アメリカ企業によるラジオストリーミングアプリ「TuneIn」が、中国政府から検閲の申し出を受け、検閲作業を自ら行うことを受け入れたようだ。中国の孤立主義は異様な新局面へと向かっている。TuneInのモバイルアプリユーザは、もはや他国のラジオ放送をほとんど聴くことが出来ない状態になっている―アメリカのNPR、イギリスのBBCなどのラジオ放送は、まだ中国政府によるGreat Firewallを受けていないのだが。
TuneInの代表はTech In Asiaにこのように語った。:
「私たちの提供するサービスが中国政府による規制に沿うよう、中国でのサービス提供を控えるつもりだ」。
事のいきさつを解明するために申し込んだ取材に対して、会社側からは何の回答もなかった。もしTuneInから新たな発表があればお伝えしたいと思う。
自主規制とはこんな感じだ。例えば、 BBC Radio 4を聞こうと思っても、中国国内にいる場合は「お選びのステーションは利用できません」というメッセージが表示され、似たような他のラジオ局に飛ばされてしまう。(写真上)だからBBC Radio 4を聞きたいと思っても、中国政府が承認したVoice of the Straits (VOS)ラジオチャンネルに飛ばされてしまう。そして、中国と台湾に関するニュースでは、政府の承認を受けたもののみ聞くことができる。中国ネット監視社会の勝利と言うわけだ。
他にも、アメリカの公共放送を含む多くのラジオ局がTuneInによって自主規制の対象となっている。実際には、TuneInの新しい規制はリダイレクトされることはほとんどなく、多くの場合は「ステーションは利用できません」とメッセージが表示されるだけだ。
アプリ内で現在選局出来るのは、国営のChina Radio International (CRI)と、ランダムに選ばれた中国語のローカルラジオ局のものだけである。奇妙なことだが、多くのローカルラジオ局でさえもはや聞くことができない。 例えば、英語放送のShanghai Love Radioは当然のこととしても、中国語のShanghai FM 101.7などだ。これは意味不明で何の理にも適っていない。すべてのローカル局は、既に政府の厳しいメディア規制を遵守しているため本質的には議論にならないはずなのだが。
TuneInのキャッチフレーズは、「世界を聞け」である。だが、それも今となっては虚しく聞こえるだけだ。中国政府のあからさまな要求に対して平身低頭して従ってしまい、自身が開発したアプリに対して制限を設けてしまった。個々のウェブサイトやストリーミングサービス、インターネットラジオやポッドキャストは、アメリカやヨーロッパのラジオサービスを中国でも問題なく提供しているというのに。しかし、それも今のうちだけかもしれない。
【via Tech in Asia】 @TechinAsia
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