音声自動文字起こしサービス「Smart書記」運営のエピックベース、メディアドゥからカーブアウトし8,500万円を調達

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エピックベースのメンバーと、今回ラウンドに参加した投資家の皆さん
Image credit: Epicbase

主に議事録などを対象とした音声自動文字起こしサービス「Smart 書記」を運営するエピックベースは12日、メディアドゥホールディングス(以下、メディアドゥと略す。東証:3678)からカーブアウトし、シードラウンドで8,500万円を調達したと発表した。リードインベスターは Coral Capital で、メディアドゥ、エンジェル投資家の三木寛文氏、SmartHR 代表取締役の宮田昇始氏、​同社取締役副社長の内藤研介氏が参加した。

Smart 書記は2017年、徳島県庁とメディアドゥによる実証実験から生まれたプロジェクトだ。多くの官公庁や地方自治体と同様、徳島県庁では知事の記者会見の会見録を公開しているが、この会見録の作成に会見から4日間程度の時間を要していた。会見録作成の迅速化と省力化を目指して Smart 書記の開発に着手、実際の運用で速報版の会見録発表が即日、確報版の会見録発表が2日後にまで短縮された。徳島県庁は現在も Smart 書記を利用しているが、生まれた技術の事業化や商用化をメディアドゥが引き継ぐこととなった。

今回、メディアドゥからのカーブアウトにより、Open Network Lab のマネージングディレクターや DG インキュベーション(現在の DG ベンチャーズ)のシニアインベストメントマネージャーを務め、昨年までフーモアの COO を務めていた松田崇義氏が新会社エピックベースの代表取締役に就任した。

左から:メディアドゥホールディングス CEO の藤田恭嗣氏、エピックベース CEO の松田崇義氏Image credit: Epicbase

松田氏は昨年7月、メディアドゥの社内プロジェクトとしての Smart 書記の事業部長に就任、事業拡大や資金調達の面でスピードや柔軟性を模索していたところ、メディアドゥ CEO の藤田恭嗣氏から「スタートアップ的な動きをしてもいいよ」との了解が得られ、カーブアウトする判断に至ったという。

外に出ることを選んだのは、SaaS 事業を推進できるメンバーが(メディアドゥの)社内では揃わなかったという点は大きい。(SaaS スタートアップの成長指標である) T2D3(Triple, Triple, Double, Double, Double)なサービスをやるために、もっとアクセルを踏むには外部資金の調達とかを視野に入れた方が長期的にはメリットがあるよね、ということになった。(松田氏)

今回のカーブアウトにおいては、会社法的には吸収分割の形をとっている。吸収分割とは、会社(今回ではメディアドゥ)の中から事業の一部か全部を切り出し、新しく設立する会社(エピックベース)に事業承継する M&A 手法だ。また投資契約は、500 Startups Japan(当時、現在の Coral Capital)が2016年に公開した J-KISS に沿っている。

「Smart書記」
Image credit: Epicbase

Smart 書記が使う音声認識は Google Speech-to-Text を採用しており、要素技術としてはオリジナルのものではない。しかし、UI や UX が単なる文字起こしというよりは議事録作成に最適化されていること、音声の入力前の段階でチューニングし文字起こしの精度を上げていることで差別化を図っている。2018年6月のローンチ以来、約800社がサービスをローンチしているが、上場企業の取締役会の議事録作成などでも採用される関係でセキュリティ面でのケアを求めるユーザも少なくないという。

Smart 書記は現在のところ SaaS のみの形態で提供され、議事録をユーザが自ら作成するのを支援するという立場だが、将来的にはオンプレでのサービス提供や、文字校正を含め議事録作成を代行する BPO 的な業務に拡大する可能性もある。エピックベースではそのような将来需要への対応も念頭に、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの取得にも着手しているという。また、今後、地方公共団体向けの広域通信網「LGWAN」でのサービス提供の可能性もあるそうだ。

音声データをビジネスでメイン活用する機会が、今後、数年以内にグッと増えるのではないかと思う。単純な文字起こしではなく、音声データをビジネスで当たり前に活用できる時代を作りたい。(松田氏)

<参考文献>

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