【ゲスト寄稿】近藤淳也氏から学ぶ、はてな流「ビジネスアイディアを考える」ための3つのポイント

金城辰一郎この記事をゲスト寄稿してくれたのは、オルタナブログなどで執筆中のブロガーの金城辰一郎さん。世界を変えるためのWEBサービスを開発しつつ、ソーシャルマーケティングを得意領域とする。テクノロジーの未来を語るのが大好き。現在はスタートアップを起ち上げるための準備中。CONECT&CHANGEソーシャルメディアのハンパない状況など。


先日の土曜日にインキュベイトファンドの木下氏とソーシャルギフトサービス「ミナオメ」を運営するMUGENUP代表の一岡氏などの有志メンバーによる主催のStartup Workshopというイベントに参加してきました。

第一回目となる今回は、日本のインターネット企業を代表するはてなの代表取締役近藤淳也氏、はてなブックマークディレクターの長山氏を講師として迎え、はてな流のビジネスアイデアの考えかたをベースとした実践的なワークショップを実施しました。参加者は約70名で、応募者150名中から選ばれたエンジニア、デザイナー、マーケターという構成になっておりましたが、参加者の半数以上はエンジニア・デザイナーとの構成であったのこと。このイベントで得られた気付きなどをこの場を借りてみなさまとご共有できればと思います。

ピッチ、チームビルディング

まず参加者には事前課題として「スマートフォン×コミュニケーション」をテーマとして「誰のどのような問題か?」/「どのように解決するか?」/「他とどう違うのか?」に言及したサービスアイデアを考えてくるよう求められており、参加者70名程度のうち先着20名が全員の前で1分間ピッチを行いました。

ここでは講師であるはてな長山氏のアドバイスがあり”このサービスは何を解決するのか?”という課題の明確化の重要性が問われていました。そしてこの発表のあったサービスを形にしていくためのチームビルディングはピッチされたアイデアに対して参加者が票を入れていくという形式です。これは開発者、デザイナー、マーケターなどが集まり週末3日間でプロダクトを作成するStartup Weekendに類似する形式になっており、共感を得ることができなかったアイデアは淘汰されるという合理的なやり方です。

参加者の共感を得ることができ票を集めた15個ほどのアイデアが採用され、投票者同士で発表者をリーダーとしたチームがそれぞれ作られてグループワークに移っていきます。

アイデアブレスト

チームごとに集まったら今後は各個人が考える”この機能を実装したらもっとこのサービスはよくなるのでは”という要素をポストイットに書きだす時間がとられました。10分ほど個人でアイデアを出した後、それをチームで共有していきながらブレストをしていくという流れです。この形式により自分で考えていたアイデアについてメンバーから様々な意見を聞くことができ、かつこれまで考えもしなかった新しいアイデアや、問題点を知ることが出来ます。

画面構成の構築

ブレストで共有した機能やサービスの方向性を元に今度はスマートフォンにおいてどのようなモノとなって実装されるかというサービスの機能構成やユーザーインターフェイスのデザインについて話しあいました。ここでもまず各個人が考えて、その後チームで共有しまとめ上げるという流れです。

プレゼン&結果発表

そしてチームでまとめあげたサービスの画面遷移構成イメージをプロジェクターで写し全員の前で3分間でプレゼンをするというのがワークショップの最後になります。その後、当イベントに協賛しているはてな、Amazon、パソナが選定するもっともよかったサービスについての結果発表が行われました。

以上がはてなの長山氏による進行のはてな流ワークショップです。この、はてな流のワークショップの最大の特徴は「一人で考える時間とチームで考える時間を交互にとること」です。一人で思考する時間をちゃんと設けることによって声の大きな人の意見やリーダーだけの考えに流されずに各メンバーが考えるアイデアがしっかりと共有出来るという点です。実際にこの緩急をつけたアイデアブレストによって、より濃密な議論が出来たと身を持って感じております。

はてなCEO近藤氏による講演“サービス設計における3つの思想”

最後の締めにワークショップを経てサービスの考え方について近藤氏よりお話頂きました。ポイントしては以下の3つになります。

1.具体的な問題を解決する
近藤氏自身がはてな人力検索を作ったキッカケを言及し「誰のどんな課題を解決するか」という点が具体的であれば有るほどサービスに魅力を感じると述べておりました。顧客が明確化されていないものや、そこにマーケットがあるからという理由で始めるサービスよりも起業家の世の中に対して解決したいと考えているものへの情熱が乗っているサービスのほうが伸びるのを何度も見ているとビジョンの大切さについて言及しました。

2.とにかくユーザーを増やす
つまりどんな素晴らしいサービスもやはり収益化しないと続かないということです。収益化のためにはユーザー数が必要ということで、無料でも何でも何よりもまずユーザー獲得を意識してサービスを進めていくというお話でした。初期のはてなは受託開発で売上を立てていき、その利益をユーザー数に耐えうるサーバーを買うことに費やしていたそうで、ユーザーを集めることに集中したからこそサービス自身からの収益化が達成できたと言います。

3.強みを組み合わせる
スタートアップの創業当時の人材は万能型の人材が比較的多いが、人が増えていき会社を成長させる上では能力が尖った人も増えてきます。このとき必要なのはそれぞれの強みを上手く組み合わせること。メンバーの出来ない部分を指摘するのではなく、強みを伸ばしてそれぞれのメンバー間で化学反応を起こしていくことが重要です。

そして最後に述べていた内容でとても共感した点が「世界で戦えるWEB業界をつくる」という近藤氏の志です。普段京都に席を置く近藤氏が東京に来てこのようなイベントにて講師をするのもこういった理由からであり、日本におけるものづくりに関する方法論を変えて、世界に誇れる新しい価値を創りだしていきたいという思いからとのことです。そして日本の企業においても新しいものを生み出して世界に向けて戦っているという姿勢を見せるのが最高の人材獲得戦略であるとも仰っておりました。

さいごに

このイベントの参加者の質の高さを強く感じました。既にスタートアップしている人、スタートアップに参画する予定の人、学生起業家など、半数がエンジニアとの中でもスタートアップにかける意識が高いと感じました。

はてなの近藤氏も自身のFacebookにおけるつぶやきにて「本質的な価値を見つめて、良いサービスを作ろう、という価値観に動かされた素晴らしい作り手がこんなにいるのか、と感動しました。どれも、会社を作って良いレベルだったと思います。魅力的なサービスで世界を変えて行きましょう!」と書くほどの熱量の場でした。Startup Workshopは次回以降も定期開催を予定しているそうで今後もチェックしたいイベントです。

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