戦いのスタイルは「究極のハンズオン」ーー天野&堤氏の150億円新ファンド「STRIVE(ストライブ)」始動、採用チーム“Talent Partner”も

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STRIVEの共同代表パートナー、天野雄介氏と堤達生氏

ニュースサマリ:グリーベンチャーズおよびベンチャーキャピタルファンドを運用する天野雄介氏、堤達生氏は5月14日、新ファンド「STRIVE III投資事業有限責任組合(以下、STRIVE・ストライブ)」の設立、およびファンド出資の一次募集を完了したことを公表した。天野氏、堤氏、法人としてのグリーベンチャーズが設立した「STRIVE III有限責任事業組合」が同ファンドの無限責任組合員となる。

LPとして出資したのは中小企業基盤整備機構、グリー、みずほ銀行、みずほキャピタルなど。今年の年末まで引き続き出資を募り、最終的なファンド規模は150億円になる見込み。

また、天野氏と堤氏がこれまでファンドの共同代表パートナーとして運用をしてきた「グリーベンチャーズ」の呼称を改める。新名称は「STRIVE」で、起業家の事業成長、企業としての組織体を強くするバリューアップ専門チームやコミュニティを新設する。

STRIVEでは日本および東南アジア、インドのインターネット企業全般を投資対象とする。従来シードを中心に投資してきたステージをアーリー(プレAラウンドからB)に切り替え、一件あたりの投資額も2億円から最大で10億円に拡大する。

天野氏、堤氏がこれまでに手がけてきたファンドの総額は約200億円。2011年の運用開始以来、ジーニーやFIVE、Retty、ウェルスナビ、Kaizen Platformなど約60社に投資を実行した。

話題のポイント:国内独立系ベンチャーキャピタリストとして常に名前が挙がる天野氏、堤氏が大型ファンドを公表しました。お二人が共同代表として運用する3つめのファンドで、キーワードは泥臭いまでの伴走です。本誌でその支援体制を中心に新ファンドの特色についてお伺いしてきました(太字の質問は全て筆者)。

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グリーベンチャーズからブランドを変更した

天野:3号ファンド(STRIVE III)の設立に際して、ファンドのリブランディングやスローガン等の見直しを検討したんです。その過程で、新しいブランドとして、「グリーベンチャーズ」の代わりに今後は「STRIVE」を使おうと。

グリーもLPとしては参加しているが、ファンド創設当初からシナジー投資をするCVCとしての印象はほとんどなかった。元々のコンセプトだった純投資にブランドの方を近づけたということか

天野:そうですね。その認識で間違いないです。

堤:あと、これまでの投資の主軸をシードからアーリー(プレA/シリーズA/B)に変更し、出資するチケットサイズは追加出資含め、1社あたり5億円と大幅に増額しました。最低金額は2億円、最大10億円までの投資が可能です。また、投資スタイルは3号ファンドも「リード投資xハンズオン支援」のスタイルを維持し、特にハンズオン支援体制を強化していきます。

シリーズA前後には独立系としてグロービス・キャピタル・パートナーズやインキュベイトファンド、B Dash Ventures、グローバル・ブレイン、X Tech Ventures、W venturesなどなど数多くの選択肢がある。支援体制としてどのような特色を出す

天野:一言で言えば「積極関与」です。現在、国内10名、海外3名の体制なのですが、主に国内10名の内、3名が支援チームになっています。また、そもそも私たちパートナー自身がこれまでもスタートアップの経営支援に深く関与しています。例えばウェルスナビさんについては本当に出資した創業期のタイミングから経営陣としてチームづくりなどにコミットしてきました。

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千葉道場など、エンジェルやファンドなどが独自にクローズドのコミュニティを作ってかなり深いノウハウを共有することが多くなった

天野:そうですね、コミュニティによる共有もそうですし、ハンズオンする支援領域も例えば外部のプロフェッショナルと連携して、エグゼクティブ向けのコーチングやブランドコンサルティングなど幅広く手がける計画です。また、必要に応じてキャピタリストのフルタイム派遣も引き続き実施します。

堤:投資先ポートフォリオやファンド出資者間のコミュニティ「STRIVE α」を立ち上げているのですが、ここの運営を強化して、企業間のネットワーキングやノウハウ共有を促進させることも考えています。

属人的な支援についてはお二人の力が心強いと思うが、今後、支援先の数が増えてきた時に破綻する。組織的な対応が今回のバリューアップチームだと思うが、具体的にどのような機能を持つ

天野:前提として起業家と経営者って一緒じゃないんですよね。この「経営者になれるか」というのが伴走のポイントです。経営者として必要なコーチングの技術やブランドを外部パートナーの力を借り、身に着ける機会を提供しているのはひとつの特徴かもしれません。一方で、私たちもいつまでも経営にコミットしたいわけではありません。目的は経営者として早期に独り立ちできる状況を作ることです。

堤:元々、私たちが個々に支援してきたノウハウを共有資産にした、というイメージです。例えば次のファイナンスをいかに成功に導くか、というのも当然ながら大切な視点です。しかし実際に経営に入ってみると、そもそも何を追いかけたらいいかというKPI自体曖昧な場合もあります。こういうモニタリングだったり各社バラバラの問題を一緒に考えて解く。

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企業としての成長に必要な個別課題を見つけて最適化し、採用など面で支援できる箇所はチームとして対応する

堤:特に採用支援には力を入れますね。新設した人事や採用のプロフェッショナルによる「Talent Partner」チームは、支援先を横串するような形での採用ハンズオン支援を予定しています。

天野:この10年で日本のVCの数(CVC含めて)もファンドレイズ額も増加傾向にあり、このトレンドはしばらく続くと思います。単にリスクマネーの供給というだけではVCとしては生き残れないんじゃないでしょうか。

私たちが目指すのは究極のハンズオンVCであり、VCという枠を超えて起業家をあらゆる角度から徹底的にサポートしていくことで、成功へと導いていく存在になりたいと思っています。

最後に。企業間による協業やノウハウ連携についてもファンドによって方針が異なるが、オープンイノベーションについてはどのような視点を持っている

天野:LPに機関投資家が含まれるため、LPとスタートアップとの連携は積極的には考えてはいません。ただ、大企業からのカーブアウト案件などは、既にMyRefer社などでも実績がありますからSTRIVE Ⅲからも積極的にやっていきたいと考えています。

ありがとうございました。

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