ファッションレーベルはなぜ急激に成長し、瞬く間に事業をたたんでしまうのか

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【翻訳 by Conyac】 【原文】

急速に成長し、早死にする?

ファッションブランドは常に流行に乗らなければならないのか、とTradeGeckoの共同創設者であるCarl Thompsom氏は問う。以前にファッションブランドのオーナーを勤め、現在デジタル起業家として活動する彼は、世界中の小規模ファッションブランドを100日間で救うミッションを掲げた。

5年前、私はCrowded Elevatorというファンションブランドをニュージーランドに設立した。最初はブティックTシャツで事業を始めたが、一年後にはニュージーランドとオーストラリア全土の50以上もの小売店に卸売りをするまでになった。世界が私たちを待っているように感じた。しかし、それは長くは続かなかった。

卸売り業はそんなに簡単なビジネスではない。各セクションの売り上げ周期を管理するために長時間を費やし、在庫、注文、勘定、小売、製造の管理をしなければならない。またエラーが発生した時の仕事量には凄まじいものがある。そんな膨大な仕事量を処理するシステムがないと情熱を持ち続けることもできず、最終的にはビジネスが駄目になる。私の場合はそうだった。

Crowded Elevatorに失敗した後、なぜ成功できなかったのか把握しようと心に決めた。私は過去数ヶ月間、世界中の中小ファッション卸売り業者や小売業者に200件あまりの電話で問い合わせをすると面白い事がわかったきた。

ロサンゼルス発の肌着ブランドBR4SSのTravis Siflinger氏は、

「販売、製造、物流、そして借金を回収する能力があれば、収益はもたらされる。人が好むかっこいいモノをつくっただけでは利益はあがらない」

と語る。

「お店は支払のことは考えないから、うるさく音を立てるドアのように気付いてもらえるまで、しつこく言わなければならない。最終的にはキャッシュフローが鍵になる」。

と、シドニーのブランドDead Castle Projectの創設者 Sam Moore氏は言う。

彼だけではない。この業界に従事する数多くのクリエーターが、ファッションブランドを立ち上げることは魅力的なビジネスだと言う。自由に創造することができ、あらゆる人の心を掴むことができるのだから。でも、いったん成功すると、それは諸刃の剣となる。ファッションブランドを実際に運営するために必要な管理業務に追われ創造への情熱がなくなってしまうのだ。

ニュージーランドのオークランドでTexas Radioという小売店を長く経営するオーナーのRick Buissink氏は、利益の浮き沈みを経験している。彼も支払いの遅れは普通だと認めている。

「材料や人件費を先払いしなければならなかった気の毒なデザイナーは、小売店に在庫を預け、苦戦している小売店による90日以内の支払いを願っている。悪循環だ」。

ファッションヒーローになることを願う人達は、友達のためにTシャツをつくることをきっかけに事業を始め、数百枚売れるとすぐに事業拡大の計画を立てる。事業拡大とは、新たなマーケットや販売チャネルを切り開くということだ。小売店が素早くトレンドの波をつかむように、 若いヒーローは新しいスキルを素早く習得しなければならない。そして、そのブランドは突然大きな成長過程の痛みを抱える。

これまで趣味としてやっていたことを本物のビジネスとして成立させなければならない。大きな決断に迫られる。例えば、ニッチ市場に直接販売するのか、もしくは卸業者になるのかというような決断だ。だが、卸業で重要なのは創造性ではなく物流と数字で、これらはファッションデザイナーが事業を始める理由ではない。

ビジネスともなれば借金の回収は言うまでもなく、 在庫、注文、製造、受注から入金管理、そして返品などの管理業務をしなければならず、小さな運営チームとってはこの大量の管理業務が瞬く間に悪夢となってしまうこともある。

エクセルでできることは限られている。これらの業務をこなす標準的なソフトウェアはほとんどないし、良いソフトウェアは更に少ない。

ビジネス作家のMichael E. Gerber氏は、自身の「The E-Myth revisited (日本語翻訳版:はじめの一歩を踏み出そうー成功する人たちの起業術)」の中で、起業家を躊躇させる神話について次のように書いている。

