産業革新機構が博報堂のクリエイティブラボ「恋する芸術と科学」と提携、〝右脳と左脳の融合〟でスタートアップを経営支援

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27日開かれた記者会見から。写真中央で話をするのは、産業革新機構 専務取締役の土田誠行氏。

企業の事業再生やスタートアップへの出資を行う官民ファンドの産業革新機構は27日、広告大手の博報堂が運営する次世代型クリエイティブラボ「恋する芸術と科学」と連携し、産業革新機構のポートフォリオや新規に誘致するスタートアップの経営支援に乗り出すことを発表した。産業革新機構と博報堂の間には金銭の授受は発生せず、博報堂はスタートアップへの役務提供の見返りとして、当該スタートアップからのストックオプションの受け取りを検討する。

両社は、ポートフォリオの中から1〜2社、それ以外のスタートアップから1〜2社を募り、経営支援を行うことで当該スタートアップのバリューアップを狙う。どのスタートアップを支援するかについては両社間で内定しているようだが、詳細を調整中とのことで言明を避けた。

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27日に開かれた記者会見の席上、産業革新機構 専務取締役の土田誠行氏は KPCB や Andreessen Horowitz のようなアメリカの有名 VC がマーケティング・プロダクトデザイン・ビジネスデベロップメントなどの専門知識を持った人材をインハウスで整え、投資先のスタートアップを支援していることを指摘し、効率性・戦略性・数字から見た経営の舵取り(=左脳)のみならず、クリエイティブの要素(=右脳)がスタートアップのバリューアップに必要不可欠な存在になってきていることを強調した。産業革新機構では、スタートアップを支援する上での要素のうち、投資と管理については充足していると考えており、クリエイティブ・マーケティング要素の強化のために、今回の提携に至ったと説明している。

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博報堂「恋する芸術と科学」ラボリーダーの市耒健太郎氏

同じく記者会見に登壇した「恋する芸術と科学」のラボリーダーを務める市耒健太郎氏は、同ラボのこれまでに手がけているプロジェクトの事例として、発酵醸造文化と地方創成を組み合わせた「食のシリコンバレー」プロジェクトや、河川流域文化圏プロジェクト「Tokyo River Story」を紹介。同ラボでは、社会にインパクトを与えられる事業へのサポートを「社会彫刻(social sculpture)」と呼んでおり、今回の産業革新機構との提携におけるスタートアップへの役務提供についても、この「社会彫刻」のコンセプトに則って行われると話した。

産業革新機構はこれまでに、他事業会社や VC との協調における直接投資で83案件に対し総額473億円を出資しているほか、MDIP、UTEC(東京大学エッジキャピタル)、グローバル・ブレイン、WiL(World Innovation Lab)、インキュベイトファンドけいはんな ATR ファンドなど9案件に対し総額554億円を LP 出資している。

VC がスタートアップの経営支援やバリューアップにクリエイティブの要素を取り入れる動きとしては、今月初め、デザインスタジオの IDEO が Genuine Startups とアーリーステージ向けVC「D4V(ディー・フォー・ヴィ)」を設立したことが記憶に新しい。

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