり、自分の潜在的な転職の選択肢を手に入れることができるというベネフィットがあります。

現在はエンジニアのようなスペシャリストにフォーカスしているが、これを別の職務に拡大することは考えているのか

島田:進出の意向はあって、現在総合職向け製品の仮説検証をすすめています。ビジネスSNSやクラウドソーシングサービス、MOOCのほか、読書記録サービスのようなサービスから興味分野やスキルを抽出するというやり方を検討しています。

SNSのほかにも会社ブログでのフィードや個人ブログのようなテキスト媒体に関しても自然言語処理技術を利用して情報抽出を行う予定です。また今回のリリースで、どれくらい非エンジニアの方が興味を示すのかという点も職種拡大における重要な要素と考えています。

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話題を少し変える。社名変更があったが改めてビジョンを知りたい

島田:新しい社名「LAPRAS」というのは、「ラプラスの魔物」という19世紀の物理学者の提唱した考え方が基になっています。これは「もしも全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつそれらのデータを解析できるだけの知性が存在するとすれば、その知性にはとっては偶然がなく、未来も過去同然に予測できるであろう」という考え方です。

LAPRASは今後、人に関するあらゆるデータを集め、本人のことを本人以上に知っている存在になります。そこからその人が知るべくして知る情報を伝え、その人も気づいていないような選択肢を提案をします。それは極度にパーソナライズされていて、その提案の上では天職との出会いも偶然ではなくなります。

人が情報を出すことで新しい評価が生まれ、自分を再発見できるという概念はこれからの働き方・生き方を考えてもチャンスを増やす上で重要と思う。一方、Googleが掲げていた「Don’t Be Evil」のように情報を扱う側にも高い倫理観が求められる

島田:確かに提案する内容が提案された側にとって有益でなければスパムと同じになってしまいます。オープンデータや、今回発表したように候補者から集めるクローズドデータを融合させて、提供する情報についても精度を高めていきます。

具体的な業種など拡大のイメージは

島田:そうですね。今後は様々な領域への進出し、様々な提案ができるプロダクトになるということを視野に入れています。現在は職業の提案(スカウト)のみを行いますが、今後は 持つべき物・知るべき機会・会うべき人、そういったものに対しても提案を行うようになります。

したがって、広告業界やマーケティングツールといった業界にも進出を検討しています。今回のサービスは、人とLAPRASがインタラクションする接点・窓口としても役割を果たします。

scoutyというサービス名ではその大きな世界観を表現しきれなかったので社名変更をし、LAPRASのリリースに合わせて、ミッション・バリュー・アクションアジェンダといったコーポレート・アイデンティティも公開予定です。

ありがとうございました。

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