スキャン画像買取アプリ「ONE」運営、事業多角化に向けWEDに社名変更——元ベリトランス沖田貴史氏を迎え新事業に着手、シリーズA調達も

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左から:WED に参画した沖田貴史氏と、山内奏人氏、丹俊貴氏
Image credit: Wed

レシートをはじめ指定された画像をスキャンすることでお金がもらえるアプリ「ONE」を開発・運営するワンファイナンシャルは11日、社名を変更したことを明らかにした。新社名は「WED(ウェッド)」で、「デザインとテクノロジー」や「体験とビジネス」の結合を意味する Wedding に因むほか、Wednesday(水曜日)の語源である北欧神話における狂気の主・知識の神オーディン(Óðinn)にあやかり、「知恵に対して誰よりも貪欲に狂気とも言えるレベルで身につけていきたい」としている。

WED は、創業時のウォルト、2017年10月のワンファイナンシャルに続く、3つ目の社名。社名変更の最大の理由はサービスの多角化だ。ビットコイン交換サービス「WALT(ウォルト)」、日本円送金サービス「ELK(エルク)」、決済アプリ「ONE PAY(ワンペイ)」(いずれも現在はサービスを終了)とピボットを図り、2018年にレシート買取アプリとしてデビューした「ONE」は、バイクの自賠責保険証券や引越の見積書、不動産会社の封筒を取り扱うまでに進化した。7月には映画館サブスク見放題の「Premy」のクローズドβ版がローンチしている。

2017年開催 FIBC の〝フィンピッチ〟で披露された「ELK」
Image credit: Masaru Ikeda

これまで拙稿でも「フィンテックスタートアップ」と紹介していた同社だが、もはやフィンテックスタートアップではなくなってしまった。同社の本社オフィスは先頃、神宮前から日比谷にある140坪のワンフロアに移転。6月までは3人しかいなかった社員は、既に14人(内定ベースを入れると20人)にまで増えた。創業者で CEO の山内奏人(そうと)氏自身もまた、今年になって高校生から大学生になったこともあり、さまざまな面で「ギアが変わるタイミングを迎えたと考えている(山内氏)」、と社名変更の背景を語っている。

いつの間にか、シリーズ A ラウンドを完了

映画館サブスク「Premy」のティザーサイト
Image credit: Wed

正式な発表は無かったものの、WED はシリーズ A ラウンドで資金調達も完了していた。このラウンドに参加したのは、Spiral Ventures Japan、千葉道場ファンド、Canal Ventures。WED にとっては、2017年10月のプレシリーズ A ラウンド(インキュベイトファンドと D4V から1億円を調達)に続くものだ。それより前、同社は East Ventures やエンジェル投資家複数からも資金を調達している(調達額非開示)。今回のシリーズ A ラウンドの調達額は明らかにされていないが、少なくとも数億円以上とみられる。

先にも紹介した映画館サブスクの Premy には、一般公開前にもかかわらずユーザから期待の声は大きい。WED は昨年 ONE をローンチした直後、ユーザからの急需要に応えられず一時的にサービスの停止を余儀なくされた経緯があり、Premy の正式ローンチにあたっては、同じ轍を踏まないよう慎重を期している、という。

Premy は狂犬的なサービス。アップサイドもあるし、ダウンサイドもある。ここからどうなっていくか未知な部分も多い。うまくいけば、来年2月くらいには公開できるかも。(山内氏)

新興金融サービスの雄、沖田貴史氏がジョイン

チャレンジャーバンクの代表例であるドイツの「N26」。
Image Credit: Paul Sawers / VentureBeat

今回明らかになったもう一つの大きなニュースが、沖田貴史氏の WED への参加だ。沖田氏は1997年、アメリカ CyberCash の日本法人としてサイバーキャッシュを共同設立。同社はその後、ベリトランスと名前を変え、日本における決済代行サービス市場の一翼を担うまでに成長した。大証ヘラクレス(当時)に上場したのち、SBI ホールディングスが子会社化。その後、デジタルガレージ傘下の企業となった。デジタルガレージ〜ベリトランス間の中間持株会社 eContext Asia は2013年、香港証取への上場を果たしている。

沖田氏は2015年10月までベリトランスの代表取締役を務めた後、2016年5月にはブロックチェーンを活用した手数料無料の送金サービスを掲げる SBI Ripple Asia を設立。しかし、今年9月には、SBI Ripple Asia と参加の送金サービス会社 MoneyTap の取締役を退任していた。この際、沖田氏は自身の Twitter で「新たな挑戦のため、長年お世話になった SBI グループを離れる決断をし、北尾社長にも寛大なご理解をいただき、本日9月末をもって SBI Ripple Asia 及びマネータップの取締役を辞することになりました。」と投稿していた。この際の新たな挑戦とは、WED への参画を意味していたとみられる。

沖田氏は今後、WED と金融事業を行うジョイントベンチャー(JV)を来年1月に設立する計画。新 JV の社名は未定だが、日経は10日の記事で JV の事業内容が「スマホ銀行」になると報じている

最終的にはチャレンジャーバンク的なものを目指すことになるかもしれない。ただ、いきなり銀行を作るには体力が乏しいし、最初は、人々にとっつきやすい金融の部分から着実に作っていくことになると思う。

法律的なところも関わってくるのでサービスが立ち上がる時期はまだわからないが、早ければ来年6月、遅くとも来年末までにはサービスを出せるように頑張りたい。(山内氏)

沖田氏は JV の経営に加え、WED 本体の経営にも関わる。経営責任を示す CxO という表現で示される職位を WED では「C 職」、ファンクションオーナーとして業務面での役割を示す President や Principal といった職位を「P 職」と呼んでいる。WED には C 職が3人、P 職が7人いるが(一部兼任)、山内氏が代表取締役 Principal / CEO、エウレカ出身のエンジニア丹俊貴氏が取締役 President / CTO を担うほか、沖田氏は WED で取締役 President として経営の一翼を担うとしている。

新オフィスには茶室もある。ミーティングのほか、時には入社希望者の面接も、ここでお茶を飲みながら行うのだとか。
Image credit: Masaru Ikeda

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