シリコンバレーの歴史、スーパー・エンジェルの誕生、日本企業との懸け橋を目指すNSVについて[前編]

by Yukari Mitsuhashi Yukari Mitsuhashi on 2012.1.20

今年11月末に開催されたTechCrunch Tokyo 2011でゲスト講演を行ったDuncan Davidson氏もメンバーとして参加するネットサービス・ベンチャーズ(NSV)。NSVは米国シリコンバレーを本拠に、2002年から日本の事業会社へのコンサルティングサービスを行う企業。2011年10月には、新サービス「ファンド・オブ・ファンド」へのmixiの参加がニュースになっていたり。そんなNSVの加藤雅己さんにインタビューさせていただきました。

シリコンバレーの歴史、必然的に発生したエンジェルの役割、そしてNSVの価値まで濃い内容になってます。また記事の後編では、NSVの共同ファウンダーであるRichard Melmon氏(Electronic Arts共同創業者)や校條浩氏(MITマイクロシステムズ研究所、マッケンナ・グループなど)へのインタビューも紹介します。

シリコンバレーの歴史

シリコンバレーの誕生は1950年くらい。重厚長大な企業が東にひしめく中、開拓者が西に流れ、ヒューレットパッカードやインテルといった初期のITスタートアップを立ち上げた。新しいアイディアを形にして産業にし、会社にする。これらの企業をつくった人材が後にベンチャーキャピタル(VC)をつくり、徐々にシリコンバレーができていった。

VCの登場は1970年代。クライナーパーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ (Kleiner Perkins Caufield & Byers)など、スタートアップのアーリーステージに出資して育て、売却や株式上場でリターンを得るという原型ができあがった。ここからVC業界は肥大化していくものの、その中心的なメンバーは変わらず。そこから生まれたのがAmazon、Google、YouTubeといった今日の巨大IT企業。

40年間続くシリコンバレーモデルの“Disrupt”

2011年米国で開かれたTechCrunchのイベントの名前は“TechCrunch Disrupt”。この言葉は「破壊」を意味する。東の企業が過去に作った価値を西の新勢力が崩し、新しいイノベーションを起こしていく。これまでVCやスタートアップはこの破壊を行ってきた張本人。それが今はVCとその従来のやり方が破壊される番になっている。それにはいくつかの背景がある。

まず一つはVCの肥大化。最初は数十ミリオンくらいだったファンドが、成長してリターンを儲けることを繰り返すうちに肥大化し、大手ファンドは5億ドルから10億ドルを扱うように。この規模でリターンを出すには数倍から十数倍にする必要があるけれど、到底アーリーステージのスタートアップに細々と出資していたのでは追いつかない。既に成長カーブに入っている企業を狙って大きな売却益を出さなくてはいけないという段階になって到来したのがサブプライムローン。

当然ファンドの資金集めは難しくなり、そもそもファンドに入ってくるお金が減少。IPOが極端に減ったことで、せっかく育てたベンチャーもM&A以外に大きな売却益を得る機会がなくなってしまったという現状がある。加藤さんの言葉を借りると、「戦艦大和になってしまったVCがエコノミクス的に存続できなくなってしまった。」というわけ。

別の理由が“Lean”という時代。10年前、AmazonやGoogleをつくるにはそれなりの資金が必要だった。そこがVCの出番だった。でも今は低コストで誰でもサービスを始められるため、変にお金を入れる必要もなくなってる。リターンを主目的とするVCのお金を入れれば、それなりに株式を持っていかれるし、育てるために色々指図もされることになる。それなら小さい資本のままでと考えるスタートアップが増え、彼らにとってのVCの魅力が下がってしまった。

また、以前は新しいビジネスをつくると、その流通、広告、記事を書いてもらうことまで色々なことのハードルが高かった。それが今はソーシャルというインフラができたことでサービスインしてから結果がでるまでの時間が短縮された。ユーザに早く使ってもらってフィードバックをもらい、正しいかどうかの判断、またPivot(方向転換)する判断もしやすい。昔はこのプロセスにもっと時間もかかったし、手段も確立されていなかったからその分資金が必要だった。と、そんなこんなパラダイムシフトによってVCは追随できなくなってしまった。

