インドの格安ホテル予約スタートアップOYO、SoftBank Vision Fundから10億米ドルを調達——ホテル予約の枠を超えた壮大な目標を描く

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インドのホスピタリティ企業 Oyo Rooms は2023年までに世界最大のホテルチェーンになりたいとする野望を明らかにしている。しかし最近噂されている買収を見ると、住宅やパーティ会場、そしてもしかしたら職場も含む他の分野でも大きな役割を果たそうとしていることが仄めかされている。

2013年のローンチ以来、Oyo はインド、中国、マレーシア、ネパール、イギリス、アラブ首長国連邦、インドネシア、そしてフィリピンの8か国で500以上の都市に拡大してきた。ここには1万3,000以上のフランチャイズ方式とリース方式のホテルならびに3,000戸の住宅が含まれ、換算すると45万室ほどになる。

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Oyo の CEO 兼設立者 Ritesh Agarwal 氏
Photo credit: Oyo

Oyo のビジネスモデルはフランチャイズ方式とリース方式のホテルを中心に据えている。Oyo Hotels and Homes の設立者兼グループ CEO の Ritesh Agarwal 氏はこう説明する。

弊社はノーブランドのホテルのオーナーを訪ね、フランチャイズ方式またはリース方式の契約を結び、Oyo ファミリーに加わってもらっています。

Oyo のプラットフォームに参加するには、一定以上のスレッドカウントの清潔で白いリネン、フリー Wi-Fi、無料の朝食、清潔な洗面所といったような、およそ30の基準を満たす必要がある。ホテルのオーナーは予約ごとに Oyo に手数料を支払う。

毎晩、ほぼ25万人が Oyo で枕に頭を預けています。

Agarwal 氏は言う。リピーターのユーザベースだけでも前年比214%の成長をしている。

世界最大のホテルチェーンになるための努力の一環として、Oyo はインドネシアの RedDoorz のような競合がすでに足場を築いている東南アジア市場へ切り込もうと歩を進めている。Oyo は2023年までにこの地域だけで200万室以上を目指している。

2018年10月、Oyo はインドネシアに30のホテルと1,000室を持って参入した。ほんの3ヶ月間に同社の経営は5倍に成長し、16都市で4,100室以上となった。同社はインドネシアでの存在感を強化するために1億米ドルを支出する計画である。

今年1月にはフィリピンに参入し、同国への投資のために5,000万米ドルを確保した。重要な3都市にフランチャイズ方式とリース方式のホテルを21か所、500室以上を持っており、これを2万室まで増やすことを目指している。

弊社はこの市場に大きく賭けています。またこの市場での能力を強化し東南アジアにおける次の成長の波を推進するために、前回の資金調達ラウンドから2億米ドルを割り当てています。

Agarwal 氏は述べる。

ヨーロッパや中東と並んで、この地域は需給の不均衡や、ホスピタリティのマーケットプレイスが細分化されていることが特徴です。

職場、遊び場、そして祝いの場の多様化

しかしヨーロッパでは Oyo の戦略は違う。ヨーロッパには大きなチャンスがありミッドマーケットの宿泊施設への需要が大きいことを悟った同社は、この市場に Oyo Townhouse というブランドで参入し、同社が「野心的な生活空間」と称するものに注力している。また社用旅行客、特に「仕事と遊びをシームレスに切り替えることを好む」ミレニアル世代を引き付けている。

だからこそ現代的な設計美学といった特徴以外にも、Oyo Townhouse は高速インターネット、ホワイトボード、無料プリンター、ビジネスサービス、雑誌、Netflix、Kindle、そして年中無休の厨房を備えているのだ。

2018年に Oyo は80室を提供する4つの Townhouse と共にイギリス市場へと参入した。同社はインドにも68の Townhouse を持っているが、2019年にはこれを500まで増加させる計画である。またアメリカ市場にも参入し、ミレニアル世代や中所得者に手頃な居住空間を提供する予定だと伝えられている。

これらのタウンハウスや民家は、2018年3月に Oyo がチェンナイを拠点とするサービス付きアパート運営企業 Novascotia Boutique Homes を買収したことで補完されたものだ。Novascotia が持つ不動産は、レジャーやビジネスの旅行客向けにホテルの代替としてアパートを提供する Oyo Silverkey の一部となった。

Photo credit: Oyo

Oyo はウェディング業界にも目を向けている。2018年7月、Auto Party というウェディングサービスのプラットフォーム兼アグリゲータをローンチし、そして翌月にはウェディング業者およびベンダーのオンラインマーケットプレイスである Weddingz を買収した

この決定が持ち上がったのは、Oyo Hotels の MICE(Meeting/会議、Incentive/招待旅行、Conference/カンファレンス、Exhibition/展示会の頭文字をとったもの)の顧客が増加を続け、結婚式のような大きなイベントを催す広い会場を探し始めたときであった。同社は市場が非常に細分化されており顧客が複数の業者と調整を行わなければならないということを知り、パーティ会場やウェディング業者向けの1か所に集約されたワンストップショップを提供するチャンスをそこに見出した。

Oyo はまた関連技術の買収にも関心を向けており、それが2018年7月にムンバイを拠点とする AblePlus Solutions を買収した理由である。この IoT スタートアップは不動産の遠隔でのモニタリングと管理を可能にしている。

最近の報告では、Oyo は2,800万米ドル前後でデリーを拠点とするコワーキングスペース業者 Innov8を買収するための詳細な話し合いに入っていることも明らかになっている。これは同社がワーキングスペースビジネスへの参入を始めたということになるだろう。

しかしながら、Tech in Asia がニュースを確認するために尋ねたところ、Agarwal 氏はコメントを拒否した。

現時点でこれ以上発表することはありません。

資金調達と財務の健全性

大規模な資金調達ラウンドによって Oyo は派手に買収して回り、新たな市場へと分け入っていくことが可能となっている。2018年12月、Oyo は Grab から1億300万米ドルの投資を受けた。そして今年2月、日本の SoftBank Vision Fund がリードする10億米ドルの資金調達ラウンドを完了させ、同社の価値は50億米ドルとなった。

2018年、Oyo の施設の年間宿泊数は2017年の1,300万室から7,500万室へと世界的に増加した。同期間中のホテル予約では18億米ドルを記録し、前年の4億米ドルからアップしている。

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Photo credit: Oyo

Oyo が成長を促進させるためにさらなる資金を調達することは、近い将来にはないようだ。Agarwal 氏は「これ以上の資金を調達することなしに」拡大する計画であるとしている。

Oyo のビジョンに挑戦するには十分な資金か、もしくは別のユニコーンが必要とされるだろう。実際、インドでは今年1月に人気のデジタルウォレット Paytm(10億米ドル以上の価値がある Paytm Mall の所有者)がホテル予約サービスの NightStay を買収した。同社は同じような企業を買収し、2020年までにアジアの旅行業界において有力なプレイヤーとなる計画である。

Paytm のプラットフォームでもユーザはイベントや航空券、列車やバスのチケットを予約することができ、ホスピタリティのエコシステムを作り上げることができるかもしれない。

インドネシアでは競合である RedDoorz が Oyo に触発されたビジネスモデルで運営している。同社はインドネシア、フィリピン、シンガポール、ベトナムに500か所以上の施設を持っている。

しかし Oyo のプラットフォームに毎月6万4,000室が追加されているという現在の記録を見れば、この業界における世界的に有力なプレイヤーとしての地位が覆されることは困難であると言えるかもしれない。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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