韓国Oh My Doctorが目指す、医療情報のバーティカル検索サービス

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原文

今年3月、スタートアップ界に興味深いことが起こった。偶然にも、2つのスタートアップが、同じタイミングで、同じビジネスモデルでサービスをローンチすることが明らかになったのだその主人公となる、GOODDOC と Oh My Doctor は、アメリカで医療情報検索サービスの成功事例を持つ zocdoc のモデルを韓国に導入すると発表した。

2つのスタートアップが、さらに関心を集めたのは二人の創業者共に「Ticket Monster」(参考記事)と関連があったからだ。すでに何度もマスコミで報じられているように、Oh My Doctor のギム・ジヌク(김진욱)代表は、Ticket Monster 共同創業者キム・ドンヒョン(김동현)監督の実兄であり、GOODDOC のイム・ジンソク(임진석)代表は、Ticket Monster のシン・ヒョンソン(신현성)代表が参加した Fast Track Asia で、一般公募から選ばれたCEOだ。Ticket Monster は、既に海外で実績のあるソーシャルコマースのビジネスモデルを韓国で成功させているため、Oh My Doctor と GOODDOC の2人の創業者への関心は並ならないものがある。

両スタートアップ共に5月にサービスをローンチするとしていたが、5月末になって、GOODDOC と異なり、Oh My Doctor はサービス開始はを延期するというニュースを送ってきた。

Oh My Doctor のギム・ジヌク(김진욱)代表と再会したのは、6月の beLAUNCH2012 のスタートアップ・バトルでのことだった。激しい予選を突破してトップ20に選ばれた彼は、Oh My Doctor が医療関連のサービスであることを知らしめるべく、白衣を来てステージに登場した。(関連記事

Oh My Doctor のサービスは、当初メディアを通じて明らかにされた zocdoc のモデルとはかなり違っていた。なぜアメリカで成功が証明されたzocdocのモデルを捨てたのか、どんなピボットがあったのかを尋ねるべく、beSUCCESSがギム・ジヌク(김진욱)代表に会った。

どのようなきっかけで、Oh My Doctor を創業したのか?

Ticket Monster の創業メンバーである弟と同じく、私にも創業の熱意があった。弟は、実際に創業をして大きく成功させたが、私はさまざまな選択を行っていく中で、現実的な道を優先していたようだ。幼い頃から起業をしたかったが、創業の決心をせず、創業の実行もしなかったわけだ。一方、KAIST(訳注:韓国高度科学技術院、韓国におけるMITを目指している)を卒業し、歯学専門大学院まで進学して課程を終えた。すべて現実的な選択だった。最後の過程は病院実習だったが、実際の病院で患者を治療しながらやりがいも感じたものの、創業への熱意がより一層大きくなっていくのを感じた。思ったより長い間、創業という夢を心の中に秘めたまま過ごしていたことが、最近わかった。

医師の国家試験を受ける数日間、弟の家に泊まらせてもらったことがある。弟は大学の同期と一緒に住んでおり、弟を含めた2人の Ticket Monster 創業者と、他にも自分たちのスタートアップを準備している2人の若い創業者など、4人で一緒に暮らしている。現在は私も一緒に住んでいるから、5人の創業者が一緒に住んでいるわけだ。初めてその家に来た時は、不思議な雰囲気だったが面白い場所だと思った。テレビもなく、4人の創業者が住んでいる家では、一日に数十件の創業アイデアが往来し、日が暮れると起業家精神とビジネスの話をしていた。

医療情報を提供するサービスのzocdocモデルを発見することになったのもこの時だった。医療界の状況を知っている自分こそ、このアイデアを成功させられる適任者と考えた。創業の決意が固まった頃、医師の国家試験の結果が発表された。合格だった。しかし、今回は現実的な選択をとらず、夢を追って創業を選ぶことにした。

予定されていたサービスローンチが遅れたのは、なぜか?

スタートアップバトルのとき明らかにしたように、経営戦略が変わっからだ。改変したサービスは、7月中旬にオープン予定だ。Zocdocのモデルはアメリカで成功しているが、そのまま韓国でも成功できるものではないと思う。アメリカの医療の状況と韓国の状況は明らかに異なっている。法的な部分、制度的な部分はもちろん、病院で提供される手術にも違いがある。したがって、zocdocのように、医療分野のすべてカバーすることは現実的ではないと判断した。

多くの人が医療サービスの情報を検索するだろうが、胃のむかつきが起きたり、風邪にかかったりしても、あえて遠くの良い医者を探そうとはしないだろう。普通に近くの病院を探す場合が多い。病院の詳細な情報が必要となることもなく、病院や医師側でも3分で診療が終わって、診療費に3千ウォン(約210円)しか受けとれない患者を誘致するために、新たな広報はしないだろう。

このような韓国の医療事情を反映し、Oh My Doctor が注力するのは、皮膚・美容・整形の医療分野になる。インプラントやレーシックも対象となる。

新たに改変したサービスは、どのようなものか?

