スタートアップのプレゼン大会で気をつけるべき5つのポイント

最近のスタートアップ企業を巡る盛り上がりもあり、ウェブサービスやアプリのプレゼン大会というのは年々増える傾向にあります。

私自身もWISHというウェブサービスのプレゼン大会を2009年から主催し、多くの企業の方々のプレゼンを見てきましたが、日本ではプレゼンの教育を受ける機会が少ないせいか、せっかくの良いサービスなのにもったいないと感じるプレゼンを見ることも少なくありません。

DSC05236Photo by koyhoge

私自身がサービス側でのプレゼンの経験があるわけではありませんが、プレゼン大会の主催者側の視点から、ここは気をつけた方が良いんじゃないかなと思うところをあげてみたいと思います。
(ちなみに、このポイントはあくまで日本の「プレゼン大会」向けであって、「投資家」向けのポイントではありません。念のため。)

ポイント1:「自分」を知ってもらう

いきなりウェブサービスのプレゼンという趣旨から外れてしまうかもしれませんが、個人的にプレゼンの冒頭でもったいないなと感じるのは、意外なほど「自分が誰なのか」を話す人が少ないことです。

プレゼン大会形式の場合プレゼン時間が10分とか5分というケースは少なくないですから、いきなりサービスの特徴をアピールしたい気持ちは良くわかります。

ただ、プレゼンの場、というのはあくまで人と人のコミュニケーションの一つ。自分がどういう人間かというのを聴衆に知ってもらい、「この人応援したいな」と感じてもらうのはプレゼンの入り口としてとても大事です。

人となりや理念・ビジョンに共感してもらえれば、サービスのアピール自体は不発に終わっても、プレゼンが終わってから声をかけてもらえる可能性が実は高くなるのです。

長々とプロフィールを説明する必要はもちろんありませんが、自分の人となりを少しでも感じさせるような逸話や説明を最初に入れるのをお勧めします。

ポイント2:自分たちが解決する「問題」を話す

これは2009年に来日したシリコンバレーの投資家として有名な500startupのDave McClureさんがStartup Weekend Tokyoで強調していたポイントです。

私たちはついつい自分たちのサービスの特徴や機能から話し始めてしまいがちですが、10分程度のプレゼンでいきなりそこから話し始めるのは危険です。何しろ聴衆はその機能が特徴的か合意してくれるかどうか分かりませんし、全く知識がなく理解してくれないかもしれません。

まず強調すべきは、現在存在する「問題」や「課題」です。

問題が存在し、それを解決する必要がありそうだという点で聴衆の共感が得られると、その後のサービス紹介もすんなりと聴衆に理解してもらえるようになります。問題に対する姿勢が明確であれば、聴衆側から適切なアドバイスやフィードバックももらいやすくなります。

ポイント3:インパクトのあるデモをする

当たり前のようで意外にトラブルが多いのがやはり「デモ」です。

プレゼン時間が短いため、リスクの高いデモはせずにパワーポイントだけでプレゼンを済ませるという方が多いのも事実ですが、個人的な印象から言うとやはりサービスやアプリのプレゼンイベントで「デモ」は必須です。

ポイント1と逆説的になりますが、プレゼンをするのは人間でも、実際に聴衆にアピールし、実際に聴衆に使ってもらうのはサービスやアプリ自体であり、サービスのデモを見せずにプレゼンだけに終始してしまうのは、映画の画像素材を見せずに口頭で映画の内容や魅力を説明しようとするようなものです。

また、デモをする際にも時間が短い中、基本機能から順番にすべての機能を見せようとする人がいますが、見せるべきは最も自信がある部分。壇上でダラダラと地味な機能を見せていくと逆効果になることも良くあります。

