沖縄を代表する大企業8社、「Okinawa Startup Program」のデモデイを開催——県内外や台湾から11スタートアップが参加

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琉球銀行(東証:8399)、沖縄タイムス、沖縄セルラー(東証:9436)、沖縄電力(東証:9511)、日本トランスオーシャン航空(JTA)、大同火災、JTB 沖縄、琉球放送(RBC)の8社は15日、沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)で「Okinawa Startup Program」のデモデイを開催した。このプログラムは4年前に琉球銀行が単独で運営を開始、2回目からは主催者に沖縄タイムスが、4回目から、沖縄セルラー、沖縄電力、JTA が、そして5回目となる今回から大同火災、JTB 沖縄、RBC が加わった

このプログラムには例年、沖縄県内外はもとより、近接する韓国や台湾から日本市場進出を試みるスタートアップが参加してきた。参加スタートアップのソーシングにあたっては、STARTUP Lab LagoonFROGSアントレプレナーシップラボ沖縄の各起業家支援機関に加え、韓国チェジュ革新成長センター、台湾政府の工業技術研究院(ITRI)傘下のスタートアップ支援組織「Taiwan Tech Arena(TTA)」が協力している。

冒頭挨拶する琉球銀行頭取の川上康氏
Image credit: Masaru Ikeda

今回の5回目のバッチには合計11チームが参加。内訳を見てみると、沖縄県内から9チーム、東京から1チーム、TTA の推薦で台湾スタートアップ1社と、例年に比べ、地元スタートアップが多くなっている。

Okinawa Startup Program の過去のプログラムに参加したスタートアップ35社(前バッチまで)のうち、人材管理クラウド開発のサイダス、ソーシャル EC プラットフォーム「temite(テミテ)」を運営する EC-GAIN、貨物車両と荷主をつなぐマッチングプラットフォーム「PickGo(ピックゴー)」を運営する CBcloud、沖縄発の運転代行マッチングプラットフォーム「AIRCLE(エアクル)」を運営する Alpaca.Lab は、琉球銀行の「BOR ベンチャーファンド」から、それぞれ資金調達したことが明らかになっている。

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以下に参加全チームの発表内容を紹介する。

リゾートワークス(日本・沖縄)

リゾートワークスは、リクルート出身のシリアルアントレプレナーらにより設立されたスタートアップ。テレワークに適したリゾートエリアの上質な施設を特別価格で提供する会員制サービスを提供する。現在、沖縄県内だけで60施設が利用できる。これまでに YJ Capital、デジタルガレージ、Genesia Ventures から資金調達し、KDDI ∞ LABO や Open Network Lab に採択された。

今回のプログラム参加では、宿泊施設への集客支援と環境支援で大企業と協業した。JTB 沖縄とは ワーケーションアンバサダー(IT ビジネス系インフルエンサー)の募集で協業。沖縄セルラー電話とは宿泊施設における容量無制限のネットワーク環境、大同火災とは宿泊客の無断キャンセル(NoShow)保険でそれぞれ協業、沖縄タイムスのコワーキングスペース「howlive」とも連携する。

フードリボン(日本・沖縄)

フードリボンは、パイナップルの収穫時に畑に捨てられる葉(残渣)を使ったサステナブルなブランド「KISEKI」を提案。パイナップルの残渣からは、ファッションに利用可能な繊維を開発したり、パイオブラスチックからストローを生産したりできる。自然由来の有機物であることから、使用後はコムポストを通じて土に返すことが可能で、これを肥料として有機野菜を栽培できる。

初年度は沖縄の他、台湾、中国、インド、フィリピンから70万トン相当の残渣を調達予定。この残渣からシャツを作ると7,000万枚相当、ストローにすると5,600億本相当になるという。世界中では2,000万トンのパイナップルが生産されていることから、4,000万〜6,000万トンに上る残渣が捨てられていると推定され、フードリボンでは大きな市場が開拓できると見ている。

OTS MICE MANAGEMENT(日本・沖縄)