扱う情報は変わらない。Zocdocから提供される情報では、診療科、地域、病院、医師のプロフィールを選択することで、医療関係者の情報にアクセスするのは容易だが、実際に自分が受ける手術についての情報は見つけることができない。Zocdocのモデルが医師や病院を見つけるためのサービスであれば、Oh My Doctor は徹底的に手術に関する情報を共有するためのサービスだ。

医療界全体をカバーすることをあきらめ、一部集中にすると、市場規模が小さくならないか?

韓国の医療を保険と非保険で区切った時、非保険の市場の方が一層大きい。韓国の美容関連の病院の広告市場がどれだけ大きいかは、地下鉄に乗って広告を見た人なら皆知っている。

整形、美容に関する手術のレビューは、すでにオンライン・コミュニティで共有されていないか?

確かにそうだ。韓国では、すでにこのような情報がポータルサイトのカフェ(掲示板)を通じて共有されている。しかし、カフェは人々のコミュニティを形成できるように作られた空間で、このような情報(医療関係の情報)を整理して扱うのに特化した空間ではない。カフェには多くの情報が集まっているが、病院を直接検索したり、手術の具体的な情報を見つけることは容易ではない。いちいち記事を読まなければ内容を確認できず、検索して情報を入手するには、利用者の不便が大きい。また、多くの情報が病院によって提供されるため、率直なコメントを見つけるのは容易ではないという欠点もある。Oh My Doctor を通じて、これらの部分が改善できると思う。

収益モデルは、どのように計画しているか?

広告を載せて収入を得る必要があるが、体験者のレビューと病院の広告は、厳格に区別する計画だ。情報を提供するプラットフォームの真正性は、情報を扱う人の良心に依存している。Oh My Doctor の真正性が保てるかは、Oh My Doctor のチームが初心を忘れないでやっていけるかにかかっている。

今後の事業計画は?

人々が直接経験した手術に関する情報を集めることは、多くの点で意味のあることだと思う。まず、すぐにでも人々が必要とする情報であるため、利用者を即座に支援することができる。また、長期的にみると、手術に関する情報を一カ所に集めることで、一つの百科事典ともいえる情報システムを構築することができる。レビューが集まれば、それが手術の専門知識の結集にもなり得るだろう。

不治の病の情報も集めることができるだろう。需要は少ないかもしれないが、必ず共有されるべきで、不治の病と難病についての情報は、社会的にも有意義に活用ができると思う。現在は、目前のサービスローンチに集中しているが、長期的な視点から社会に意味のある医療情報を提供するサービスになるよう、医師としての力を注ぎたい。


バーティカル検索サービス

インターネットという情報の海から、特定の情報を探すために、すべてを歩き回るのは疲れることだ。その航海を助けてくれるポータルサイトがあるが、問題は、ポータルサイトが情報を偏って提供するということだ。お金をたくさん出した病院は紹介されるが、お金を出していない病院は表示されない。さらに、ポータルサイトで見つけることができる情報は、ほとんどの病院が提供した情報であるため、病院に都合のいい情報だけが見うけられる。このように資本が関与して人為的に操作された情報を、我々は「広告」と呼ぶ。

このように、提供される情報と必要とされる情報のアンマッチ(=情報の非対称性)と、ポータルサイトではカバーしきれないニッチがあるので、特定の情報のみを扱う特定の空間がある。「バーティカル検索サービス」こそがまさにそれだ。特定の情報に対して、それに合わせた適切な分類と動作が必要になる。バーティカル検索サービスを通じて、意図的に作られた情報から開放され、スピーディーな情報更新、専門分野へのアクセス、より詳細な情報の共有が可能になる。何よりも人為的に作られた情報の介入を防ぐことができ、情報の非対称性を解決し、より公正な市場を作り出し、社会的に非常に意義深い役割を果たすことができる。

しかし、このようなバーティカル検索サービスさえも、完全に情報の非対称性を解決できるわけではない。NAVER で 「おいしい店を検索」と検索ワードを入力すると、美味しい店を検索することができる、グルメ検索のプラットフォームが106件出てくる。しかし、それらは一様に広告プラットフォームの役割をするだけで、情報の共有サイトの役割は果たしていない。そのようなサイトは、店舗がお金を出せば「おいしいお店」と紹介する。店舗が倍のお金を出せば、一年中「おいしいお店」だと噂を立ててくれる。そんな告知を出して、メインページを賑わせている。

バーティカル検索サービスの、特定情報を扱う空間として真正性は、情報を扱う人のモラルに完全に依存する。

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

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