「投資家にいわれて何かやるなんてありえない」ーー頓智ドット/井口尊仁氏インタビュー(後半)

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前半からの続き。tabはどうして生まれたのか。TechCrunch50(TC50)でデビューしたセカイカメラからtabまでの道のりを取材記事と共に振り返った。

(2008年開催)TechCrunch50のファイナリストの時って井口さんおいくつだったんですか?

44歳なんですね。

正直、僕の三つ四つ上だと思ってました…。

この前、19歳の起業家の男の子と夜通し頓智ドットのオフィスで飲み明かしたんですけど、グラビアギャルの話をしながら「この子イケてるよね!」とかっていってる俺、一体なんなんだろうと。

未だにサンフランシスコではこの時(TC50)のこと言われますね。Yammerっていうのがこの時優勝したんですけど、TCの連中とチャットしてて彼らはあまりにもリアリスティック過ぎるし、面白くない、イノベーションがないよねっていってたんです。で、実際にアワード獲った時も結構なブーイングでした。

最初の年のグランプリもMintで、これが未公開スタートアップとして300億円(※実際は$177M)程度で売却してしまうんですね。自分たちの最初のグランプリがたったの300億円程度かと。クソかと。

Serkan(TechCrunch本家のコントリビューター)が頓智ドット400万ドル調達の記事を書いて、結構皆さん驚きました。でもそれって実はあの2008年のデビューから1年経ってる。それまでどうしてたんですか?

アメリカ人と日本人で全く反応が違ったんですね。アメリカ人はこれは世界を変えるからとにかく作れというのが半分、もう半分が懐疑的。日本人はほぼほぼありえない、あれは詐欺だって。自画自賛で恐縮なんですが、びくともしなかったですね。だから何?って。

当時プロダクトなかったんですよね。

カンファレンス出てたりしましたけど、実はなかったんですよね。ただ、日々開発は進んでいたし、実際に動いていたし。当時、今にも吹き飛びそうな人形町のアパートで開発してたんですけど、なんかね、動いているんですよ。それがTechCrunch50の1カ月後の話です。アワードに出てから開発に着手するっていうのもエラい話なんですけどね。

人形町から自宅に帰るまでの道のりで使うわけですよ。今でもよく覚えてますけど、銀行があるんですね。そこに近づくと銀行のエアタグが近づいてくる。一応擬似的とはいえ、コンパスついたらどうなるかは想像ができたんです。

資金調達に関してはシリコンバレーの感覚だと(金額が)大きい方がよくて、一定の技術的前提があって、ビジネスモデルがあれば必ず調達できると思ってました。TechCrunch50の前には全部断られてたんです。調達については。けれどね、(アワードが)終わったら世界のVCから声がかかるようになったんです。でもその時に変なところに出してもらったら先はないなって、かなり選びましたね。

2010年に入ってKDDIとの提携、ソーシャルゲームに着手してプラットホームになりますって話があって、そして1200万ドルの調達。当時この手のプロダクトではなかった話でした。でもそこで話題が少し途切れる。2011年はセカイカメラがどこに向かっているのか分からなかったです。この時って悩んでました?

ソーシャルゲームについていえば、私、単純にジョジョのスタンドができるんじゃないかって思っただけだったんです。ポケモンがリアルに出てくるゲームができるなって。街中で「ピカチューゲットだぜ」が出来るかもしれない。あまり違和感なくって色んなコンテンツが出せるっていう感覚だった。ソーシャルゲームっていう表現はちょっと変だったかもしれないけどね。

Twitterやfacebookのようにセカイカメラもユーザーがコンテンツを入れてくれることで成立するサービス。コンテンツをユーザーにお任せして何かを作ってくれるって期待することが賭けになることがある。そこをさらにソーシャルゲームやARっていうインターフェースのかけ算でやっちゃったからものすごいハードルが上がってしまった。

当時は「やっちゃうもんね」って感覚があったんです。でもね、思ったより歯ごたえがあって。最後の最後までやり抜くという部分では、正直ちょっと後悔があります。AR体験とソーシャルゲームを組み合わせて、お客さんにとっての期待感を越えた満足感をもたらせるコンテンツを最後の最後までやり抜かなければいけなかった。

唐突なソーシャルゲームだったので、あれって投資家からのプレッシャーってあったんですか?

