トップの器が事業の器になるーーセプテーニ・ホールディングスの佐藤光紀氏が語るチームビルディングとマネジメントで考えたい8つの要素

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企業において、スタートアップのような創業期から事業を大きく展開していく成長期など、それぞれのステージによってチームビルディングやマネジメントの意識は変わってくる。

1人でやる仕事からチームでの仕事といった変化に対し、創業者はどういったワーク意識を持ってマネジメントをすべきか。株式会社セプテーニ・ホールディングス代表取締役社長の佐藤光紀氏は入社以来、新規事業から事業の成長戦略を図るまでの様々なステージを経験してきた人物だ。

佐藤氏が「MOVIDA SCHOOL」でスタートアップに向けて語った、成功するためのマネジメントとチームビルディングについてのヒントをまとめた。

トップの器が事業の器になる

会社がどこまで成長していくか。それは、会社をどこまで大きな器にできるかだ。それはつまり、トップに立つ人間の上限が会社の上限だといえる。

中身がなければ理想の器よりも、大きくなることはない。

そのためには自己責任をもち、自分の器の小ささを自覚しながら常に自問自答することが大事だ。マネジメントをするためには、自分の器を大きくし、求められるものと自分の能力や意識のギャップを埋めることが前提である。

1万時間、その事業に没頭しろ

起業したてというのは生まれたばかりの金の卵のようなものだ。その生まれたばかりの卵をどうしていくか。最初が肝心だ。立ち上げの経験がその後の成長にもつながってくる。

事業開発などトップダウン型で進めていき、1つの事業の立ち上げに没頭することで、その後のスケールのしやすさが変わってくる。必要な時間として、例えば1カ月に500時間、12カ月、これを2年近くかける。つまり、約1万時間を1つの事業に集中し走り抜ける。1万時間をどれだけの期間で達成するかは人それぞれだが、変化の激しいネット業界ではスピードが事業の成功を左右するだろう。

最初の1万時間は疲れも忘れ没頭するくらいのことが必要で、なにもないところから1万時間で”モノ”になってくるという経験はあらゆる分野にも応用が効くし、その後のバリューを上げることにもつながる。1万時間をやりきった人とそうでない人は全然違う。まずは1万時間をかけ、その道のプロになることに集中してみたらどうか。

ステージチェンジを自覚する

創業期から1万時間をたつと、自分自身のステージが変化することを認識する。つまり、0→1のフェーズから、1→10のフェーズへ移る、ということだ。

それまで自分自身ですべて回していたような仕事を洗い出し、いまの自分にとって必要なタスクはなにかを認識する。自分がこれまでやってきたことは、1→10では必要がないということを理解し、商品開発などを引き継ぎ、他の人間に権限移譲する。

そして、起業家としての自分自身の想いをまわりの人間と共有することで、自然とそれらに感化された人たちがさらに事業を成長させていくようになるはずだ。

期待値をコントロールする

事業が大きくなることで、自分自身にではなく、人に仕事を任せることが大事になってくる。

その際に重要なのは、期待値をしっかりとコントロールすること。引き継いだ仕事で自分とまったく同じものができると思ってはいけない。自分ができるから相手もできるはずだ、という認識から脱却する必要がある。

相手と自分とは違う存在、違う能力をもっているということを認識する。相手をよく知り、何を持っていて、どうモチベーションが上がるのかを理解し仕事を任せる。そのままにしておくと期待値はブーストされてしまう。期待値をセルフコントロールし、自分にない相手の得意な能力を引き出すことで、多様な価値観を受け入れられる、強いチームを作るよう心がけることだ。

組織づくりは振り子のように動き続ける

組織は、最初はトップダウン的な文鎮型、そして次第にピラミッド型に移行してくる。その違いを理解することで、組織の重要性を感じることができる。

ただ、決してやってはいけないのは、組織づくりを「べき論」で正そうとすることだ。もし、組織づくりに正解があるのならば、世の中のすべての企業の組織は同じような形態になっているがそうはなっていないはずだ。

文鎮のような1人1機能の”事業型”とピラミッド的な”機能型”では、その企業の状況に応じて組織が変化し、振り子のように揺れ動くことになる。決して止まってはいけない。組織が機能不全に陥る前に体制を変えるべきだが、タイミングも間違ってはいけない。タイミングを間違うと、組織としての習熟が得られず、組織メリットが享受できない。

どちらの組織形態も正しいという認識の上に立ち、タイミングよく事業を転換しつつ、変えてから結果がでるまでに時間がかかることを我慢しながら自分の決断を信じる。一喜一憂せずに平常心と自然体でもって、変化を楽しみながら組織運営をしていく。

自分に対して意見が言える存在を組織に置く

組織として大事なのは、自分と似ていない人をどれだけ組織の中に置けるかだ。自分と同じような人がいる組織は弱いが、立ち上げ時などはそういった組織を作りたがる傾向が多い。

自分とは違った考えをもった人と共存し、志を共有しながら進んでいくことが、結果として良い方向へと導かれることが多い。自分に対して意見を言える人をまわりにどれだけ置けるかであり、とくに煙たい人ほど重宝すべきだ。

「or」から「and」の意識をもって意思決定をする

意思決定においても、振り子の話と同様にどちらが正しいというものはなく、常に双方の意識を持つべきだ。

現状のステージ、状況などを見て判断することであり、考えが間違っているという発想ではない。

常に意思決定から逃げず、現在の状況と照らし合わせながら、どちらの選択も正しいということを理解しつつも、どちらかを選択しないといけないという、矛盾をはらんだ意識を受け入れて意思決定をすべきだ。

「したいこと」「できること」「すべきこと」の3つの円を常に意識する

人の行動の概念として、この3つのスキームに当てはめながら、自分自身も組織全体も見つめなおすことが大事だ。そのために、したいこと(will)、できること(can)、すべきこと(must)の円を視覚化してあてはめていく。

したいことが大きいことは起業家にとって重要。しかし、自分が実際にできることが小さくギャップに苦しむことがある。そして、自分自身や事業としての使命がいかに社会にとって必要な存在かということを理解しないと、社会と適合できなくなる。

3つの円を常に意識しながら、それぞれ大きくしていくことで中心の円が大きくなり、自分も組織も大きく成長できる。これのバランスが悪いと、組織やチームはバラバラになる。起業家として経営者として、これらを定期的かつ無意識に見直すことが重要になる。

【U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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