「致命的な思い込みとは:事業の中心となる専門的な能力があれば、事業を経営する能力は十分備わっている」。

私達が電話で話を聞いた中で興味深いと思ったのは、このパターンがいかに本当であるかのように見え、またそうなる必要はないという点だ。ほとんどのファッ ションブランドが抱える成長を阻む問題は、あらゆるニッチな業界で発生しているがそれこそが解決策でもあるようだ。

ハイテク商品から、個人嗜好品、ワインなどの専門的な食べ物や飲み物にいたるまで、素晴らしいアイデアをビジネスにしようと思うクリエイティブな人達は皆、同じ管理業務の問題に直面する。

「Brainfruit – Turning Creativity Into Cash from East to West」の共著者Hugh Mason氏は次のように書いている。

「最低限の資本と人材で小さいビジネスを運営することは、初めてのファッションデザイナーに大きな責任を負わせることになる。事業の各分野を入念に計画し実行しなければならない。時間の90%は管理業務に費やされ、そのほとんどはエラー、返品、品質、製造、人材問題の処理で、その最たるものは骨の折れる借金の回収だ。

急成長するビジネスにとってお金は血液のようなものだ。その流れが滞ると、心臓発作と同じようなことがビジネスに生じることにな る。小さなファッションブランドのほとんどが20%の利益しか上げていない時に、ミスや返品が発生したり、不満を抱える顧客から弁護士を通して手紙が きたりすれば、そのわずかな利益もなくなってしまう」。

ニュージーランドの有名ファッションブランドWORLDからも同じような話を聞いた。

「ファッションブランドはどんな経済環境においても常に苦戦を強いられる。WORLDは運良くそれなりの利益の分配を得ており、WORLDのブランド哲学をしっかり信じ懸命に働いてきたおかげで、当社を23年間維持することができている」。

と、WORLDメンズウェア・デザイナーのBenny Castlesは語っている。

小売店の立場から見ると不満もある。自分のブティックをつくりたいという人は多く、通常そういう人は数社の 卸業社もしくはよく知っている卸業者から在庫を調達することから始める。マーケットを理解しトレンドを予測するのは難しい。何がよく売れるかを予測しなければならない。

お互いが上手く補完しあえるブランドのエコシステムを構築し、他のショップとの差別化をはからなければならない。卸業者と良い関係を維持することも重要で、問題のほとんどは勘定の混乱によって生じる。誰が何を所有しているかをはっきりさせることが重要だ。

これらファッション業界の人たちと話をしたことは、セラピーのようなものだった。自分の大好きなことをしようとしている新人起業家として直面している問題は他の多くの人も直面していると知り、心強く感じた。多くのインスピレーションも受けた。それどころか自分の使命も感じたのだ。それは、この業界からクリエイティブな人を遠ざけている「サプライチェーンの問題」を正しい状態に戻すことだ。

これが、私と私のビジネスパートナーCemeron PriestがTradeGeckoを始め、ここシンガポールで「JFDI-Innov8 2012 bootcamp」に参加した理由だ。これは100日間のデジタルビジネス「アクセラレーター」で、参加したことで私達が考えたファッション関連中小企業向けの新しい仕入れ在庫管理システムのアイデアを実用的な試作モデルにまで築くことができた。

私達は、販売サイクルを自動化することでファッションブランドに創造する自由を取り戻す支援をしたい。もう注文書をつくる必要もなければ、エクセルに時間をとられることもないし、勘定とにらめっこばかりする必要もない。たった1つの集中管理システムで、卸売業の一番肝心な業務を管理し、卸業と小売業との間に透明性を築くことができる。

私達は、大企業がサプライチェーンを管理するために持っているのと同じくらいのパワーをファッションブランドにも持ってもらい、キャッシュフローを向上し、創造への情熱や事業そのものをダメにすることの多い成長過程の痛みを取っ払いたい。

これらすべてを100日間でやるのは非常にしんどいが、とても目的意識のあるものだ。これまでに話した業界の人達から素晴らしい反応も得ているが、このビジ ネスをきちんと運営するにはアパレル卸業者や小売店との取組みがまだ必要だ。もし、体験談やアドバイスを聞かせて下さる方がいたら、ぜひ連絡をしてほしい。

【viaSGEntrepreneurs】 @sgentrepreneurs

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