沖縄ツーリスト(OTS)グループの新規事業会社として2014年に設立された OTS MICE MANAGEMENT は、公共施設運営の効率化を支援する「SPM CLOUD」を開発。利用者には WEB での空き紹介・予約、WEB 抽選、キャンセル処理、キャッシュレス決済などの利便性、管理者には年次・月次・日次管理など、施設管理に必要なさまざまな機能を提供する。

これまでに沖縄県で2施設、鹿児島県で2施設が利用を始めており、次年度には広島県で2施設、沖縄県で1施設が利用を始める予定。全国には同様の施設が8万の公共施設があるため市場は非常に大きい。今後5年で市場の1%を顧客に獲得することを目標に掲げる。SPM CLOUD の姉妹プロダクトとして、イベント運営者向けにはチェックイン管理ができる「パッスル」を提供している。

あしびかんぱにー(日本・沖縄)

バーチャル YouTuber「根間うい」の開発元あしびかんぱにーは、VRChat を使ったユーザが参加できるソーシャルな VR サービス「バーチャル OKINAWA」を開発予定。その足掛かりとなる「バーチャル国際通り」を、4月後半にローンチする予定だ。Cluster が開発した「バーチャル渋谷」、HIKKY の「バーチャルマーケット」などをヒントに、VR による事業開発を模索する。

この VR スペース上では、実際の国際通りでの買い物体験のように、e コマースによって商品も購入できるようにする計画。エイサー祭り、三線島唄ライブといったオンラインエンターテイメントも提供できるため、チケット販売も行いマネタイズに繋げる。国際通りに続き、バーチャル国際劇場、バーチャル観光地、バーチャルビーチなど、さまざまな VR スペースを拡大する計画。

lab(日本・沖縄)

lab は、昨年の春まで警察官だった創業者が設立したスタートアップ。沖縄では観光客の増加に伴い、警察に届けられる落とし物は増加しているが、落とし物したことを警察に届ける人は増えていない。その背景には、飛行機の出発時間が迫っていて警察に行く時間がない、落とし物が見つかっても本人が取りにいけない(送ってもらうことはできず警察署に取りに行く必要がある)といった理由が考えられる。

そこで lab が提供するのは、遺失拾得物総合代理サービスだ。落とし物をした人(依頼者)は Web アプリで委任状を作成、lab が警察への届け出を代行し、該当する遺失拾得物が発見されれば、依頼者の代理人として警察から受け取り、それを依頼者に郵送してくれる。遺失拾得物の保管期間は3ヶ月と短く、代わりに警察署に取りに行ってくれる沖縄の知人がいる人も少ないことから需要が見込める。

Solafune(日本・沖縄)

Solafune は、衛星データをはじめとする地球観測データを活用したアルゴリズムのマーケットプレイスだ。SAR データ、GPS データ、地表面の温度データなどのデータセットをオンラインで公開、世界中から AI エンジニアにアルゴリズムを応募してもらい、その中で課題を解決できる優秀なアルゴリズムを Solafune が買い取り、企業に権利をライセンスする。

従来方法では、企業はアルゴリズム開発に時間・コストが必要で、人材を集めるのも難しい。Solafune では応募されたアルゴリズムが自動評価・スコアリングされるため、エンジニアは互いにスキルを切磋琢磨することになる。あるコンテストではを2週間で300人以上のエンジニアが参加し、2,500件以上の解析結果の応募があった。これまでに ANRI と East Ventures から資金調達している。

lollol(日本・沖縄)

lollol(ロルロル)は、沖縄の放送作家キャンヒロユキ氏によるスタートアップだ。2018年のライブエンタテイメント市場は1,987億円だったが(ぴあ総研発表、ステージ市場規模)、2020年にはコロナ禍で3分の1にまで縮小した。お笑い芸人のうち、芸のみで生活できるのは1割程度で、舞台やライブが中止になるなどして生活が困窮する人も少なくない。

lollol は、テレビや舞台以外の芸人の活躍の場として、芸人と消費者を繋ぐマーケットプレイス「UNIQUE」を開設。芸人34人に参加してもらったところ、夫の還暦祝のお笑い、テーマソングの作曲などの依頼があった。オンラインライブだと演者は観客の反応がわからないことから、観客の PC 越しの表情から笑い声を挿入する技術を開発中だ。観客反応に応じて広告料を徴収するモデルも開発する。

