伝統を知ることからイノベーションが生み出されていく−−【明星和楽・京都レポート】

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2011年11月に福岡ではじめて開催されたテクノロジーとクリエイティブの祭典「明星和楽」今年は福岡に9月で開催されるが、先日の7月14日に、京都でも「明星和楽・京都」が開催された。

テーマは「触れる」。新しいものや、これまでの伝統的なものに触れ、テクノロジーの歴史やクリエイティブな表現に触れると同時に、それによる新しい発想や創発を生み出していくことが目的だ。

もともと、アメリカのSXSWをヒントに開催された明星和楽。いまでは、日本独特の文化やカルチャーをうけ、様々なスピンアウトを起こし始めている。まさに、日本独特の、テクノロジーとクリエイティブの融合とも言える。

そうしたなか、今回京都で明星和楽が開催されたことは、また1つの大きな出来事とも言えるだろう。1000年以上もの歴史をもつ都市である京都。明星和楽の会場にもなった「きんせ旅館」は、250年以上もある伝統的な木造建築旅館だ。「伝統」という言葉は、ときに古く感じられるようにも捉えられる。しかし、京都という土壌は、古いものを活かし、そこから新しいものを生み出そう、という文化が長く根付いている。いわゆる、「Scrap & Build」ではなく、「活かす」というスタンスであろう。

歴史を知り、そこから新しいものの生み出す。そんな視点が、今回の明星和楽・京都では感じられた。

コーヒーミーティングが生み出す人との出会い

人との出会いは、人生において切ってもきれないものだ。だからこそ、いつも人と出会うときにはそこに新しい刺激が生まれる。コーヒーミーティングは、そうした、これまで人がおこなってきた当たり前の行為に、さらに楽しみを追加するサービスでもある。

共通の趣味や思考などのタグをもとに、人との出会いを加速させる。かつては、同じ土地や同じ地域に住んでいる人同士でしか出会えなかった。しかし、テクノロジーの進化により、人との出会いは加速度的に増してきた。もちろん、オンラインでの出会いもある。しかし、人と直接話すことは、オンラインで会話するよりも何倍も情報量が多い。どんなに時代が変わってきても、人は直接会って話すことはやめないだろう。

だからこそ、ちょっとした時間の合間、また、地方に行った時にそこで同じ趣味や趣向をもつ人と出会えるきっかけがあるということは、より人生を楽しく過ごさせてくれる。

サービスリリースからもうすぐ半年。コーヒーミーティングのマッチング数ももうすぐ5000に到達する。ユーザ数も2万人目前だ。株式会社レレレとしてスタートした山本大策氏の今後にも注目していきたい。

日本の伝統に触れ、本物を知るということ

本格的な舞妓さんへの変身をさせてくれるサービスをおこなっている、京都・東山にある「花の絵姿」の青木みのり氏。舞妓さんと登場し、実際に話をしてもらった。お座敷遊びとも呼ばれる舞妓や藝妓さんの文化は、いまなお京都に根付いている。

そうした、江戸時代から続く文化を、体験できるサービスをおこなっているのが、「花の絵姿」だ。しだいに、和装すら着る機会が減少してきたなかで、本物の舞妓さんと同じ衣装や着物を着る機会というのは、かつての趣を知るいい機会でもあるだろう。もちろん、衣装として使う着物も、100年以上も前に作られたものや、高額な着物も用意している。

また、そうした古くから伝わる歴史の本物に触れるということは、それによってまた新しい気づきもえることができる。着物として使われている素材1つ1つも、春には春の着物の楽しみ方や素材、冬には冬の楽しみ方や素材があるということを青木氏は語った。そして、着物は着にくいというイメージを払拭し、着物を着ることによって、着た人を引き立てるものこそ、本来の着物の姿であるとも語った。

着物文化の古さは、古いものばかりがいいものではないが、その長く伝わっているものには日本人の知恵や京都の風土や気候にあった知恵が含まれている。そうした先人の考えなどを知ることは、いまの時代のなにかのヒントにもなるかもしれない。

古いものと新しいものを融合させ、将来に対して残していくことを大切にしていく

トークのゲストとして、会場にもなった「きんせ旅館」のオーナー安達浩二郎氏と、旅館を改装した一級建築士の山根健太郎氏のパネルセッションも、古いものを活かし、そしていまにあったデザインへの昇華した例でもあるだろう。

