韓国スタートアップの世界展開に情熱を燃やす、キム・チャンハ氏

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【原文】

NHNの最年少チーム長、ボン・エンジェルスのEIR、開発者キャンプで出会った大学生開発者と共同創業、国内最速のモバイルIMサービスTicToc(틱톡)をリリース、マーケティング費用0ウォンにもかかわらずリリース5ヶ月で1,200万件のダウンロード達成、サービスリ​​リース8ヶ月後のExit成功、世界進出に自信と情熱を持つ…

2012年最も注目されているITベンチャーのCEO、キム・チャンハ(김창하)代表の簡単なプロフィールだ。韓国のサービスも今、Facebook や Twitterのように世界市場で成功すべきでないかと言うキム・チャンハ代表。現在空席の、ワールドワイドのモバイルメッセンジャーの王座をTicTocが射止めることができるだろうか。いや、キム・チャンハ代表は、韓国が輩出する第2のマーク・ザッカーバーグになれるだろうか?

なぜ何度も、海外のサービスである Facebook や Twitter を使えというのだろう?

2010年12月31日、イ・ミョンバク(이명박)大統領は青瓦台(チョンヘデ=大統領府)ニューメディア秘書官室を訪ね、Facebook、Twitter、me2day(韓国のSNS)に新年の挨拶を残し、45分間、国民との対話を交わした。イ・ミョンバク大統領は「これまで大統領府のFacebookページに残してくれたコメントのが多くが参考になった。皆さんの声を直接聞くことができる空間が用意されてうれしい。」と述べた(全文)。実際、大統領府の公式Facebookのページは、2010年11月17日に開設されており、この時期、大統領府に加えて、政財界人、企業などがFacebook公式ページを開設し、社員や一般市民にSNSの活用を推奨していた。

このような社会の雰囲気に疑問を抱いていた人がいる。を務めていた、マッドスマートのキム・チャンハ(当時のNHNの検索チーム長)だ。FacebookもTwitterも、海外のサービスなのに、なぜ社会は海外サービスの利用を推奨するんだろう? 彼のこのような問題意識は、後日マッドスマートの代表的なサービスとなったTicTocを韓国だけではなく、世界市場で通じるサービスに成長させるという戦略のきっかけとなった。

モバイル・メッセンジャー TicToc

さまざまなメディアを通じて知られているように、NHNの検索チーム長を務めていたキム・チャンハは、新たな挑戦への刺激を感じてNHNを退社、ボン・エンジェルスの予備起業家育成過程であるEIR(Entrepreneur in Residence)になった。6ヶ月間にわたり創業テーマを考えていた彼は、彼はボンエンジェルスの主催するMAD (Mobile Application Development) Campを進行することになる。この当時、彼がアプリを作成しようとしたのは、当時リリースされていた国内のモバイルメッセンジャーよりも、優れたアプリを作成できそうだという自信からだった。プロトタイプを作成した結果、既存のサービスを超えたアプリを作れそうな自信を得、そのキャンプで出会った2人の大学生の開発者と意気投合、MAD Campの名前を取ったMAD Smartを創業した。Smartは、スマートフォンに特化するという意味から来ており、会社のアイデンティティを明確にしている。数ヶ月の開発の末、2011年8月にリリースされたTicTocは、動作スピードの速さから話題になり、リリースから5ヶ月で​に累積ダウンロード数1,600万件を達成した。少なくとも全国民の5人に1人はTicTocをダウンロードして使用しているということだ。

世界進出のパートナー、SK Planetに出会う

しかし、同業で先行している企業とマーケティングの争いの結果、国内市場でTicTocのシェアはユーザ確保の速度を鈍化させていった。キム・チャンハは、狭い韓国市場の優勝席を展望するだけではなく、すぐに、グローバルに進出する必要があると判断した。また、マッドスマートの規模を成長させるべく、何度も参じて獲得した有能な開発者たちが、疲れないように物質的な補償をしたかった。これまでのところ、売上のないTicTocサービスの世界進出とマッドスマートの従業員への金銭的補償のためには、2段階の投資とノウハウを伝授してくれるパートナーの確保が急務だった。もちろん、急速に増加していくサーバ群の運営費確保のためにも、投資を誘致することは不可欠だった。