JGB Smart Poperty/金箍棒智慧物業管理(台湾)

JGB Smart Poperty は、不動産オーナーや管理人が貸借人の募集、内見、契約、設備不具合の修理、家賃督促などをモバイルで管理できるワンストップ賃貸管理システムを開発。これまで、主に電話で行われてきたこれらの業務をデジタル化することで、オーナーや管理人を煩雑な作業から解放する。

締め日を決めておけば家賃を自動的に督促する機能、テナントごとに電気メーターが分かれている場合にも、それらを集積して情報管理し家賃と合わせて請求できる機能、ディポジットやリファンドを管理できる機能などが備わっている。このプラットフォーム上に搭載された賃貸契約に関わる電子契約は、最新の借地借家特別法(台湾の法律のことを指しているかどうかは不明)にも対応している。

Endemic Garden H(日本・沖縄)

Endemic Garden H は、やんばる地域3村(国頭村、大宜味村、東村)で過疎問題に取り組む地域のよろづや(まちやー)だ。この地域では、行事の人手が不足したり、代々の家や土地の維持管理が難しいなど、過疎を原因とした社会課題がある。同社は、宿泊業、旅行業、ネイチャーガイド、環境プログラム受託のコンサル業、生き物調査受託の調査業をなどを通して地域課題に取り組む。

同社では、古民家をリノベーションした宿泊施設「奥やんばるの里」6棟を運営。地元の農家や漁師から食材を調達し、家主に賃料を支払、地域住民を雇用し、経常利益の一部を再投資することで地域経済のサイクル創出を目指す。分散型ホテルの運営を強化し、ワーケーションやデュアラー需要を理解した施設や観光コンテンツを充実させたいという。

イノベスタ(日本・沖縄)

楽天やアマゾンでの勤務を経て、現在は地域 EC コンサルタントの創業者が設立したイノベスタは、沖縄ならではの地〝販〟地消を目指すスタートアップだ。全商取引に占める EC の割合は、アメリカ11%、中国36.6%に対して、日本は6.76%と先進国で最も低いが、沖縄はさらに低く1%程度と推定される。沖縄で EC が普及しないのは、送料が高く、注文したものがすぐに届かないことが大きな理由だ。

そこでイノベスタが提案するのは、沖縄県内事業者が沖縄県民に商品販売する「TODOQ(トドキュー)」だ。JTA とは、離島メーカーや生産者との連携、商品開発やマーケティングで協業する。那覇市内のショッピングモール「パレットくもじ」やデパートリウボウの樂園百貨店で POP UP イベントを開催予定。今年6月にサービス開始し、2023年に沖縄本島内送料無料、当日配送を目指す。

RelyonTrip(日本・東京)

RelyonTrip は、10〜20代の女性が食事やお茶に出かける際、気軽にお店を探せるアプリ「Sassy(サッシー)」を開発している。このような用途には Instagram を使うユーザが多いが、Instagram には詳細情報が無い、地図が無い、不必要な情報が多いなどから、お店を知るには複数のアプリを操作する必要がある。Sassy では、全ての情報検索・取得がアプリ内でワンタップ完結する。

人気 YouTuber やインフルエンサーが作成したスポットまとめ集が人気を博し、Sassy のユーザ獲得に貢献している。二人で会う際には、ユーザ同士が互いの行きたいスポットリストをマッチングさせ、会う場所を決めることも可能だ。沖縄セルラーと協業し、「沖縄CLIP」の地元在住フォトライターとコラボしたスポットまとめ集を3月下旬にリリース予定。

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