「血を分ける」投資家の姿勢を示せーー新&東が50億円「W ventures」設立、狙うは“世界を変えるコンシューマービジネス”

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写真左から:W ventures 代表パートナーの新和博氏と東明宏氏

ニュースサマリ:コンシューマー向けテクノロジースタートアップへの投資を手がけるW ventures(ダブリューベンチャーズ)は4月24日、同社1号ファンドとなる「W ventures投資事業有限責任組合」の組成を公表した。ファンド規模は50億円で、ミクシィが事業会社として単独LP出資する。

コンシューマー向けのテクノロジーサービスを中心に、ライフスタイル、エンターテインメント、スポーツ分野のスタートアップに投資する。対象ステージはシード・アーリー期で、フォローオン(追加出資)含め、1社あたり最大5億円までの出資が可能。初期投資としては1000万円から1億円を目処とし、30社から50社への投資を目指す。

創業者の新和博氏は2011年よりミクシィにてアライアンスや事業買収等を手がけた後、2013年アイ・マーキュリーキャピタルの立ち上げをした人物。LINEに買収されたFIVEをはじめ、イエッティ、ラクスルやポケットコンシェルジュなどへの支援実績を持つ。

また、W venturesを共同創業した東明宏氏は2012年からグロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)でベンチャー投資を手がけ、エブリーやクリーマ、ランサーズなどへの投資実績がある。

話題のポイント:国内テック系スタートアップ投資の著名ベンチャーキャピタリストお二人が新ファンド・新会社設立です。しかもテーマは「C向け」サービスと、生活シーンを一気に変えるかもしれないスタートアップに注力するそうです。

先日発表があったGCPユニコーンファンドでもお聞きしましたが、VC側も資金提供だけでなく、HRやIR/PR・バックオフィスなど、ハンズオンだけでカバーできない支援体制を組んできています。新会社となったW venturesにはどのような特色があるのでしょうか。お二人にお話お伺いしてきました(太文字の質問は全て筆者)。

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新さんはアイ・マーキュリーキャピタルを運営していたが、今回、改めて同社を新設している。一方でLP自体はミクシィ100%と変更がないようにも見える。スキームを変更した理由は

新:ミクシィさんとしてはベンチャー出資するにあたりキャピタルゲイン以上にスタートアップとの協業やM&Aに期待しています。ただミクシィの中の立場として、協業やM&Aにつながる手前の段階で投資の意思決定をしようとするとなかなかフラットに評価し辛い場合があるんです。

評価しづらいとは具体的に

新:本当はすごく良いサービスだけど社内事業と近い領域のため見送らざるを得ないケースや、事業の成長性より社内事業との親和性を評価し過ぎてリターンを出せないというケースです。

シナジーよりも純粋投資に近い意思決定を持ったということか

東:はい。大きな投資テーマはミクシィさんとも目線を合わせつつ、意思決定を独立させてフラットな目線で大きくなりそうな会社に投資することが、中長期的にはミクシィさんにもプラスになると判断した結果です。

新:W venturesは、独立系VCとCVCのいいところ取りをしたような仕組みになっています。投資テーマはミクシィさんの目指す事業領域との親和性が高いものになっていますが、個別の出資判断はW venturesのみで決めることになります。

ミクシィとの関係性はどのように考えている

東:投資に関してはW venturesの戦略に基づいた判断ですので、ミクシィさんのVCとして機能しているわけではありません。一方、フラットな立ち位置から、事業連携することによってWin-Winの関係が築けそうであれば積極的にミクシィさんの事業部に繋げていく想定もあります。

日本のVCの多くには事業会社がLPとして入っており、事業連携をされているのは普通ですが、我々はLPがミクシィさん1社ということで深い事業連携が可能になるのではないかと思います。

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話をファンドに変える。多数のVCがひしめき合う中、ポジションは

新:まずは「C向けで事業を立ち上げたら最初に相談をするVC」としてポジションを確立したいです。シード・アーリーステージのC向けサービスにある程度まとまった金額(初回1億円まで対応)を投資するプレイヤーは多くはないと思っているので、どんどん投資を進めていきたいです。

ファンドとして「どんどん失敗しよう」という哲学を掲げた。理由は

新:アーリー期のベンチャーに穴があるのは当然で、事業に「失敗はつきもの」です。むしろ、成功は「失敗」を高速で「学び」に変えていけるか、というのがポイントになります。私たちは起業家に対して何でも共有してほしい、チームの一員として一緒に失敗を成功に変えていきたい、という姿勢を示すという意味でこのフィロソフィーを掲げました。

東:起業家にとって「血を分ける」投資家がどういう姿勢かを確認することはとても大事なことだと考えてます。

C向けはどうしても起業家・創業者のセンスを問われる。どこで投資判断する

東:確かに難しいですが、やはりユーザーが欲しいものをわかってるというのはシンプルで重要なポイントです。またこれまでにお会いした方々で優れた起業家は「センス」を因数分解して説明できるんですよね。

新:シリーズA以前はPMFしてませんから「投資・金融だけ」をやってきた人から見ると、資産が何もなく投資の見極めは極めて難しいと思います。しかし私たちは「投資経験」と共に「事業経験」があります。会社が対象としているマーケットを冷静に分析して「事業がどこまで進んでいるのか(離陸寸前なのか、まだまだなのか)」を掴んで同じ目線でコミュニケーションできるのは強みと考えてますよ。

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新しい概念を提案する場合、年代的には若い人が強い傾向がある。一方で「法人」としての強さは経験がないと難しい。どのようにサポートするのか

東:例えばサービスのコミュニケーション箇所は若い人に任せますが、ビジネスの中心になるマネタイズは業界に知見がある人に入ってもらう。こういうチームづくりが大切になると考えています。

採用支援はどのVCも課題と感じてそれぞれ取り組んでいる。どのような独自色を出す

東:採用って科学できる箇所があると考えています。W venturesでも新さんにある診断テストをやってもらってお互いの関係性を調べたんですね。そうしたら一定のストレスはあるけど、お互いの性格に補完関係が見られた。過去に投資先にもやってもらったりしてるんですが、チーム作りにおける科学はノウハウとして持っていたいです。

シード期の支援をする場合、特に経営陣の人材を補強する必要性が高い。どのようにマッチングする

新:具体的には言えませんが、独自のタレントプールを持っています。

グロービス・キャピタル・パートナーズの新ファンドでも話題にしたが、資金以外の支援手法が属人的なハンズオンからチーム戦に変化している。どのような方法を考えている

新:「採用支援」「PR支援」「調達支援」など、スタートアップが共通して抱える課題でかつナレッジが蓄積されていく部分については、W ventures投資先内でシェアができるような体制を作ろうと思っています。

まずは外部パートナーと連携し、その上で、ある程度成功パターンが見えてきた段階で内製化して投資先サポートチームを作る計画です。

ありがとうございました。

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