ピックアップ記事: Subway Time Warps Are China’s Latest TikTok Meme
ニュースサマリー: 2019年4月、短尺動画アプリ「TikTok」を発信源に、地下鉄を舞台にしたコンテンツが流行した。動画では、女性が現代の地下鉄を降りると過去や別次元へ足を伸ばし、様々な服装を装ったりいろんな場所へ赴きながら旅をする。
中国版Twitter「Weibo」上ではハッシュタグ「subway crossing」と名付けられ、同動画を真似たコンテンツが瞬く間に700万回まで再生数が伸びた。中国の西安市の地下鉄会社もsubway crossingのトレンドに乗り、自社事業を紹介するトレース動画を発表した。
TikTokは「ストーリー追体験プラットフォーム」の役割を担う
話題のポイント: TikTok上では様々なコンテンツが人気になっていますが、なかでも注目なのが今回紹介したような旅動画の領域。
日本ではハッシュタグ「TikTokで旅をしよう」と検索すると非常に凝った高品質なコンテンツがヒットします。こうした旅動画が新たなメディア領域になる兆しが出ています。実際、ハッシュタグ「TikTokで旅をしよう」は累計約5億再生、ハッシュタグ「Travel」においては30億再生。TikTokが作り出した市場規模は巨大です。
旅動画コンテンツの醍醐味はユーザーが行ったことのない・体験したことのない場所を、ストーリー仕立てで追体験できる点にあります。追体験をユーザーに提供するためには、現在のTikTokのフィルターでは対応しきれません。外部ビジュアル・エフェクトツール(以下VFX)や、動画編集ソフトを利用してコンテンツ表現を高める必要があります。
TikTokの独特な撮影フォーマットと、各ユーザーが趣向を凝らして編集した旅行体験を伝えるコンテンツに注目が集まりつつあります。
同時に、ユーザーが1分程度スマホを眺めるだけで追体験できるコンテンツが集まるTikTokを“Story Telling as a Service”と呼び始める人も登場し始めました。アプリを通じてストーリー調の体験をユーザーに伝えるコンテンツが量産されるプラットフォームを指します。
動画編集市場を一変させる可能性
先述したように、ストーリー仕立ての旅行動画を制作するには映像編集に強い人材が必要です。言い換えれば、現在こうしたコンテンツ領域に張っている動画製作者が人気コンテンツを配信できる状態といえます。
しかし、TikTokが撮影フォーマットやARフィルターなどを将来的に追加してくれば、一般ユーザーでも似たような世界観をいずれ編集して再現することが可能となるかもしれません。
もともと独特の動画編集フォーマットを用いて、動画編集ツールの役割を担いながら成長してきたTikTok。いわば動画編集ツールを他のどのサービスよりも民主化したのが同アプリです。編集ツールとしてのTikTokの進化を考えた際、たとえば冒頭で紹介した地下鉄コンテンツを手軽に真似ることもできるようになるかもしれません。
ここで今後の市場感として捉えておくべきなのが、VFXコンテンツ製作者に代表される動画編集者の活動領域・作品発表プラットフォームが旅動画の人気と共にスマホへとシフトしつつある点です。
TikTokの台頭と共に、従来映像編集スタジオでしか出来なかったことが徐々にスマホのフィルターで出来るようになっている市場変革の兆しがすでに芽生えています。これを指して“Movie Studio in the phone”と市場では称されます。
こういった未来を逆算した際、相当高度な映像編集技術を要するコンテンツが、TikTokの成長と共に量産され、現在活躍している動画編集者の価値が目減りしてくることが予想されます。
5-10年の時間を費やすと思いますが、TikTokを筆頭に“Story Telling as a Service”の概念が広まり、高い再現性を用いてあらゆる物事を追体験できるコンテンツが広まることで起こる動画市場の変化に注視しておく必要があるでしょう。
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