イスラエル発モバイル広告効果測定のAppsFlyer、シリーズDで2.1億米ドルを調達——2020年代最新のユニコーン、300億米ドルのアジア市場に照準

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2020年になってまだ1か月も経たないが、AppsFlyer はイスラエルの Sisense、イギリスの Arrival、そしてアメリカを拠点とするスタートアップ HighRadiusClassPass の後に続き、2億1,000万米ドルのシリーズ D ラウンドで2020年代最新のユニコーンとなった。

オンデマンドのフィットネスアプリと同じように、AppsFlyer は労力と新たな資金をアジア太平洋地域に集中させようとしている。サンフランシスコを拠点とする同社はマーケティングのアトリビューションと詐欺防止のソフトウェア・アズ・ア・サービスをブランドオーナーに提供している。(業界用語でアトリビューションとは、様々なチャネルにわたるマーケティングの取り組みがどの程度効果的かを測定し、それぞれの行動の価値を特定するプロセスを指す。)

同社の1万2,000以上のクライアントはそれぞれに、使用する製品および必要とされるスケールやカスタマイズに応じてライセンス料を支払う。

イスラエル人の Oren Kaniel 氏と Reshef Mann 氏が2011年に設立した AppsFlyer は、同社がアトリビューションソフトウェアにおいて世界的なリーダーであるとしている。この主張を支えているのは、Android と iOS でそれぞれ74%と59%の市場シェアを同社が抑えているとする、2018年の Mobbo の調べのようだ。競合はドイツの Adjust、中国の TalkingData、そして同じアメリカ拠点の Kochava とTune などである。

Microsoft の Scale-up Tel Aviv Accelerator を2012年に卒業した AppsFlyer は、現時点で世界中に18か所のオフィスを持ち、そのうち6か所はアジア太平洋に所在している。

General Atlantic がリードするシリーズ D のクローズならびにユニコーンというステータスの獲得を発表するとともに、同社はジャカルタの新たなオフィスについて明らかにした。

左から:Reshef Mann 氏(AppsFlyer 共同創業者 兼 CTO)、 Anton Levy 氏(General Atranntic 共同社長 兼 グローバル技術責任者)、Oren Kaniel 氏(AppsFlyer 共同創業者 兼 CEO)
Photo credit: AppsFlyer

AppsFlyer の社長兼アジア太平洋マネージングディレクター Ronen Mense 氏は、インドネシアの現地に永続的にオフィスを構えることは「自然な発展」だと述べている。過去5年間、同社は Gojek、Ruangguru、Tokopedia といった同国の国産ブランドと一緒に仕事をしてきたのだ。その他のアジア太平洋のクライアントは Agoda、Sea Group、Tencent などである。

Tech in Asia のインタビューで Mense 氏はこう語った。

このオフィスを開く主な狙いは、顧客のビジネスがさらに成長できるよう、より良いサポートを現地で提供することです。

300億米ドル相当の市場

既存のクライアントベースを支援し足場を築く以外にも、アジアにおける AppsFlyer の拡大は、現地ブランドオーナーのマーケティング分析やアトリビューションツールに対する需要の増大を活用する狙いがある。

同社の最近のリサーチでは、世界的なアプリのインストール広告費、つまり消費者にアプリをインストールしてもらうためにブランドオーナーが支出する金額は、今年641億米ドルに成長すると予測している。

アジア太平洋は成長の主要な動力源であり、AppsFlyer は上記広告費のうち300億米ドルがこの地域からもたらされると予測している。

その額の大部分は中国とインドの市場によるものだが、モバイル機器所有の急激な増加やネットワークインフラの向上により、東南アジアもモバイルマーケターにとっての重要な戦場となりつつある。

アプリベースのマーケティングという点では、この地域はブランドに新しいチャンスを提示している。ダウンロード数、アプリ内の活動、収益は中国やインドの方が大きい。しかし、上記2国のユーザに比べると東南アジアのユーザはより多くの時間をモバイル機器を使って過ごしている。Kantar によると、インドネシア人のモバイルユーザは平均して毎日3.4時間をコンテンツ閲覧に費やしているのだ。マレーシアとタイではそれぞれ3.7時間と3.9時間となっている。

Mense 氏によると、東南アジアでは「携帯電話インフラの向上と安価なモバイルデバイスが合わさり、それによってアプリインストール市場が爆発的に成長している」という。

今後数年は、成長率はそのペースをキープし、メディア費用の上昇が期待されます。そのため、マーケターが勝つにはこれまで以上にさらにスマートに、さらにデータドリブンになる必要があります。

AppsFlyer のリサーチによれば、アジア太平洋地域は2020年末までに世界的なアプリインストールの半分を占めることになるとしている。

市場が成熟するにつれて成長は徐々に鈍化すると予測されますが、メディア費用やモバイルの使用、ならびに全体的な有料キャンペーンや利用可能なアプリ、モバイルユーザの数は堅調に上昇し、成長を支えることになるでしょう。

ここでも、特にインドネシアには彼らにとって大きなチャンスがある。App Annie の最近のレポートは、前年比6%で成長した2019年の世界的なアプリダウンロードに最も寄与した3つの急成長中の市場として、ブラジルとインドと並んで同国を強調したのだ。

詐欺との戦い

残念ながら、マーケターにとってチャンスが増えるということは、詐欺師にとってもチャンスが増えるということである。

2018年11月から2019年4月までの間、アジア太平洋でアプリのノンオーガニックなインストール(NOI)の100件のうち25件は詐欺行為であり、世界的な平均よりも60%高かった。NOI とは有料マーケティングキャンペーンや、e メールのリンクをクリックしたり QR コードを読み取ったりといったその他のマーケティング活動の結果としてユーザがインストールした際に起こるもので、ユーザがインセンティブなしにアプリをダウンロードするオーガニックなインストールとは反対のものである。

広告主からだまし取ろうとする者は一般的に、マーケティングの機会を売り、実際の数よりも多くの消費者がマーケティングに引き付けられたように見せるということをする。

その目的のためには、広告がユーザに気づかれないようにクリックを受け取るクリックスパミングや、実際にはダウンロードされていないのにアプリをダウンロードしたように見せる SDK スプーフィングといった手法が使われる。その他にも、広告全体が画面の数ピクセル分のスペースにしか表示されないため、ユーザに実際には何の印象も残せないピクセルスタッフィングというものもある。

こういったタイプの詐欺行為は直接的な金銭的損失に加え、ブランドオーナーやマーケターが頼りとするデータを捻じ曲げ、結果としてリソースの不適切な配置や非効率的な支出を招いてしまうのだ。

特に東南アジアは詐欺師にとって魅力的な市場です。この地域のマーケターはモバイルファーストで成長中のデジタルネイチャーな人口を活用し、マーケティングの優先事項を進めているためです。(Mense 氏)

こういった中で AppsFlyer は新たな資金と現地で増強された存在感を活用し、地域のブランドオーナーに向けた詐欺防止の製品開発をさらに進めていく予定だ。同社のツールによって、クライアントはインストールが本物かどうかの証明や、アプリのダウンロードや使用における異常を確認することができるのだ。

AppsFlyer は黒字かどうか、収益のうちどのくらいがアジア太平洋によるものなのかについてのコメントを差し控えた。

しかしながら、同社は2019年の年間経常収益(ARR)で1億5,000万米ドル以上を記録したと Mense 氏は述べている。2013年の100万米ドルから2018年には1億米ドルとなった ARR の成長に続いた形だ。

2020年度についてのコメントをすることはできませんが、弊社がテック企業として素晴らしいポジションにつけていることは間違いありません。(Mense 氏)

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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