当時、キム・チャンハが必要とした投資額は50億〜70億ウォンくらいの金額だった。問題は、TicTocがとても魅力的なアプリだということだった。10社くらいの投資家と接触したが、皆が関心を見せ、すべての投資家が継続的な状況の報告と検証を望んだ。特にITベンチャーの場合、多くの投資家が最初に検証したいのが、代表個人に対するものである。さらに、TicTocのような売上がないプラットフォーム・ビジネスは、結果が0/100のいずれかである。投資家たちも早々に決定できるほど容易ではなく、韓国の投資市場規模で50〜70億の投資をするには、2〜3つのVCが共同出資しないと難しいものだった。キム・チャンハは、ほぼ3ヶ月を投資家たちに会ってIRするのに時間を費やし、本業に集中するのが難しくなるほどだった。結局2段階の投資誘致は、SK Planetによるマッドスマート株式100%買収という結果となった。オープン・プラットフォームの専門企業を目指すSK Planetとして、スマートフォンの最も強力なプラットフォームとなるモバイルIMサービスは、ポートフォリオに必須の事業だったのかもしれない。SK Planetは、マッドスマートの株式を100%買収したが、少数のスタッフをマッドスマートに派遣しただけで、マッドスマートのベンチャー精神を最大限に生かすことができるよう世界進出のパートナーの役割を果たしている。

韓国IT産業の世界競争力を懸念する

NHN在職時代、キム・チャンハの視界は、常にチーム内にとどまっていた。チームが仕事をうまくできるよう、うまく運営して成果を出さなければならないというレベルの悩みだった。しかし、マッドスマートの設立以来、彼の視界は、会社を運営するレベルになった。TicTocの世界進出を控えた今、彼の視野は、国を考える次元に拡張された。なぜ韓国のITは、世界進出できないのか? なぜアメリカのサービスだけに熱狂するのか? これに対する、キム・チャンハの最初の答えは驚くべきことに 「反省」である。まずは韓国のITが、世界的なレベルでクオリティにまで高まる必要があるということ。二番目に、韓国の国民が、より韓国IT産業やサービスを愛用してほしいと願った。キム・チャンハは大々的なマーケティングではなく、反応を見ながらゆっくりとTicTocのユーザ層を厚くしていく予定で、スマートフォンベースのソーシャルプラットフォームにTicTocが定着するだろうと述べた。キム・チャンハは「すべてのベンチャーの最後のターゲット市場は、米国だと思う。ビジョンは、最終的に米国市場で勝利することだが、困難な目標ながら面白いと思う」と言って、余裕のある笑みを浮かべた。

CC BY-NC-ND 2.0: via Flickr by WorldSkills

若いうちに、大きな成功を収めるというのは、どんな気分なのだろう? —— キム・チャンハに会う前、私が最も気になったことの一つは、早々にExitをした若い創業者の持つ気持ちについてだった。多少浮かれていて、世界が自分のものであるように、気ままになってはいないかという気もした。実際にインタビューが行われたのは、マッドスマートがSK Planetに売却されて2ヶ月が過ぎたころで、十分に興奮していてもよい時期だった。しかし、私は会ったキム・チャンハはかなり地味で控えめな姿だった(実際、彼は開発を 少しできるレベルで、すべての実績はマッドスマートの優れたスタッフの実力のおかげだと何度も強調した)。さらに、韓国IT産業の世界進出への情熱は、今まで会ったそのどのようなベンチャー関係者よりも強かった。キム・チャンハは、現在のスマートフォンの普及と、政府支援の増大などでスタートアップの初期投資は活発化したが、まだITベンチャーのExit事例はごく少数で、アメリカのように韓国企業にもベンチャーを買収する文化が生まれなければ、ベンチャー・エコシステムに成長は無い​​だろうと述べた。Exitメソッドが無いまま投資だけ活発になると、新たな「バブル崩壊」を招く可能性があるからだ。

キム・チャンハのどこにも、成功への陶酔しきった若い起業家の姿はなかった。むしろ、そこにあったのは、第2ラウンドとなる創業のために、運動靴のひもを締め直しているボクサーの姿だった。今、しっかりとしたマネジメントをしてくれる監督に会い、世界選手権への挑戦を控え、最後の集中トレーニングに没頭する、彗星のごとく登場した新人だった。まだ世界に通用するモバイルソーシャルプラットフォームは形成されていない。まもなく、キム・チャンハはTicTocを持って世界選手権に挑戦する。キム・チャンハは、韓国初のITサクセスストーリーを作り上げることができるだろうか? 私はキム・チャンハとの出会いを通じて、韓国のITサービスが、全世界の人々に普遍的なデイリーサービスを提供する日が近いと感じた。全世界の人が、彼のサ​​ービスで Ticと押すと、Toc とコミュニケーションできる日を待ちこがれている。

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

 

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