プレッシャーがあった方がいいとかない方がいいとか、投資家と起業家の軋轢みたいなことはいわれるんですけど、頓智ドットは少なくとも投資家に恵まれていて、本当にヤバいぐらいですよ。基本的には小さい仕事はするな、大きいプラットフォームとして世界を変える仕事をしろと。それがないならやめてくれといわれてます。

もちろん、事業計画に対してどうなってるんだ?ってことは当たり前にありますけど、スタートアップとして大きなビジョンを掲げて仕事をしているわけですから、何かを言われてそれをやるなんてことはありえないですね。

DOMOはLAUNCHでデビューしてそのまま幻になったサービスですね。HighLightが後で出てきて。

一年後のSxSWでHightLightが出てきて。Glanceeはその後、facebookが買収しました。LAUNCHカンファレンスの時のプレゼンもうけたんですよ。リアルでの興味関心を可視化して出会える。それを製品化してお客さんに届けたいとサンフランシスコに乗り込んで。

でも事情があって一時撤退を余儀なくされてしまって。もっとやり抜くべきだったと思ってます。類似サービスが出てきた時めちゃくちゃ悔しくて。だってアイデアも変わらないし、自分達の方がもっと先をいっていたわけですから。

でもね、実はtabってAPI公開していて、今このtabで起こってる出来事は全てソーシャルに紐づいているわけです。つまり、DOMOはこのAPIを使えば作れちゃうんです。DOMOはtabの中にインクルードされているわけです。

セカイカメラってどこにいったんですか?

tabのiPhone版にセカイカメラのアイコンがあってこれをタップするとARビューに変わるんですね。これまでのセカイカメラの問題点は情報ノイズが多かったり密度が低かったりと場所によるギャップが大きかった。

tabでは僕らがコンテンツをちゃんとご用意して非常にいい感じにフィルタリングができるツールに仕上げました。もちろんセカイカメラはまだまだ世界中で大勢に使われていますから、そのまま消えることは有りませんよ。ただ、こういった形で自然にtabの中に入ってるんですね。

「Transparent World」って言ってきたんですが、お互いのフィーリングやセンスをさらけ出して透明な状態で分かり合えるという世界観を作りたいなと。これはセカイカメラのビジョンでもあるし、現在のtabに至るまで自分の中ではずっと繋がっているんです。

頓智ドットのビジネスのイメージってややもすると曖昧に思えるのですが。

セカイカメラの初期に、リアルコマースをやるっていう話があったんです。いいなと思ったらその場で買える。ソーシャルなプロダクトだからコメントがついたり、現実空間そのものがクリッカブルになっていてあらゆるものが購買可能になる。

それでAmazonのベゾスに「一緒にやらないか」って会いにいったんです。そしたらえらく長く時間を取ってくれて。モノを買う時の現実の質感とか感触とかコミュニケーションとかって楽しいじゃないですか。あんな無味乾燥なショッピングカートだけなんてもうダメなんじゃないのって。そうこうしているうちに、GoogleがGoogleグラスの様な実空間デバイスを出してくるわけじゃないですか。

あれ、やっぱりショックだったんですか?

そんなことないですよ。実はあれ、作ってるチームよく知ってるんです。で、会いにいって超仲良くなっちゃって。いいなと思ったらすぐに会いにいっちゃう。

そろそろ時間なので、最後にメッセージを。

多分、Webを中心に生きてる人って本末転倒状態になってるんじゃないかなって思うことがあるんです。ネットの向こうに何もかもがあるような錯覚に取り憑かれてしまって。でも人間の行動って、もっと感情的にぶつかったり、激しくいがみあったり、ハグしたりって凄くフィジカルじゃないですか?だからね、Webって今のままじゃイケてないんです。
長時間ありがとうございました!

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