スーパーアプリ化進む中国自動車市場、Xpeng(小鵬)がAlibaba(阿里巴巴)と狙うプラットフォームの主導権

SHARE:
今週発売される SUV「G9」車内の様子
Image credit: Xpeng Motors(小鵬)

2019年から中国市場に EV の出荷を始めた Xpeng Motors(小鵬)は、Alibaba(阿里巴巴)と組み、車両向けミニアプリエコシステムを搭載している点で注目の存在だ。Alipay(支付宝)などペイメントサービスに対応するだけでなく、おすすめレストランのレコメンドなどのライフスタイルサービスを提供する。さらに、サードパーティーに対して積極的にソフトウェア開発パッケージ(SDK)を提供しており、スーパーアプリ化は今後さらに進むと思われる。

中国市場における IoV(Internet of Vehicles) を戦略とする自動車メーカーは EV 以外にも存在する。特に EV 専業で近年出てきたスタートアップとは対照的に、従来からある自動車メーカーはスマート化・インテリジェント化の波にに遅れまいと、テック大手と手を組むことに積極的だ。Tencent(騰訊)と車載 OSを共同開発する Changan(長安)、Baidu(百度)と戦略的提携関係を締結し自社開発 OS を搭載している Geely(吉利)などが好例だ。日常のあらゆる側面でスーパーアプリが普及した中国ならではの、自動車におけるメインプラットフォーム争奪戦が行われている。

Xpeng Motors は2020年第2四半期から広東省肇慶市にある自社工場で自動車の量産を開始。それまでは中国の OEM メーカ ーHaima(海馬)に生産を委託していたが、広州市政府から40億人民元(約822億円)の出資を受けて、うち約13億人民元(約267億円)を製造拠点建設に注入し、さらなる生産力拡大を目指している。こうして同社が肝入りで開発した新モデル「G9」は、今週21日に発売される予定。G9 は超急速充電が可能なスマート SUV(多目的スポーツ車)で、800Vという高電圧で稼働するため抜群の性能を備えていて、5分間の充電で航続距離を200km延ばすことができる。

もともとスノーモービルメーカーだったカナダの Bombardier がジェット機を飛ばすようになったように、モビリティメーカーというのは、推進の仕組みは違っても、あらゆる移動手段に触手を伸ばすのが成長のプロセスなのかもしれない。Xpeng 傘下で電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発する Xpeng Aeroht(小鵬匯天)は、「Xpeng X2(旅航者 X2)」を開発している。Xpeng X2 はすでに昨年初飛行を備えており、今年はドバイで飛行試験を実施する計画だ。Xpeng X2 は自動運転可能で、最高飛行速度は時速130kmに達するという、まさに「空飛ぶクルマ」だ。

Xpeng Motors は、創業からわずか6年の2020年にニューヨーク証券取引所に、2021年に香港証券取引所に上場した。中国政府は最近、EV メーカーを含む自動車メーカーに対して、システムのデータ保護に関する厳しい規制ガイドラインを提示した。ただ、一方で、中国国内市場を Tesla というアメリカ企業に明け渡したくない中国政府は、中国 EV メーカーの中でも自動運転の世界で先頭を走る Xpeng とNio(蔚来)に対しては、規制の結果として、彼らを国際競争の中で弱体化させたくないのが本音、との見方もある。

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。
  • 会員限定記事・毎月3本
  • コミュニティDiscord招待
無料メンバー登録