30億調達のRepro、囲い込み時代のLTVを最大化させる「CE戦略」とは

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Repro代表取締役の平田祐介氏

ニュースサマリ:マーケティングプラットフォーム「Repro」は2月13日、第三者割当増資による資金調達を公表した。調達したのは融資含めて30億円。増資を引き受けたのはYJキャピタルをリードにSBIインベストメント、NTTドコモ・ベンチャーズ、KDDI(KDDI Open Innovation Fund 3号)、DGベンチャーズ、DG Daiwa Ventures、ジャフコの7社。

融資に応じたのはみずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、商工組合中央金庫。調達ラウンドはシリーズCで、ここまでの累計調達額は約35億円となる。今回評価額や出資比率、払込日程などの詳細は非公開。

2015年にアプリマーケティングのツールとしてデビューしたReproは、その後、2018年にウェブ対応し、現在7300以上のウェブサービス・月次で5000万件のデバイスを分析する総合的なマーケティングツールに成長した。提供する国の数も66カ国に拡大し、2019年からはシンガポール拠点を開設して本格的な海外進出も開始している。

今回調達した資金はグローバルでのマーケティングおよび組織体制に投じ、今後2年で開発を200名体制に強化するほか、シンガポール以外に展開を進める海外拠点(タイ、インドネシア、ベトナム、インド)の人員も増強する。

話題のポイント:国内SaaSの成長株、Reproが大きく踏み込んできました。Repro代表取締役の平田祐介氏は界隈でもストイックな経営スタイルで知られている人物ですが、ここ2期ほどは200名体制ながら堅実経営をしすぎて黒字化してしまったそうです。

一方、早期の黒字化は小さくまとまることに繋がりかねないので「もっと踏み込むために現在は月次で数千万円ほど赤字」(平田氏)の状態で再度走り始めたとのこと。平田さん曰く、一度黒字化を経験しておけば成長の踏み込み具合が分かるのでよい、とのお話でした。

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Reproの利用効果(ウェブサイトから)

さて、Reproと言えばAIとアプリマーケティングです。

<参考記事>

グローバルで5000万件のデバイスから得られたデータは、ある特定分野(上述記事の例ではマンガアプリ)の勝ちパターンを提示し、どのタイミングでどういったユーザーとコミュニケーションすれば効果が最大化するか教えてくれます。Reproはこの効果を月額ツールだけでなく、伴走してくれるコンサルタントとセットで提供するモデルで急成長してきました。

一方、こういった「モバイルマーケティング」の世界観はやはり限定的です。国内を取り尽くしてしまうとあとは海外に広げるだけになります。もちろん東南アジア中心にそこにも戦略を張りますが、もうひとつReproは自分たちの体を大きくする仕掛けを用意してきました。

それがエンゲージメント・マーケティング領域への拡大、です。

Reproが目指す「CE(カスタマー・エンゲージメント)戦略」

今、あらゆる市場でデジタル化が進み、例えばAmazon GOのような動きに代表される通り、顧客の動きはオンラインだけでなく、オフラインについても抱合、可視化されつつあります。

ビジネスモデルも転換があります。一度買って終わりという使い捨てモデルから、サブスクリプションのように家電製品であっても「サービス」として継続的に課金する戦略に移行しつつあるのが今です。また社会全体としても、2030年に掲げられるSDGsのように持続可能な社会を目指す流れはもう不可避となっています。

企業にとって既存顧客への対応はより一層重要なものになる、ここを最大化させる戦略が「エンゲージメント・マーケティング」です。

「これまでの既存顧客対応って何かが故障してコールセンターに掛けるような『プル型』が多いと思います。CEは逆です。予め故障するかもしれないことを膨大なデータから予想し、壊れる前に『交換しますよ』っていうプッシュ型のコミュニケーションを実現する」(平田氏)。

ポイントは取得するデータ領域の拡大とAI活用です。

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ReproのCEプラットフォーム全体像(ウェブサイトから)

具体的には現在、Reproで取り扱ってきたウェブ・モバイルアプリの行動データに加え、新たなチャネルとしてオフライン(店舗POSやIoT機器)を追加することで、顧客の来店やサイト訪問、会員登録などから購入、そして再訪に至るまでのカスタマージャーニーを把握できるプラットフォームに拡大する、というわけです。

「例えば私たちの売上って座布団になっていて、新しい期が始まると7割ほどの売上が確定します。これが既存顧客に対するマネジメント(CRM)のメリットです。一方、これまでの既存顧客マーケティングは、例えばECで買い物すると不要なメールが大量に届くような“お金を払って不快な思いをさせる”非効率がありました。ここを機械学習の力で改善できるのが今です。

まだ実証実験中ですが、とある店舗ではPOSデータと連携し、お得意の顧客が購入したファッションにおすすめのアイテムを紹介するような取り組みも始まっています。新規から既存へのパラダイムシフトを起こしたい」(平田氏)。

囲い込み時代にReproがどのような体験を提供してくれるのか、また具体的な事例が出てきたら共有したいと思います。

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