あなたの自身の作品であるサービスの良さが、短い時間でも聴衆の印象に残るように、是非周到に準備をして本番のデモに望んで下さい。

回線状態やブラウザのタイムアウトなどによるトラブルも良く起こりますから、動画で事前に撮影しておき、口頭で説明をかぶせていくというやり方もありでしょう。

ポイント4:すべてを説明しようとしない

5分や10分など、短い時間制限のプレゼン大会で良く発生するトラブルが、時間オーバーによる尻切れトンボや、短時間にすべてを説明しようとすることで詰め込みすぎでポイントが不明になるプレゼンです。

プレゼン大会のようなイベントでは、次から次に様々なサービスがプレゼンをしますから、実は全員の聴衆が冒頭から最後まですべてを聞き逃さないようにしっかり聞いているなんていうことはありえません。

細かいポイントを次から次に説明したところで、聴衆には一つも印象に残っておらず、なんだか難しいプレゼンだったという印象になるのが関の山です。

伝えたいポイントを理想的には一つ、多くても三つぐらいにしぼりましょう。プレゼンを聞いた人がワンフレーズだけでも覚えてくれるように、徹底的にそのポイントについてのこだわりをアピールすることに集中しましょう。

プレゼン後の名刺交換であなたの顔を覚えてなかった人が、名刺を見て「あ、○○のサービスですよね。」とそのフレーズを口にしてくれれば大成功です。

ポイント5:聴衆を味方につける

プレゼン大会ということで、普段の投資家向けプレゼンや記者発表会と少し意識を変えた方が良いのではないかなと、個人的に感じているのがこのポイント。
通常の投資家向けプレゼンや記者発表会では、自分たちのサービスの強みや特徴をアピールするために必要以上に強気にプレゼンをする必要があると思います。話を聞く側もプロで、プレゼンを聞くこと自体が仕事ですから、特徴や強みを明確に伝えるのは非常に重要です。

ただ、プレゼン大会のようなユーザー向けのイベント、特に日本のイベントでは、あまりに自分たちの成功や強みばかりをアピールしすぎると意外に聴衆が引いてしまったり、厳しい目で論理的な抜け穴を指摘されることが散見されます。

プレゼン大会のような見込ユーザーが多く参加するイベントでは、自分たちの強みをアピールするだけでなく、弱みや悩みをさらけだした方が聴衆が応援してくれるようになるケースが多々あります。

当然、競合相手に塩を送るようなプレゼンはする必要はありませんが、あえて聴衆に悩みを相談したり、お願いをしてみたりして、聴衆を味方につけられるように努力してみることをお勧めします。

ということで、5つのポイントをご紹介してみました。もちろん実際のプレゼンは、人の性格や雰囲気、サービスの特徴によって相当あるべき姿というのは違うと思いますので、いろんな人のプレゼンを参考にしてみるのも大事です。

最近は動画でプレゼンの様子が公開されているイベントも多いですから、是非いろいろと参考にしてみましょう。昨年のWISH2011に登壇した人たちの動画も下記にアップされています。

【WISH2011+】第2部プレゼンテーション – YouTube

例えば、大賞を受賞されたZaimさんのプレゼンテーションもこんな感じでみることができます。

ちなみに、プレゼン大会でプレゼンターの方々が意識しすぎかなと思うのが、プレゼン大会での表彰。もちろん、表彰されないよりは表彰されるにこしたことはないのですが、スタートアップの世界というのはオリンピックのように同じ競技で競争しているわけでもなく、勝者が一人しか生まれないわけではありません。

賞が取れて、プレゼンの機会以上にアピールできるのに越したことはありませんが、実はプレゼン大会に興味をもっているようなアンテナの高い人たちに10分程度とはいえ、しっかり話を聞いてもらえるチャンスをもらえることこそが、プレゼン大会でプレゼンする価値ではないかと思っています。

受賞の有無で一喜一憂するのではなく、プレゼンを通じて、一人でもファンを増やすことができれば、そのプレゼンは十分成功。

そんな心意気で是非プレゼンの機会にどんどんチャレンジしてみて下さい。

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