VCとスーパーエンジェル

スーパーエンジェルも大きなくくりで言えばベンチャーキャピタル。いくつか主要な違いといえば、扱う金額。大手VCが10億ドル規模を運営する一方で、スーパーエンジェルは小さめのファンドで5,000万ドル~1億ドルほど。投資サイズも小ぶりで100万ドル以下だったり、例えば500 startupsを見ても3万ドル〜5万ドルくらいの規模も少なくない。

また運営する人も、VCにはキャピタリストや投資家たちが多いのに対して、スーパーエンジェルは自らスタートアップで一度や二度成功した経験を持つ人間。500 startupsのようなインキュベーションなら数十人のメンターがつき、課題に直面しているスタートアップにとってまさにリアルな課題解決につながる。

スーパーエンジェルと従来型一流VC比較

もうひとつ、VCとスーパーエンジェルで異なる点はその対象分野。いわゆる“Lean startup”といわれるものはネットサービスやスマートフォンなどに限った話。インフラ、ハード、半導体、ヘルスケアといった分野に関しては、今もなお莫大な資金が必要なためそこがVCの出番。時代の流れで同じ形では存続できなくなったものの、その中で役割分担をすることでシリコンバレーが回っている。

主なスーパーエンジェルファンドおよびインキュベータ

スタートアップの資金調達にみえる課題

スタートアップの資金調達には、シードラウンドがあり、その後成長規模に合わせてA、B、Cと投資ラウンドが決まる。シードが5万〜10万ドルくらい、次が300~500万ドルくらいで、さらに次のステージで1000万ドル以上入るのが平均。シードラウンドでは調達した資金で試行錯誤をし、Pivotを繰り返した上で存続できるモデルにたどりつくのが選ばれた数社。

と次に資金がほしいとなったとき、いっきに300~500万ドルも入れてしまうと株を大量に持っていかれてしまう。またシードで入れてもらったスーパーエンジェルは既に出資をしているため、次のラウンドで根付けができないというジレンマがある。100万ドルくらいのつなぎ投資がほしいというスタートアップの需要がある。この空白地帯を埋めるために誕生したのが“Bullpen Capital”。

ブルペンキャピタルはスーパーエンジェル投資案件のつなぎ投資を対象

Bullpen Capital(ブルペン・キャピタル)

BULLPEN CAPITALTechCrunch Tokyo 2011で講演をしたDuncan氏率いるBullpen Capitalは、まさにこの空白地帯を埋める中継ぎ投資を行うファンド。中心メンバーは3人。Paul Martino氏は30代中盤で、既にTribe、Aggregate Knowledgeなどを立ち上げ、Tribeの共同創設者であるMark PincusがつくったZyngaにも出資してる。

Duncan Davidson氏は、CovadやSkyPilotを共同創業し、大手VCであるVantagePoint Venture Partnersのパートナー経験も持つ。

わたしがインタビューさせていただいたRich Melmon氏は、Mixiとパートナーシップを組んだNSVのファウンダーでもあり、Electronic Artsの共同創設者。Intelの最初のマイクロプロセッサーの戦略をつくったり、アップルのMacintoshの導入戦略をつくったりしたシリコンバレーの重鎮。

この世代の違う3人が、スタートアップそしてスーパーエンジェルのニーズから生まれた特殊なファンドを運用し、スーパーエンジェルからきた優良案件のつなぎ投資を行ってる。月1回のペース(2011年12月時点)で、ソーシャルCRMやウェブ、モバイルのディスカバリー、広告などのジャンルにこれまでトータルで12社くらいに出資してる。Bullpen Capitalが最初に出資したのが、「Assistly」というソーシャルCRMサービス。ユーザのソーシャルメディア上の発言をウォッチして言語解析し、それに応じて適切な担当者にタスクとしてアサインする。出資した9カ月後にはSalesforceに5000万ドルで買収されたそう。

後編につづく

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