tabは「勝てるプロダクト」なのか?ーー頓智ドット/井口尊仁氏インタビュー(前半)

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頓智ドットがセカイカメラ以降、大きく舵を切ってリリースしたtab。滑り出しも好調で、6月の正式公開以降、iPhoneアプリ/iPadアプリランキングの上位に顔を出していた。TC50でデビューを飾った2008年9月から約4年、セカイカメラからtabに至るまでの道のりにはどのような流れがあったのか。頓智ドットCMOであり、創業者でもある井口尊仁氏に話を聞いた。(全二回/前半)

今日はよろしくお願いします。ところで突然なんですが、セカイカメラって3Gで動いていたんでしたっけ?

iPhone3Gで動いてましたね。多分この話は3日くらい続けられるんですけれど(笑。フォースクエアのファウンダーにも「クレイジー」って言われてました。当時、ユビキタスの清水さん(ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEO清水亮氏)も「井口は詐欺師だ!いかがわしいヤツなんだ!」とかいって彼はすごく怒ったんですよね。だってiPhone 3Gでセカイカメラの体験ができるといっても、コンパスもジャイロもないのに向いてる方向をちゃんと向けるわけない。物理的に無理。

ただ、iPhoneを振った方向を検出してざっくり方位合わせるとか傾きや速度で向いた方向インディケートできればいいんじゃないかと考えていたんです。なので、実は初期セカイカメラをiPhone 3Gで動かすためにユーザーがフリックで合わせるといった頓智の域を越えた方法をとってました。

銀座でセカイカメラ使ってて不審者に見間違われたりしました。

見間違わなくても不審者ですよ。

えっ…

さておき、今日はtabをテーマにお話するわけですが…既に記事ではいろいろ出てますよね。某媒体では何故か画像共有サービスになってました。

ブルックリンパーラーでだいぶお話したんですけれどね…

これって一言でいえばなんなんですか?

「永久に特集記事が読み終わらない理想のデジタルマガジン」というのはよく言ってますね。

ただ、雑誌って平面でページングがあってある程度企画されたものっていうイメージがあるでしょう?でもtabは常に動いてるし、パブリッシングっていいながらコミュニケーション要素もあるしダイナミックでライブな感じがあるし、それを込めようとすると雑誌っていう言葉が足を引っ張ってしまうんですよね。ただ、人間て分かりやすい言葉を求めようとするでしょ?

セカイカメラは「世界をタグづけする」ってワーディングでしたよね。

長年、(セカイカメラに対して)違和感があったキーワードが位置情報とかロケーションとかで、すごいしっくりこないんですよね。なんでかっていうと緯度軽度のある地点をポインティングするのは単なるマトリックスの情報でしかないじゃないですか。フォースクエアとかアクションとしてはチェックインていう「場所」なんですよね。ちゃんと人間の匂いするし。

位置情報ってIPアドレスを語るような感じなんですよね。生のものをそのまま出されてる感じがしてすごく嫌だなと思ってました。

でも位置にカテゴライズされますよね。セカイカメラって。

Crunchiesにノミネートされたの時、YammerとかDropboxとかEvernoteとか今をときめくそういう人たちの中に入って自分たちはロケーションソーシャルというカテゴリでそこに放り込まれたわけです。TechCrunch50の時も、ピッチがめちゃくちゃ受けて周りから握手攻め、「もうこれは取っちゃったな」って思ってどうやってパフォーマンスしようかとか、そのためのグッズも買ってきたんですが、なんにも取れなくてどんだけ悔しかったか(笑。

Crunchiesも日本から唯一呼ばれて結構面白いカテゴリに並んで三位に入ったんですよ。日本勢の投票がすごくおしてくれて。本当に悔しいことだらけ。でもこの悔しいのが原動力になってるんですよね。

ちょっと話をtabに戻して。tabのビデオってよく出来てると思うんですが、実際にこんな使い方するのかなって、一日銀座で使ってみたんです。で、最初に気がついたのが、なんでこれポートレート(iPad縦向き)にしか使えないんですか?(笑。

それには体験性も含めた色々な理由があるんですよ(笑。

あれだけセカイカメラの時に端末で苦労したわけじゃないですか。で、今回もまたiPad。これ持ってる人、スマホに比べれば明らかに少ないですよね。どうしてこれを端末に選んじゃったんです?

セカイカメラもiPhoneの売り上げには貢献したと思いますよ!でも結局「垂直」じゃなくて「水平モード」で皆さん使っていただいてました。でも(カメラをかざして)こうやって持つと落としちゃうんですよね(笑。

さておき、tabのおかげでタブレット、iPadがめちゃくちゃ売れる、そういうところまで持っていきたいんです。アプリケーション作る側としてデバイスの使い方そのものを再定義するっていうことが必要なんです。新しい体験価値観を自分たちが生み出す。そういう気合でやりたい。

でも、そもそもユーザー数とかボリュームを思うとをまずこれをメイン端末にするってリスクは相当高かったんじゃないんですか。

平野さん、頓智ドットってね、実は僕だけじゃなくて数字を読める人とか、パワポ使える人とか、エクセル使える人とかもいるんですよ。シミュレーションはバッチリしてます!。例えばニューヨークの地下鉄でiPadを使ってる人たちは普通に見つかるし、空港でも普通MacBookが出るところでiPadが出てきてそれが当たり前なってきている。iPadは普及しますよ。

