スタートアップ成功の鍵は“人材”を大事にすることだ

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【翻訳 by Conyac】 【原文】

誰かのために働いてから15年過ぎ、Mikaal Abdullaはやっとのことでかっこいいと思える自分の会社を始めた。彼は8 Securitiesの共同設立者兼CEOであり、シリコンバレー、ニューヨーク、ロンドン、ドバイ、ムンバイ、シンガポールを経由して今は香港にいる。


スタートアップの成功を決める要因はたくさんある。製品の改良、ターゲティング、競争力などは当然のことで重要な要因であるが、あまりに多過ぎてこの記事では書ききれない。リップサービスだと例えられることも多いが、私見として成功を決める最も基本的な要因は雇っている従業員だと思っている。

これはアジアのスタートアップが直面している課題であり、特に設立当時のメンバーを超えるチームを作り上げることの重要性について私は声を出してきた。それらについて、いくつかのカギとなる構造的、文化的、そして社会的な課題の概要を説明してきた。この記事は「アジアのスタートアップで華々しいことなんて何もない」とタイトル付けた記事で起業家として直面してきたことを書いたものである。この記事を問題解決の中心として考えたい。

共同設立者ともに、私たち2人はスタートアップをするには年を取り過ぎている。E*TRADEという従業員4000人の企業にいたが、この会社はシリコンバレーで創業した魅力あふれるスタートアップだった。私たちは二人とも同じ考えを持っているが、自分たちのスタートアップを始めるにあたり、退職する前から学び取っていた最も大切な教訓というものがある。それは、良いときも悪いときも組織をいかに率いていくか、仕事を達成することに集中する文化をいかに保っていくかということだ。

ETRADEが事業としてピークを迎えていた頃、我々は15の地域からなる500人のチームを管理していた。特定地域での事業には、非常に上手くいったケースと失敗に終わったケースがあった。ほとんどのケースに当てはまることだが、結局は、現場の人と彼らの信念や遂行する質に関わってくる。長期的に最も有用な財産になるのは製品ではなく、”人”である。チームを作る際、現時点のままではなく、将来スタートアップがどうあって欲しいか、それを念頭にチーム作りをしてもらいたい。

設立メンバーが少人数なら、自分達の製品や目の前のチャンスに対しあなたはやる気に満ちている(そうあるべきだ)。上手くいけば、あなたのアイディアで益々弾みがつき、資金の調達や資金の再投資でキャッシュフローの健全化を図り、成長させていく立場に立つであろう。最初の投資は、恐らく設立メンバー以外の人の雇用になるだろう。4人、5人そして6人と従業員を増やしていくにつれて、あなたが求めるやる気の度合いに彼らが合わなくなる事に気付くだろう。最初は、なぜ自分のように気持ちを込められないのか理解できないだろう。でも一歩さがって冷静に考えてみることだ。

人はいろいろな理由で働き、自分自身の意欲とモチベーションを持っている。チームのメンバーがレッドブルを飲んで朝方4時までコードを書きたくないと思っていても切り捨ててはいけない。モチベーションを合わせられないのは、そのスタートアップにまったく合わないというわけではない。今まで一緒に働いてきたメンバーは2つのはっきりとした資質がある。自主性があり、方向性を持って実行することだ。会社を大きくしたいと思ったらチームのモチベーションが広がっていくのを予期してうまく適応していくことだ。事業への熱意は、違った形で目に見えてはっきりと現れてくるだろう。

運営しているスタートアップにとって、人材を競争力のある利点に変えていくにはどうすればいいのだろうか。シリコンバレーではよくあることだが、一般的にアジアでは他のスタートアップとの人材獲得競争などはない。代わりに大企業との競争があり、安定と長期の雇用が認識されている点である。立ち上げたばかりのスタートアップはここには太刀打ちできない。信用し敬意を持って人を雇っていくという前提で、実際にもっと高いレベルにあげていけるのだ。いくつかのアイデアがここにある。

休暇制度という考えをなくす

8 Securitiesを立ち上げた当初、会社の規模を考慮して自分たちの利点について考えることにした。まずは休暇日数から始めた。

香港では、法律によって定められている休暇は14日であるが、自社では25日に決めた。仕事の質というものは、日数や時間では計れるものではなく遂行した業務量で見るものだ。自分で職務を遂行できる人を雇えばやり遂げてほしいことをしてくれる。職務を中心に考えている人があちこち追加で休暇を取ることを心配はする必要がなくなる。休暇制度を全面廃止したいと思っており、そもそも休暇日数の記録すらなくしたい。私にとってどうでもいいことなのだ。競合他社よりも業務に集中し生産性を上げる努力を止める日はこの制度への取り組みを考え直す日だろう。そのような日が近いうちにやってくるとは思っていない。

