プロダクトの未来を信じる者、起業家と袂を分つ者 – インド・メンター事情

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【翻訳 by Conyac】 【原文】

起業家のジレンマ - メンターはあなたのプロダクトの可能性を信じることができるか (Image copyright: Matt Groenig)

前回の寄稿に引き続き、インドのスタートアップ・エコシステムで最も不足していると感じる分野について書きたい。それは、よいメンターの不足だ。

すべてのスタートアップには、メンターやアドバイザーが必要だ。私のように、初めて起業する人なら、多くの決断に多くの質問が生じるから、経験者に相談できることはありがたい。メンターがどんな姿・形のものであれ、何より大事なのは自分の起業スタイルに会った人かどうかということだ。

メンターやアドバイザーとの私の経験から、このことを説明したい。そして、インドのメンターの問題について、私の考えを述べたいと思う。少し偏見が入っているかもしれないが。

1年前に TeliportMe を始めた頃、我々はまだ BITS360 という名前だった。ホテルや大学などを顧客とし、プロダクトを販売するサービス会社だった。我々はインドの有名なビジネスプランコンテストで、ファイナリスト4社に入賞した。目の前に顧客、売上、収益を持ち、形のあるビジネスを展開していた。

そのコンテストの直後、我々は審査員の一人から連絡をとりたいとのメールを受け取った。彼に連絡をとると、我々が面白いプロダクトを作っているので、アドバイスをさせてほしいという話だった。彼は善良な人で、いろいろと手を貸してくれ、私も彼のことが好きだった。彼とは実りの無い取引もしたが、それでも問題なかった。しかし、彼にはアイデアがなかった。あるいは、私たちのビジョンを理解していなかった。次第に、我々が築こうとしているものを彼に説明するのが難しくなっていった。

彼はサービス業の出身であったため、我々にサービス業に集中するよう言い続けた。彼が一度、こう話したのを覚えている。「ヴィニート,私が見たいのはトップレベルのモノだけなんだ。小さなことにこだわるのはよそう。」 私は、彼が言うこともわかったし、その発言にも感謝している。でも、プロダクトを見なければ(そう、彼は決してプロダクトを見ようとしなかった)、話を続けるのは難しくなっていくだろう。

ある日彼は言った。「ヴィニート、我々の関係を終わりにしよう。」 それは突然のことで、私には奇妙な言葉に聞こえた。女の子と会話を楽しんでいて、突然「私たち、次のステップに進みましょうよ」と切り出されるかのように。

私は少し後ずさりした。たぶん、私がよくなかったのだろうが、彼がプロダクトやウェブを理解していないことを知っていた。彼には悪いことをした。


次のレベルへ

私の2人目のアドバイザー/メンターは、半導体業界の出身だった。その分野で彼は権威で、シリコンバレーで3つの会社を売却した。彼は素晴らしい人であり、昔から彼のことを知っていた。彼は、我々の1人目のメンターよりウェブのことをよく知っていたが、その知識は使いものになるレベルではなかった。しかし、彼は私によくしてくれ、我々のプロダクトが信頼を得る門戸を開いてくれた人物だ。彼も2ヶ月後、前にも聞いた提案をしてきた。「我々の関係を終わりにしよう」

今回は心の準備ができていたので、端からはその言葉を待っていたかのように見えたかもしれない。私は彼と向って座り、彼が納得できる「終わり方」を議論した。彼は信じられない数字を口にした。会社株式の3〜5%、コンサルティング料、その他もろもろ。

同じような経験をもつ人を数名呼んで相談したところ、彼らは声を大にしてこう言った。「ばかばかしい。少なくともきっちり精算してもらい、彼がXX円の資金調達を手伝うって言うなら、5%丸々あげればいい。じゃなければ、まず最初に1%、残り2年で2%ずつだね。」

私は自分のアドバイザーに、もう一緒にはやっていけないと頭を下げた。気分のよいものではなかった。彼はそれまで私たちをよく助けてくれた。彼との関係をある種のバーターにすることは、私を忌々しくした。もうこんなことを話したくない。彼は予想通り攻撃的だった。彼との会話は終わった。

現在では、私も妻となる女性に婚前契約を取り交わしてもらうことがどれほど難しいか、理解できるようになった。


他山の石

これからあげる2つの話は、ここ1年以内に起こった話だ。TiE(訳注:起業家精神を促進する世界組織「ザ・インダス・アントレプレナーズ」)と他のグループ出身のメンターを迎えた。そして多くのことを経験した。残念ながら、今回のメンターにウェブ会社を立ち上げた経験者は居ない。私がいろんな数値を話しても、まったく彼らの意に介さなかったようだ。そこで、彼らとの時間の多くを、私のサービス会社の話をするのに費やしたところ、彼らは興味を示すようになった。

自らウェブ会社を創業した唯一の人物は、ヴィシャル・ゴンダルだ。最近、スーパーエンジェルについての取材で彼に会った。彼とはあまり多くの時間を過ごせなかったが、少なくとも適当な質問を私たちに投げかけた。

今までにプロダクトのことを話した人と、インドで出会うことはあまりない。アーリーステージの会社にとってよいメンターとは、プロダクトを用いた事業計画を理解してくれる人たちだ。また、起業家が成功できるよう、自らの信頼を貸してくれる人であるべきだ。起業家は、自分のプロダクトのことでいつも悩んでいる。四六時中、どうすればプロダクトがよくなるのかを考えている。メンターがプロダウトを見るのに数分さえ費やさない人だとしたら、まったく意味をなさない。

こんな話や事例を通して、私は、インドのメンターや VC はプロダクトに関心がないのではないか、と思うようになった。プロダクトについてメンターと数時間にわたって会話し、改善方法を提示してくれるシリコンバレーのやり方とは、まったく対極的だ。

インドのメンターの多くは、ネット業界かどうかに関係なく、BS(貸借対照表)的なことを話したがる。戦略的な位置づけや、他社への売却、反対に他社の合併、IPO (株式公開)を目標として、会社をどうやって成長させるか、などなど。彼らはソフトウェアを量産商品のように話し、世界をユニークに変化させるものだとは考えていない。

アドバイザー/メンターに、資金調達、人材採用、マーケティング、ピーアールのような高度なことを助けてもらいたいのに、彼らが日々あなたのプロダクトを使って事業計画を理解してくれないなら、彼らをメンターにしておくのは得策ではない。

さぁ、前進しよう。インドに必要なのは、多くのメンターだ。メンターが増えれば、スタートアップは多数の候補者の中から優秀な人物をメンターに選ぶことができるだろう。

【via Penn Olson 】 @pennolson


著者紹介:ヴィニート・ディヴァイヤー

ウィニートは、先月本誌がレビューしたアンドロイド用アプリ「the 360」を開発した、インドのスタートアップ TeliportMe 社の創業者兼CEOである。本稿を含め、このテーマに関して、3つの記事が掲載されている。 読者は、Twitterで彼をフォローすることができる

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