「きんせ旅館」オーナーの安達氏は、アメリカに留学後、実家が継承してきたこの旅館を改装することを決意した。その後、京都の有名なカフェや建築を手がけている山根健太郎氏とともに、リノベーションを図った。

250年という歴史をもつこの旅館。しかし、250年間なにも手が加えられていなかったわけではない。50年や100年といったときにも、いたるところにリノベーションがおこなわれているのを見て取れる。つまり、単に古いものをそのまま現存させているわけではないのだ。

200年以上も前の職人が手がけた建築や素材は、もはや今の技術や材料では、それと同じものを作ることはできない。そういった意味で、どんなにいまのテクノロジーが進化しても、かつてのものをそのまま復元することは不可能だと言う。だからこそ、古いものをそのままではなく、今の技術、いまできるテクノロジーによって、古いものと現在のものを融合させ、年月という積み重ねが生んだ良さを失わせるのではなく、現代に、そして将来につなげていきたい、という山村氏の思いがこめられている。

日本は、古いものを古いまま使う流れが多いが、きんせ旅館は新しいものも混ざっている。いかに建築としての時間が流れてきているものを将来につなげていくか。たしかに、ものは加えるが昔のものではなく今できるものを加えていく。そしてそれらを50年後の人に対して伝えていく。未来の人が見ても、リノベーションしていきたいと考える気持ちをつくっていくことが大事だと思います。

250年前からいままで手をいれられて存在している。ということは、250年後にも使われている可能性がある。そういう人たちが、いまのぼくらのリノベーションに対して敬意をもってもらえるかを考える。だからこそ、過去を捨てることはできない。

過去をしっかりと見据え、そして今できることの中から、将来に対して意味のある活動をしていく、という思いが込められており、テクノロジーの進化と伝統と革新とを感じる山村氏の思いがある。古いものをただ古いままにするのではなく、そこに人の手が加わることで、そこに新しいイノベーションが生まれてくるのだろう。

普段は、きんせ旅館はおいしいコーヒーを安達氏が提供してくれる。落ち着いた雰囲気とゆったりとした時間が流れるきんせ旅館で、歴史を感じてみるのもいいかもしれない。また、宿泊も、今年からスタートした。1日一組で宿泊が可能になる。詳しくは「きんせ旅館」まで。

日本の伝統のテクノロジーをマッシュアップしていく

京都が生んだ企業、そして日本が誇るテクノロジー産業でありエンターテイメントの分野を牽引した、任天堂社のファミコン。参加した多くの人たちにとっても、懐かしさを感じるものだったであろう。

そのファミコンを、音楽とマッシュアップし、新しい楽しみ方を提供しているのがサカモト教授だ。

7月にフランスで開催されたアニメエキスポに出演するなど、ファミコンという20年以上のも筺体を、いまの時代に復興させ、懐かしさと新しさを融合させたパフォーマンスは、まさにかつてのテクノロジーをリデザインしたものだろう。任天堂が生んだ天才ゲームメーカーの横井軍平氏の言葉を借りれば、「枯れた技術の水平思考」だ。

明星和楽・京都当日も、最後のパフォーマンスということもあり、参加した人たちの熱狂さは、大きな反響を呼んだ。

「テクノロジー」という言葉は、ときに常に新しいもの、新しい技術、新しいサービスを連想させてします。しかしそうではなく、かつての技術を応用し、そしていまの時代でも楽しむことができるパフォーマンスを生み出すサカモト教授の演奏は、日本を越え、フランスなどグローバルでの楽しみを生み出している。ぜひ、サカモト教授のパフォーマンスを一度生で体験してもらい、その楽しさを感じてもらいたい。以下の動画からも、そのすばらしさの一部を感じることができるかもしれない。

古いものにただ触れるだけではなく、そこに人の手が加わるからこそ、そこに新しさやイノベーションが生まれ、人に感動や刺激を生み出す。

そうした様々な気づきや刺激などを得られた「明星和楽・京都」。こうした、日本独自の文化をしっかりと見つめなおし、そしていまへと継承しつつ、そこから新しいものを生み出す創造性を高めていく。そんな文化が日本でももっと活性化していく1つのきっかけとして、明星和楽が活きていくだろう。

次回、9月に福岡で開催される明星和楽は、さらなる期待と感動と興奮が待っているに違いない。新しい情報が入り次第、アップデートしていくので、期待してもらいたい。

また、今回の「明星和楽・京都」に関わってくれた関係者一同やゲストの方々、そして参加して一緒に盛り上げてくださった参加者のみなさん、おつかれさまでした。

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