チームメンバーの福利については厚遇すること

次に実行したことは、妊娠出産費用の保証を含む豊富な医療給付プログラムの実施だ。健康保険の諸手当は労働者補償費の5~10パーセントくらいであり、ここは減らすべき経費ではないと考えている。従業員の福利と安全は実践すべき事項の第一にくるものだ。24歳で健康な身体だ、という人もいるかもしれないが、チームの他のメンバーはまったく健康だと感じてはいないかもしれない。このことは、チーム内にこの会社を長期にわたって発展させていくことに本気で取り組んでいることを分かってもらえる、もっとも大切な投資の一つなのである。

独裁制にはならない(これはライバル企業にまかせる)

チームのメンバーには自由を与えて生活と仕事のバランスをとってもらうことだ。誰かが1時間歯医者に行くことに対して目くじらをたてない。1日のうちに何度か休憩時間を取ってもらい人と交流してもらい、コーヒーを飲んでもらい、自由にインターネットをしてもらう。自らが率先してすればメンバーもやるだろう。誰も朝から晩まで生産性を上げ続けることなどできない。わずかな心の休息なしには、生産性はとにかくなくなってしまい、ただぼんやりとスクリーンを見るだけになる。これは従業員の行動を逐一報告させる競合が陥っている状況だろう。

各種多様な環境を整える

経験、国籍、性別などの多様性は強力な武器となる。こういった壁を越えた多様性は、様々な考えや意見をもたらしてくれる。思考の多様性がないと、イノベーションや強みが損なわれてしまう。以前の仕事では様々なメンバーのいるグローバルなメンバーを管理し、そのような文化を社内に持ち込んでその大切さを教え込めたのはとても幸運なことだった。今のチームは6カ国の人達で構成されている。

弊社はスタッフの大多数が女性という、金融業界では前代未聞の会社である。新たな考えを吹き込むために業界外から人材を雇うための努力をやっと始めたのだ。アイデアのために自分の内側ばかり見つめがちな古い業界の目を覚ますには、多様性が必要だ。これがまさに彼らが革新しない理由、そしてあなたが本当のチャンスを手にしている理由である。

透明性の重要性

チームを組むときには、報酬だけでなくリスクについても明確にするということが非常に重要だ。あなたがきっと直面するであろう市場や資金調達のリスクについて、部下の一人一人があなたほどよくわかっていないかもしれないということが、日常茶飯事になってはならない。

リスク許容度に関して一定のレベルに達していない人がスタートアップでやっていくことは不可能なので、あらゆることを明確にするということはあなたにとっても有利に働くのだ。認識されているリスクを事実に基づいて軽減し、いつも正直にいることを心がけてもらいたい。あなたは最終的には誰かの生活に対して責任を持っているので、一人一人が状況をよく承知した上でやっていくべきなのだ。また、良いことでも悪いことでも、ビジネスの進み具合についても率直であることを強く推奨する。我々のオフィスでは天井に取り付けた4つのプラズマスクリーンでリアルタイムの主要指標を表示している。情報を与えないことは疑念を生むし、私はむしろ一人一人に自分たちは皆いっしょに取り組んでいて一つなので恐れる必要はないという思いをもってもらいたいのだ。

株、株、そして株

シリコン・バレーとアジアの一番大きな違いはアジアには株式の文化が不足している点だ。創業者以上に、貴方は従業員が長期株式より給与、福利厚生、安定に関心がある事に気付くだろう。従業員が株式を求めないからといって与えてはいけないという事ではない。私の提案は株式をチームの皆がついていける具体的なゴールに結びつけるという事だ。我々にとって、ゴールが最初の継続的な収益性となる。

達成したら、全従業員に株式を与え、投資家との株主契約に規定する。株式にまだ価値が無いから(従業員は価値を全く感じない)、最初から株式を与える事が役に立つとは思わないが、株式は業績や忠誠心に対する報酬の為のツールとして使うべきだ。

この考えを貴方に残しておこう。チームを構成し動機付ける事は最も大変な仕事となる。繰り返すが、今日ではなく将来、どういう会社にしたいかの考えを持っておこう。貴方の製品は今のところは良いが、貴方がスタートアップした会社が成功するか失敗するかの究極の要因は”人”になる。毎度のことだが、Good Luck!応援しているよ!

[画像引用: Shutterstock]

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

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