Echelon, PennUp, Hackerspace.SG – 日本のスタートアップ4社とのシンガポール訪問記

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シンガポールでは、一年中さまざまなカンファレンスが開催されるが、年に何度かあるテック系カンファレンスの中の一つ、Echelon(エシュロン)に行ってきた。会場はシンガポール国立大学。Asiajin のメディア・カバレッジが主目的だったので、イベントの内容についてはそちらに近日書くことにするが、2日目に TokyoMango というブログで有名なLisa Katayama 女史がモデレータを務めた、Japan Tech Scene というパネルにも招いていただいた。

以下、とりあえず、ステージから聴衆の質問を聞いてみたり、言いたい事を言ってみたりして感じた私の感想。

  • 概して、シンガポールに居る人や Echelon に集まっているスタートアップは、日本に進出することに興味を持っている。通信インフラが整備されているから、期待できる(英語圏からすれば未開発の)ユーザ人口があるから、資金調達の市場として魅力があるからなど、理由はさまざま。ただ、彼らが日本のテックやモバイルの現状を正しく共有できているか、というと、そうではなく、妄想めいたものも含まれる。私は日本の事情をもっと情報発信していこうと自分に誓ったし、もっと多くの日本のテックプレナーが海外のカンファレンスなどで発言する必要性を痛感させられた。
  • ことシンガポールに関しては都市国家であるため、スタートアップやサービスが考えられるときに、想定ユーザに国の外とか内とかいう概念が存在しない。シンガポールの国の生い立ちから言って、彼らは自分たちの生活様式を世界標準に同化させることに慣れているので(例えばシングリッシュなど)、地域の多様性とかサービスのローカライズの必要性は、頭ではわかってもなかなか身体で理解してもらいづらいかもしれない。ただ、言葉や地域性や習慣の違いを意識しなくてよいサービスやアプリが近年増えてきているのも事実であり、これはシンガポールを含むアジアのスタートアップについて、大きなアドバンテージである。
  • パネルで同席した、CookPad の国際製品ディレクターのJon Yongfook Cockle氏は、日本でプロモーションを成功させるには、キャラクターを使うのが効果的、という話をした。彼が紹介したのは、クラレの「ミラバケッソ」。あのアルパカは本質的にはクラレのビジネスに無関係だが、日本の多くの人々は、あのアルパカを見るとクラレという会社を思い出すのである。私はプロモーションのためなら、日本向けにサービス名を変化させてみることも選択肢の一つだと言った。ステージ上ではあまりいい例が思い浮かばなかったが、現に自動車や映画は、その名前やタイトルにわざわざ、英語圏で通じない和製英語をふってまで、日本でのプロモーションに傾倒する。テックにおいても、日本でサービスを普及させたいなら、アイデンティティを現地用に切り替えてみるくらいの覚悟はあってもいいかもしれない、と思った。

常々、いろんなメディアを通じて日本のテックのことを伝えるとき、どのようにしたら海外の人に共感してもらえるか、日本のテックのよいエッセンスを取り入れてもらえるか、ということを意識するようにしているが、まだまだ鍛錬が足りないことを痛感している。

ところで、今回 Echelon が開催されることを Startup Dating を通じて事前に告知したら、スタートアップを含む何人かの日本の人が参加してくれることになった。もともと、Echelon にエントリーしていた Compath.me に加え、Qomune、Cacoo、Moso とともにピッチをすることができた。Echelon の最終日、Penn Olson の Willis Wee 氏がシンガポール市内でミートアップを予定していたのだが、その機会に日本のスタートアップ4社のピッチを提案したところ、快く受け入れてくれた。シンガポール内外のテックプレナー、投資家、ジャーナリスト等など、揃った顔ぶれはなかなかのもの。Ustream中継を試みたが回線事情が悪く断念、当日の様子はYouTubeにアップロードしてある。(Penn Olson の記事はこちら。)

 

その翌日は、私がシンガポールを訪れたら必ず行く Hackerspace.SG でミートアップ兼パーティーを開いてもらった。ここの代表者の一人である Meng Weng Wong 氏は、約20年くらい前に米国ペンシルバニアで pobox.com というベンチャー(当時はまだスタートアップという言葉はなかったと思う)を立ち上げた人物だ。今ほど容易にまだ自分のドメインを取れなかったし、フリーのメールサービスが無かったころなので、私も大学生の頃、多用していたのを覚えている。彼は数年前シンガポールに戻りエンジェル・インベスターをしているが、なぜか料理が非常にうまいことで有名である。前出のスタートアップの人たちに、ぜひ彼の手料理を食べてもらいたかったので、Hackerspace.SG に招き、ここでもビールを飲みながら軽くピッチしてもらった。インドネシアからビザ切れでシンガポールに一時帰国中のプログラマ、バンコクに会社を持つスタートアップ経営者、私が Hackerspace.SGに行くとなぜかいつも居るシンガポールの若者など、総勢10名位の参加者がWong 氏の手料理に舌鼓を打ちながら、日本のスタートアップのプレゼンテーションに耳を傾けてくれた。

今後のアジアのテック・カンファレンスだが、おそらく、今年も9月くらいには、SingTel(シンテル、日本で言うNTT)が Accelerate を開くだろうし、11月末には有名な米国のテック系カンファレンス DEMO の アジア版、DEMO Asia がシンガポールで初めて開催される。また、場所は異なるが、10月末には、TechCrunch が北京で、李開復氏(関連記事はこちら、元Google中国CEO。)のInnovation Works(創新工場)と共同で、TechCrunch Disrupt を開催する予定。ちょっと今回のシンガポールに味をしめたので、折に触れて、現地のコミュニティと共同でピッチ・ツアーみたいなものを企画してみたい。興味ある方は keep in touch with us.

右の写真は、Meng Weng Wong 氏が作ってくれた料理の一つ。

【追伸】 そういえば、おそらく、北京の TechCrunch Disrupt のタイミングになると思うが、今年も 500startups の Dave McClure 氏が率いる Geeks on a Plane がアジアツアーをやるらしく、BootHK の Jon Burford 氏が「北京に来る McClure 一行 の飛行機を、香港のテックコミュニティがハイジャックするんだ」と意気込んでいた。年末に香港でも何か面白いことができるかもしれない。

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