スタートアップがサービス映像を作るべき理由ーーワンダー・グラフィクス代表小林秀年氏が語る「映像とユーザ体験」

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wonder-graphicsスタートアップが、自分たちのサービスを紹介する映像を制作することが国内でも増えてきている。海外のスタートアップは少し前からそうした潮流が起こり始めており、スタートアップ系の動画を多く掲載している「Startupvideos」というサイトもあるほど。

サービスのコンセプトをよく表現した映像は、そのサービスがどういったもので、それを利用することでユーザはどのような体験を得られるのかを伝えることができる。情報が溢れる中で、ショートムービーを見てもらうことで、サービスの世界観を伝えるという手法は今後も増加していくだろう。

今回、音楽のコラボレーションアプリ「nana」や、ホーム画面きせかえアプリ「CocoPPa(ココッパ)」等のサービス紹介映像の制作を担当した新世代の映像制作会社「ワンダー・グラフィクス」の代表、小林秀年氏に話を伺った。

映像制作にスタートアップ並のスピード感を

hide kobayashi

Q. ワンダー・グラフィクスの成り立ちについて教えてください。

2010年に会社を立ち上げ、2011年くらいから本格的に活動を開始しました。会社を立ち上げたばかりのころは、ウェブデザインの仕事や、ミュージックビデオの制作の仕事をしていました。

Q. ワンダー・グラフィクスが他の映像制作の会社と異なる部分はどういったところなのでしょうか?

制作にかけるスピードですね。うちは、少人数チームで制作を行い、とにかく納品スピードを早くすることを心がけています。従来の映像制作のやり方を効率化し、工数を減らして、低コストでの制作をするようにしています。CocoPPaの映像は、話をいただいてから2週間ほどで制作しました。

制作を担当する案件の多くはWeb用の動画なため、納品がデータなのでより早く完了させることができます。Web動画を制作することでコストを下げ、その分、制作に予算をかけて、良い映像を作るようにしています。

ミュージックビデオやCM制作で培ったノウハウを使い、Web動画のスピードの早さを活かして、スタートアップ向けの映像制作をしています。

サービス映像を制作するときのポイント

Q. 実際に映像を制作される際に心がけていることは?

一番重視しているのはブランディングですね。作る映像が、しっかりとサービスやプロダクトの説明ができているのかどうか。そのサービスが人々に認知されるために、どんな表現が可能なのか。その映像の企画に最も時間をかけています。

ユーザが映像を観たら、すぐにそのサービスだとわかるような映像を作らなくてはいけません。”オンリーワン”を映像でしっかりと表現できているかどうか。そのためには映像内に登場する人物が、実際にサービスを使う年齢層であったり、登場するシーンがサービスの利用シーンを想起させるものであることが大切です。

CocoPPaの映像では、女子高生が使うサービスなんだな、ということがわかるようにしています。演出としては場所も重要なので、違和感がないように、実際に住んでる住宅を借りて、そこで撮影しました。他の映像制作でも、実際の家を使わせてもらうことが多いですね。人が住んでいるという雰囲気がでているので。

昔、映像制作で使用していた機材は大きすぎて家に入れることが大変だったのですが、最近はデジタル一眼のカメラで映像撮影が可能ですし、明かりもLEDになっているので熱の心配も少なく、カメラと被写体の距離が確保できれば撮影は可能なので、様々なシーンで撮影ができるようになりました。

サービス映像を制作する過程でユーザ体験をシミュレーションする

Q. スタートアップがサービス映像を制作すべき理由はどういったものなのでしょうか?

ブランドや、サービスコンセプトを自分たちで理解し、考えをまとめるためにも映像は作るべきなのではと考えています。どういった人が、どういったシーンで、どのように自分たちのサービスを使ってくれるのか、使って欲しいのか。映像の企画をする段階で、こうしたことを整理していきながら、映像のシーンや登場人物を決めていくことになります。

この制作プロセス自体が、スタートアップの方々にとっては自分たちのサービス価値の振り返り、再確認になっています。事前のヒアリングではこうしたことを聞くようにしています。

プロダクトの価値の確認するためにも、有用であると。

そうですね。実際に映像を制作する際に大切なことは、ユーザがそのサービスを使ったことで、どう変化したのかを伝えること。サービスの利用前後で変化があるから、映像を見ている人にそのサービスの価値が伝わります。これはプロダクトの価値を再確認することになります。そうしていくことで、サービスのストーリーを伝えていきます。

ワンダー・グラフィクスでは、サービスの紹介映像の他にも、会社の紹介映像も制作している。以下は、クラウド名刺管理サービス「Eight」などで知られるSansan株式会社の会社映像。プロダクトの価値の確認以外にも、自社のコンセプト等の確認、発信にもなるだろう。

自分たちもスタートアップとして

ワンダー・グラフィクスは、スタートアップ向けの映像制作をしつつも、自分たちも投資家から出資を受け、スタートアップのように活動を行い始めている。定期的にコンテンツを配信できるモデル、動画メディアや放送局の立ち上げサポートをサービス化するなど、動画サービスの立ち上げに取り組み始めている。直近では「みんなのウェディング」とも提携して映像サービスの提供を開始した。

今回、スタートアップに向けて映像の価値を伝えようとこのインタビューを行った。だが、話を聞いている過程で、従来の映像制作会社など、様々な業態の企業が、スタートアップから学ぶことがあるのでは、とも考えるようになった。

スモールチーム、デジタル技術によって効率化された映像制作手法、自社のサービスを立ち上げようという映像会社、ワンダー・グラフィクス。彼らの挑戦の先に、スモールサイズの映像制作会社の未来があるのかもしれない。

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