まずは100人のユーザーに愛されることーーAirbnbのグロース担当が語るプロダクトの開発と成長 #on_lab

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5月25日にOpen Network Labの主催で「Onlab Growth Hackers Conference 2013」が開催された。DropboxやAirbnbなど、世界規模でのグロースハックを手がけたスペシャリスト達が、それぞれのユーザー獲得の経験・事例を共有した。

プロダクトを利用するユーザ動向データを解析し、プロダクトの改善・改良を迅速に行っていくシリコンバレーで今最も注目の役割である「Growth Hacker(グロースハッカー)」について語られたセッションの模様をレポートしていく。


Gustaf Alstromer -Airbnb社 Product Manager, Growth-
Gustaf Alstromer氏-Airbnb社 Product Manager, Growth-

Airbnbのグロース部門におけるプロダクトマネージャーのGustaf Alstromer氏。

Airbnb以前は、2007年よりY Combinatorのプログラムへも参加しているモバイルのウェブコミュニティ及び100万人以上のユーザーを持つインスタントメッセージサービスを行うHeysanを共同創設者し、CEOとして製品開発を専門としていた。

その後、eBuddyというインスタントメッセージングサービスにてプロダクトマネージャー、Voxerというトランシーバーアプリケーションにおいて、グロースチームの統括を行った人物だ。

重要なのは成長率

Weekly Growth Rate

1%、3%、10%。この数字だけ見るとあまり変化はないように見えるが、毎週、これだけの数字で成長したら伸びたら、どうなるだろうか。どうなるかサービスの成長を成長率で捉え、成長率を少し上げることができれば、10週という期間で見ると、かなりのインパクトをもたらすことになる。

なぜ成長率に着目することが重要なのだろうか?Gustaf氏は、それぞれのプロダクトには目的があり、まずは目標を明らかにするのが重要だと語る。掲げた目標を達成できているのかを確認するのに、成長率という指標は良い。それも、その時点だけの数字ではなく、持続可能性が重視すること。

成長率とは以下の式で考えることができるとGustaf氏は語る。

Improve Growth Rate
= Number of experience * Improvemeant / experiment

Gustaf氏はグロースチームで数多くの実験を行い、うまくいくのはアプローチはどれかを見つけようとしている。できるだけ多くの実験を次々と行なっていくことが大事とのことだ。

Growthのためのアクション

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Growthのためのアクションは「Moment」「Message」「Channel」の3つのことに分けられる。特定のユーザアクションのMoment(瞬間)に、特定のアクションを促すMessage(Airbnbの場合「あなたもホストになりませんか?」というもの)を、適切なChannelで届ける。

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Airbnbのトップページで、右上の部分をクリックするとホストになることができる。上の写真で右上に表示されている赤い丸で囲まれている部分だ。

既にユーザとなっている人々にターゲットを絞り、彼らにホストになってもらえるようにしたという。その人達が、どうしたらこの黄色いボタンをクリックしてくれるのか。タイミングと、メッセージと、表示させる場所を検証するために試行錯誤を繰り返したそうだ。

Product VS. Growth?

グロースをやらないといけないと考えている企業は、プロダクトが十分でないことが多いと、 Gustaf氏は言う。グロースの前に、まずはプロダクトを充実させることが大事。プロダクトを改良していけば、グロースもついてくる。

では、どのタイミングでグロースに注力し始めるのが良いのだろうか?ユーザの数が増えたらプロダクトはよくなるのか?これはプロダクトによって異なる。Evernoteのようなサービスは、プロダクトの魅力が重要。AirbnbやVoxerは、エンゲージメントをつくるためにユーザ数が必要。

自分たちのサービスはどういったものなのかを把握し、今必要なのはプロダクト改善か、グロースかを考えることが重要になる。ユーザが成長していくときは、以下のようなサイクルが回るとGustaf氏は語る。

User Growthのライフサイクル:

      ①Activation(利用してもらう)
      ②Engagement(つながりをもつ)
      ③Retention(つながりの維持)
      ④Resurection(つながりの復活)

Gustaf氏は、Gmailを作ったPaul Buchheit氏の言葉を引用して、100人のユーザーに愛されない、リテンションが十分でないプロダクトにはGrowth Hackを実行しても仕方がないと語った。

“100 happy users” – Paul Buchheit, Creator of Gmal.

まずはいいプロダクトを作り、プロダクトを使っている人で幸せだと感じている人を追っていくことでなぜプロダクトを使っていて幸せなのか、どうして使ってくれているのかを分析すること。

Growthにふさわしいチームとは?

Gustaf氏は、Airbnbに移った理由を、プロダクトのグロースに集中できるところにいきたかったからだと語った。すでにプロダクトがマーケットのなかで機能しているところで、100万人単位で使っているプロダクトを、億単位にするにはどうしたらいいのか、それに取り組みたかったという。

Airbnbのグロースチームの構成は、Facebook、Twitterを参考にしている。11人ほどの少人数のチームで構成されており、メンバーの採用においていえることは、誰もがユーザとデータに好奇心をもっていること。さらに、人間心理への理解があることが適性として挙げられた。

Airbnbでは1日に何回も修正を加えているという。すべてのデザイナーとエンジニアが、常にメトリクスを見て行動するようにしているそうだ。

Growth tools:

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以上の画像は、Voxerにおいて実施した検証の様子だ。モバイル上におけるユーザの行動もトラッキングできるようになってきていることを活用し、すべてのステップを測定することが重要だ。

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グロースを手がけるのであれば、グロースに関わる部分全てでトラッキングすること。数値から仮設を導き、絶えず実験を行なって検証していかなくてはならない。

と、Gustaf氏は語った。同氏が語ったことで、最も覚えておかなくてはならないのは、グロースの準備ができていないプロダクトであるにもかかわらず、グロースを狙うのはよくないということだろう。ユーザがまだプロダクトを愛していない状態なのであれば、集中すべきはグロースではなく、プロダクトの改善だ。


この記事は、5月25日に開催されたGrowth Hack(グロースハック)をテーマにしたカンファレンスのレポート。他のセッションについては「Onlab Growth Hackers Conference 2013」でまとめている。

今カンファレンスを主催したOpen Network Labはスタートアップを支援するSeed Accelerator Programの第7期を2013年5月31日(正午)まで受付を行なっている。

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