インシュアテックのjustInCase、金融庁からサンドボックス認定を取得——名実ともにP2P保険の提供が可能に

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Image credit: justInCase

<6日午前11次更新> 那須川氏の役職を訂正。

東京を拠点とするインシュアテック・スタートアップの justInCase は6日、成長戦略に向けた新技術の社会実装のための「規制のサンドボックス制度」の適用を受け、金融庁から事業者認定を受けたことを明らかにした。内閣官房の公開する認定プロジェクト一覧によれば、インシュアテックスタートアップとしては唯一とみられる。

今回の措置を受けて、justInCase は向こう1年間にわたり、P2P 保険の提供が名実共に可能になる。同社は「わりかん保険(仮称、商標登録中)」の名前でこのサービスを開発中で、近日中にサービスをローンチする計画だ。

P2P 保険はこれまで前例が無いとの理由から、日本国内でのサービスの運用には制約があった。この制約を回避するために、justInCase ではこれまでに関東財務局から少額短期保険業者としての登録を受け、P2P 保険のコンセプトを擬似的に実現する形でサービスを提供してきた。

少額短期保険業者の登録は2017年3月に開始し、467日かけて昨年登録が完了。そこから、サンドボックス認定を受けるまで、さらに500日を要した。今回のサンドボックス認定により、justInCase は名実共に P2P 保険を提供可能な状態に漕ぎ着けたことになる。

一般的に、P2P 保険では友達同士や同じリスクに対する保険に興味のある集団(プール)で保険料の拠出を行い、このプールから保険金が支払われる仕組みを採用している。P2P 保険は、従来型の保険に比べリスク算出がしやすく、従来できなかった保険商品が開発しやすい、保険金詐欺やモラルハザードの問題が発生しにくい、(キャッシュバックなどで)事後的に保険料を安く抑えられる、などのメリットがある。

justInCase が今回、P2P 保険を適用するのは「がん保険」の分野だ。がん保険に「P2P 保険特約」のような形で契約を付帯することにより、この部分が共済のような形で機能する予定。既存のがん保険より低価格が実現され、保険料は後払いとなることが特徴だ。

P2P 保険の分野には、今年4月にソフトバンクビジョンファンドらからシリーズ D ラウンドで3億米ドルを調達した Lemonade、香港大富豪の李嘉誠氏の投資会社 Horizons Ventures(維港投資)などから1,500万米ドル以上を調達したベルリンのスタートアップ Friendsurance などがある。

ただ、justInCase が目指す P2P 保険のカタチについて、現在あるものとしては、Alibaba(阿里巴巴)傘下の Ant Financial(螞蟻金融) が昨年リリースした「Xianghubao(相互宝)が最も近いだろう」と、justInCase CEO の畑加寿也氏は語っている。Xianghubao は AliPay(支付宝)ユーザ向けの P2P 保険サービスで、加入にあたっては、ユーザの SNS での言動、購買記録、支払情報などを元にした「Sesami Credit Score(芝麻信用分)」で650点以上が必要になる。

justInCase は2016年、保険数理コンサル大手 Milliman 出身で ALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)などリスク管理サービスを保険会社に提供してきた畑加寿也氏(現 CEO)、資産と負債の双方のモデリングやデータ解析に従事してきた小泉洋夫氏(現 CTO)、大手広告会社でデータサイエンティストとして広告ビジネスプラットフォームの開発に従事してきた那須川進一氏(現監査役)らにより共同設立。これまでに累計で1億9,500万円を調達している。

<参考文献>

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