ライブでダイナミックなデジタルメディアを作ろうとしてるのに、iPhoneではどうしても画面がちっちゃい。操作性がちまちまするのでどうしてもツール的になってしまう。画面の切替って感覚とか表現力とか使い続けるときにエンゲージされる感じって圧倒的にあって、自分たちのブランディングやユーザーさんの使い勝手を考えるとiPadでこそをやるべきだと持ってるし、ギャラクシーはないなと思ったし。iPhoneもメディアとしてのエンゲージは正直厳しいと思ったので、意図的に計算してiPadを選びましたね。

tabの体験性を大切にしてると。

そうはいっても私たちはアーティストではないので、世界でどれぐらい普及していて、どれぐらいマネタイズのシミュレーションができるのかということは計算してますよ。

次に使ってて、やっぱりわかりにくいの。「tab」と「フォロー」の違いが。最近はあまりユーザーに迷わせる体験性ってよくないってことでシンプルになる傾向が強いのに、これはどうして?

Pinterestってボードにピンするからピンタレスト。言葉の勝利ですよね。自分たちで快く思っている言葉がtabで、タブレットやブックページにラベリングする、色々な意味が重なって「tab」になってるんです。

一方で、フォローって元々はそういう呼び方じゃなかったんです。その人のインタレストをtabっていう塊でまとめていって、塊の単位でフォローができるのがフォロー。ストリームとかコレクションとかそういう意味です。

じゃあこれはこれでいいんだと。

そうです。

最後に、tabはまあ簡単にいえば画面みて、自分の興味あるものをボチボチとtabしていけば自分好みの雑誌ができる、っていうものなんですけど、実際、私、その「アクション」に移らなかったんですね。リマインダーとかそういう行動を促す仕組みはいれないんですか?

そこはね、説明しがいがあるなと思っていて。tabの分かりにくい点であり、同時に深みがある話なんだけど、世の中のロケーション系はあるひとつのユースケースだけでサービスをスタートしてしまうんですよね。でも私たちは「サイクル」だと思っているんです。雑誌をみて「いいなぁ」と思って付箋貼ったりするのがひとつ目のサイクル。

行動に移すのってその場ですぐというダイレクトなものよりも、ポケットに入れて、一カ月後でもいいんだけど、ある時それが「ピコーン」と立ち上がってリマインドされる。これがふたつ目のサイクル。この組み合わせでできると思っているんです。

「ブラウズ」「タブ」「アクト」でいうところのアクトがすぐに立ち上がるのではなく、 もちろん、その場で動いちゃう人もいるだろうけど、実際はストックしておいて、後で気がつくもんなんですよね。印象深いことでも二時間後にはなくなっちゃう。睡眠して起きて、一週間後にそれをしっかりとリマインドしてくれる。それが重要。

それで、リマインドって今はあるんでしたっけ。

今はないんですけど、そこには秘密のレシピがあると思ってるんです。例えばロケーション系の人ってノーティフィケーションに走っちゃうんですよね。でもちょっと待って欲しい。雑誌で考えてみてください。雑誌ではノーティファイしないけど、役にたってるじゃないですか。雑誌を読むっていう行為そのものが、ちょっと楽しいし、暇な時だったりするんです。つまり、私はね、それが最高のノーティフィケーションだと思っているんです。分かる?分かります?これ。

あぁ…、そういうことか。暇な時に雑誌って読むから、その時にそういや前に付箋貼ってたなとかそこで思い出す(リマインドされる)ってこと?

そう。暇な時にtabを開ける。そうすると今いる自分の近くに以前tabしたものが出てくる。おお、そういえばそうだったいってみようかな。これがノーティフィケーション。

なるほど(笑。理解出来ました。システムじゃないんですね。

情報がランキングされていることが重要です、新着だとストリクトになり過ぎるんですよ。人間の強みってそんなに狭くないから、それに関連してこれもどうですか、こっちはどうですかって。じゃあ暇な時にはtabを使うっていう文化や習慣を作らないといけないですね。エリアを絞ったことも大切で、セカイカメラを作った時に大変だったのは、さすがに世界のどこでも使えますってやっちゃったこと。

今回、渋谷、六本木、銀座と区切って、絶対に情報が出ている状態を作りました。さらに200人ほどのキュレーターをエデュケートしています。

セカイカメラの時にもそういう人たちに協力いただいてエアタグしてもらってもよかったんだけれど、全然してこなくって。今回はイベントやこういう場所に出てきて積極的に話をしている、というわけです。他にも提携している100社ほどの企業からの情報が入っています。でも実際に行った時に、人によって見てるポイントとか味わいとか違うので、そんな感じで人によってテイストが違うよねっていうところがさらに興味深い情報になりますね。もうね、楽しくて。今はすっかりTumblurやPinterestやってないんですよ。この中毒者が。

え、リブログやってないんですか?

はい(笑。tabに情報があれば誰かがそこに行けて幸せになるかもしれませんが、僕がリブログをいくらかましても人間はあまり幸福にはならないと思うんですよね。(※注:井口氏は自他ともに認めるTumblr中毒者)StartupDatingもアジアのこの場所でこういう起業家に会える、こういう濃い話ができるんだってtabしてくれたら、続く起業家に情報を残せる。そういう教育コンテンツにもなるんですよ。だからやってください。

はい。がんばります。

後半はTechCrunch50からのスタートアップとしての道のりをお話しいただきました。次回へ続く。