シリコンバレーで3回起業して学んだ3つのレッスン

先日「Open Network Lab」がシリコンバレーで3回も起業経験のあるシリアルアントレプレナー、Vu Nguyenのイベントを開催した。そこでVuは「3回の起業を通して学んだ3つのレッスン」をテーマにスピーチをおこなってくれた。

Lesson 1: “Be a Hacker. Find a Way”

Vuが初めてスタートアップの立ち上げに関わった会社があの映画「ソーシャルネットワーク」にも出てきた「HotorNot.com」。実はマークザッカーバーグがフェースブックの前に作った「Facemash」はHotorNot.comをベースにしたアイデア。

Vuは元々大学を卒業する前にいつか自分のスタートアップをやりたいと考えていた。彼のメンターだった人に「いつかスタートアップをやりたいんだけどどうすればいい?」と聞いたら「誰かのスタートアップに参加するのが一番学べる」と答えてくれたそうだ。

それを聞いたVuは参加できるスタートアップを探した。しかし当時はスタートアップの数が少なく、面接も受けることもできなかった。そこでVuは大学の論文のための調査と嘘をついてスタートアップを逆にインタビューしてアプローチ。

するとあるスタートアップにすごく気に入られて創業メンバーに入る事ができ、CTOに就任した。それが「HotorNot.com」だ。

HotorNotでは大量の画像データを保存していたのでデータコストがものすごくかかった。彼は大学キャンパスのリソースを使ったり、Geocitiesにデータを置いたり、RackSpaceからサーバーのかわりにとHotorNotの広告枠をトレードしたりしてコストの大幅削減に成功。

HotorNot.comで学んだレッスンが「Be a hacker. Find a Way」(ハッカーになれ、道を探せ)だ。HotorNotに参加した方法も、サーバーコストの削減も違法ではない、普段のやり方と違う方法で達成できた。スタートアップはお金もリソースも限られているので、賢い方法でいろいろ達成しないといけない。なのでスタートアップではハッカーになることがものすごく重要。

最終的に会社の年間売り上げは6億円を超えた。

もう一つこのスタートアップで学べたのが起業するのにお金は必要ないということ。HotorNotでは全くだれからも出資を受け取らずに年間売上6億円を達成したのだ。

Lesson 2: “Stay Hungry, Stay Foolish”

HotorNotは12人のエンジニアで構成されたスタートアップ。その中から5つのスタートアップが生まれた。3社は買収され、1社は累計で黒字化。もう1社はこれからというところ。

HotorNotのアプローチはとにかく早くプロトタイプを作り、できるだけ多くのユーザーに使ってもらい、上手くいく兆しがあればエネルギーと時間を突っ込む。このアプローチで生まれた会社がVuが2回目の起業となる「Crunchyroll」だ。Crunchyrollの前には5回くらいアイディアを試して失敗した。HotorNotの映画版、モバイル向け写真ブログアプリ、クイズサイト、クーポンのブックマークサイト、面白い動画の投稿サイト等色々試した。

そして6つ目で出てきたのがオンラインで動画を見ながらチャットするサービス。3日でサービスを作って出してみたらすぐにトラフィックは伸びた。アニメの動画がよく投稿されていたのでアニメに特化したサイトに決断。チャット機能も必要ないと思って外した。

月間の訪問者数が350万人超えたところでいろんなVCから声がかかった。月間サーバーコストが300万円かかったので、550万ドル(約4億4000万円)を調達し2010年に黒字化した。

最初の頃はユーザーが違法に投稿していたアニメコンテンツばかり。なのでちゃんとしたビジネスにするためには、コンテンツの所有者から正式にライセンス契約を結ばなければならない。しかしコンテンツの所有者のほとんどが日本にアニメ制作会社。だから日本で法人をつくり、長い年月をかけてやっと正式にライセンス契約を締結することができた。

Crunchyrollで学んだレッスンが「Stay Hungry. Stay Foolish」(ハングリーであれ。馬鹿であれ。)

Crunchyrollでは様々なことにチャレンジした。動画配信サーバーの調整、動画エンコードの処理、日本のアニメ制作会社とのライセンス契約。もしこれらのチャレンジがあることを事前に知っていたら多分Crunchyrollはやってなかった。Vuは「私が当時ハングリーで馬鹿だったからこそできたスタートアップ」だという。

Lesson 3: “The Hardest Thing to Do, is Often the Right Thing to Do”

3回目の起業がビューティーに特化したソーシャルコマースサイト「Beautylish」。このスタートアップは去年の4月に開始したばかり。

ここで学んだレッスンが「The Hardest Thing do Do, is Often the Right Thing to Do」(もっとも難しいことは、多くの場合、正しいことである。)

Beautylish」で最も時間をかけた部分がコミュニティー作り。サービスのβを数ヶ月でつくり、招待制でゆっくりコミュニティーを作った。お金を払ってユーザーを集めることができたが、そうすると間違ったインセンティブを持ったユーザーが集まり純粋にビューティーを愛するコミュニティーができないと考えた。

ゆっくりと地道にコミュニティー作りに6ヶ月間かけた結果、今はTwitterだけでも6万人以上のフォロアーを獲得することができた。

その結果、シリコンバレーで一流の投資家から資金調達を行う事ができた。中にはSV AngelsのRon Conway, YouTube共同創業者Steve Chen, Yelp創業したJeremy Stoppelmanなどが名をつらねる。

Vuが3つのレッスン以外にも伝えたいアドバイスがここにある。

・起業をするときは自分がもっとも興味を持つ分野を狙え。

・資金調達を行うのであれば大きな市場を狙え。

・サービスは早くリリースして多くの人に使ってもらえ。

・成功までの近道はない。

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