いかにしてプロダクトの価値を高めるかーー500 Startupsから投資を受けたHapyrus藤川氏が語るシリコンバレーで起業するための8つのヒント

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起業家、投資家、エンジニア、デザイナー、多くの優秀な人材とお金がシリコンバレーには集まっている。日本の起業家にもシリコンバレーへの憧れを抱く人も多く、彼の地で一旗あげたいと考えているという話もよく耳にする。必ずしもシリコンバレーが良いわけではないが、その長いスタートアップの歴史の積み重ねにより作られているエコシステムや、カルチャーには学ぶところが多くある。

クラウド上の大規模データ並列分散処理をウェブサービスとして提供する米国登記の会社、Hapyrus。この会社は日本のエンジェル等から投資を受け、昨年10月、シリコンバレーのアクセラレータプログラム “500 Startups” に、日本人企業として2番目に参加し、現在米国でプロダクト開発を行なっている。

Hapyrus Inc.のFounderである藤川幸一氏が、「MOVIDA SCHOOL」で日本の起業家に向けて語った、シリコンバレーでスタートアップを始めるためのヒントをまとめた。

まずアメリカに行く準備を

Hapyrusは、アメリカで投資をしている日本のエンジェルと、500 Startupsから出資を受けている。会社から会社に株を移す時、日米だと税制の違いや株主の同意を得ることが難しくなるため、アメリカで勝負したいのであれば登記はアメリカですべき。ただ、就労ビザはまず出ないと思ったほうがいい。そのため、いかにしてビザをゲットするのかが重要。

英語についてはまったくできない状態はダメだが、ネイティブのようにしゃべれなくても問題ない。Hapyrusがやったことは、エレベーターピッチと呼ばれる30秒のピッチの台本を作り、完璧に暗記した。30秒のパターンの他に、もう少し長いバージョンのプレゼンも暗記すれば切り抜けられる。

ずっと英語ができないままだとまずいが、ある程度できる人であれば大丈夫。コミュニティカレッジに3カ月ほど通って、英語を自信をもってコミュニケーションとれるようになった。このようなやり方もある。

スタートアップに一番大事なものはプロダクト

スタートアップにとって大事なものはプロダクトである。プロダクトがなければ何も起こらない。「あなたのプロダクトが解決する課題は何か?」という問いに答えられないと、シリコンバレーでは見向きもされない。Hapyrusが解決したいと考えている課題は「ビッグデータ時代に困難なデータ処理を助ける」というもの。

ピボットによって、プロダクト自体やソリューションは変わってしまってもいい。ただ、何を解決したいのかだけは変えてはいけない。問題意識はどこにあるのか、その解決策はどういったものか、その解決策が実現できるチームなのか、といった順に投資家には評価する視点を移動させる。

資金調達は転換社債が常識

資金調達で衝撃を受けたのが、シリーズAとエンジェルラウンドの違い。シリコンバレーにおいて最初のファイナンスはConvertible Note(転換社債)が常識。Convertible Noteとは、会社にローンとしてお金を貸し付け、将来、優先株による資金調達(通常はシリーズA)が起こった際にローンを優先株に転換(convert)するというもの。

エンジェルラウンドは、ビジネスとしての価値があることは多くは求められず、人柄や問題意識などに対して投資がおこなわれる。そのため、価値が決められないので、資金調達手法としてConvertible Noteを用いる。

シリーズAはビジネスとして成立することが求められる

次のファイナンスはベンチャーキャピタルからの出資になるが、このときはビジネスが見えてきていないとダメ。シリーズAを受けられる会社は、シリコンバレーのシードラウンドを調達済みの会社の中でもかなり少ない。シリコンバレーでシリーズAを受けるための基本的な共通認識として、お金と人員を投入すればビジネスを大きくできることが証明されている状態であることが求められる。

コンセプトだけではなく、ビジネスとして成立することが保証されていることが重要になるので、それにはプロダクトの性能の証明と、成長できることの証明、この2つの証明が必要になる。

リーンスタートアップの用語を知らないと会話にならない

シリコンバレーのスタートアップはリーンスタートアップの考え方が浸透している。なので、リーンスタートアップの用語を知らないと会話にならない。スタートアップのビジネスはこれまで世の中になかったものを作り出し、価値を生み出していくというもの。どうしたら価値があることを証明し、ビジネスとして大きくしていくのかが大事。

「MVP」という言葉は「Minimum Viable Product」の略。最小限に対象となるお客さんに価値があるもの、フィードバックがもらえるものを指す。完全に動くシステムになっていなくてもいい。Dropoxは初期のころ、サービスの紹介をする映像があり、どんなサービスなのかを紹介しているだけだった。その映像の下にβ版へ登録できるようになっていた。実はこれがMVP。実際に動くものでなくてもよくて、ユーザがそれを見て、それを使いたいと思うものがMVP。

「Build-Measure-Learn」というものが基本的なPDCAサイクルに近いものになる。サービスを作ってリリースし、ユーザに使ってもらって効果を測定し、そして改善点を洗い出す。これが最初にプロダクトを作るところから繰り返しおこなう。こうして学習成果を積み上げることがスタートアップがやるべきこと。シンプルだが実践が難しい。

シリコンバレーの人材エコシステム

投資家・エンジニア・デザイナーの順で尊敬される。シリコンバレーで一番えらいのは投資家。シリコンバレーのほとんどの投資家は実際に起業をして成功した人で、エンジニア出身の人が多い。エンジニアなどモノが作れる人は、レベルが高ければ高いほど評価が給料という形で返ってくる。デザイナーは、UX含めてプロダクトをデザイン出来て、コードもかける人が求められている。ハイパフォーマンスな人たちがごろごろいる。

スモールイグジットが多い仕組みになっている。プロダクトがスケールすればいいが、厳しい状況であっても、こうしてイグジットすることも多い。Googleなどが人材を買うために会社を買ったりして、それによって投資家も得をする。イグジットした起業家は、次のビジネスを始めることもできるし、投資する側になることもできる。お金が回るので、優れた人材が集まるというスモールイグジットの正のスパイラルが起きている。

500 Startupsの「3D」とは?

起業に対するコストが大きく下がり、クラウドサービスを利用し、App Storeを通じてアプリを提供するなど、制作、配布のコストが大きく低下している。その段階で沢山お金を入れられないので、スーパーエンジェル(アクセラレーター)が少額投資をするというのが増えてきている。シリコンバレーには500 Startups以外にも何十社もある。

500 StartupsではData、Design、Distributionの3つのDを大切にしている。Dataは、スタートアップが自身の価値を証明するために大切なもの。Designは、プロダクトによる体験全体のDesign。これがシリコンバレーでは重視されている。次のDistributionをちゃんと考えられていて、きちんとスケールするモデルであるかどうかを見ている。この3つのDが改善をしていくための判断ポイントになっている。

良いデータを出すために「AARRR」を改善していく

Dataの点については、良いDataを出すために「AARRR」と呼ばれる部分を改善していくことが重要。「Acquisition」=ユーザー獲得。「Activation」=ユーザーに自分のサービスを素晴らしいと実感して実際に登録してもらうこと。「Retention」=サービスを利用したユーザーが、戻ってきてくれること。「Referral」=ユーザーはそのサービスが好きで、つい人に教えたくなる。

上記の4つが実現できたら、サービスは軌道に乗って勢いをつけることができる。そして、最後の”R”、「Revenue」=ユーザーがお金を払ってでもサービスを使いたいと思ってくれる、が重要になる。(参考資料

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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