「移動体験の再発明が鍵」ーー15兆円市場・コネクテッドカービジネスの構造と可能性 #tbfes

Takeshi Hirano by Takeshi Hirano on 2016.2.22

こちらの内容はTHE BRIDGEおよび会員が配信するお知らせとなります

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国内Internet of Thingsの文脈で「車のネット化」に関するビジネスを仕掛けるにはどうすればよいのかーー。2月19日に本誌主催で開催した「THE BRIDGE Fes」のステージ上で、この最先端の話題についてプレーヤーたちが語り合った。

登壇したのはガリバーインターナショナル(※以下、ガリバー)の許直人氏、ソラコム代表取締役の玉川憲氏、そしてディー・エヌ・エーでAnyca事業を推進する大見周平氏だ。モデレートは自身もIoTデバイスなどを手掛けるスタートアップ、nuuoの林智彦氏が務めた。

まず、話題はこの分野の市場性からだ。ガリバーの許氏は一枚のスライドでコネクテッドカーに関するグローバル市場の可能性について、2021年には1220億ユーロ(125円換算で15兆2500億円)規模に拡大すると調査会社のデータを引用して説明。年平均成長率(GAGR)ベースでも29%と伸びしろが大きいと話していた。

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その上で、この分野が複雑な全体像を持っていると指摘もしている。

「大変な成長が見込まれる一方で、バリューチェーンが相当に複雑(上図参照)なんですね。上位レイヤーにはロジスティクスからソフトウェアがあって、下層にはハードウェアメーカーがひしめいている。それぞれに対して自動運転等のアルゴリズムがあって、そこにさらに持ち込みのハードが入ってくる」(許氏)。

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ガリバーインターナショナルの許直人氏

例えば今回登壇したディー・エヌ・エーのカーシェアリングサービス「Anyca」は上流のソフトウェアやサービスのレイヤーに属している一方で、ガリバーは車の流通や販売チャネルを主戦場にしている。彼らの営業マンは全国で約500店舗に対して2500人が配置されており、開発された新たなハードやサービスを販売・流通させるロジスティクスのレイヤーに大きな影響力を持っている。

このように、一言で「コネクテッドカー」と言っても、攻める場所、必要とされる技術、プレーヤーはかなり複雑に入り組んでおり、まずはこの業界レイヤーを理解するところから始めなければならないようだ。

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資料:ガリバーインターナショナル提供/同社がイメージするプラットフォーム。多くの車がネット接続されることで様々なサービスが生まれる。

また、このコネクテッドカーのチャンスはいかにして「インターネットに接続する部分」を見つけるかが重要なキーとなる。そういう意味でソラコムの玉川氏の指摘は興味深いものだった。

「実は車って10億車とか20億車のレベル。2020年に500億個と言われるIoTデバイスが繋がる世界観からすると実は小さいんですね」(玉川氏)。

確かに車一台をインターネットに繋げる、という考え方であれば指摘の数値は全体のわずかにしかならない。しかし、玉川氏は同時にこのようにも考えているという。

「一方で一台が走っている時に生み出すデータ量は莫大で、テスラやレクサスといった一部車両ではもう既に動き出している。さらに接続するデバイスの数についても、車両一台につき1個と考えず、持ち込み機器がそれぞれネットに接続されるような世界観があれば、大きく変化する」(玉川氏)。

例えば、ある一定の区間でワイパーに取り付けられたセンサーが一斉に反応し始めたら、「そこは今雨が降っている可能性がある」と判断できるようになる。その情報をもとに渋滞予測や他の車両に何らかの通知サービスを提供できれば、新しい世界が広がることになる。車両から生まれる「データ」をどのように捉え、ビジネス化するか。

それこそがスタートアップの力の見せ所といえよう。

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ディー・エヌ・エーでAnyca事業を推進する大見周平氏

また、バリューチェーンの複雑さと長さを逆手に取った考え方も参考になった。ディー・エヌ・エーの大見氏は、カーシェアリングの分野で一番手が取れた時に広がるビジネスの可能性について語っていた。

「一つのマーケットでシェアを取れた時の姿はやはり描きやすいですね。例えばAnycaで取れるシェアが全国6000万台の10%だったとして600万台。現在、ユーザーさんの中には車を売りたいという要望を持ってる方もいらっしゃるので、オークションのようなサービスも見えてくる」(大見氏)。

コネクテッドカーのビジネスは何もネット接続デバイスを作って車に取り付ける固まったものではない。「移動」という体験をインターネット世界で再構築し、取得できる多種多様なデータを活用して新しい価値を生み出す。

それこそがコネクテッドカービジネスの醍醐味であり、可能性ではないだろうか。

セッションの最後に許氏はこのコネクテッドカービジネスを更に拡大させるため、新たなコミュニティの立ち上げを会場に集まった聴衆に伝えていた。本誌もこのコミュニティに参加してコネクテッドカービジネスの可能性を考えるつもりだ。

“summercamp"/

Takeshi Hirano

Takeshi Hirano

ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現THE BRIDGE)を共同創業。1977年生。(株)THE BRIDGE代表取締役

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