Harbinger Venture(聯訊創投)創業者・鄭志凱氏「台湾の創業者達よ、どうでもいい問題を解決するのはやめよう」

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【原文】

鄭志凱(ジェン・ジーカイ)氏は、Harbinger Venture(聯訊創業投資、または、聯訊創投)の共同創業者である。アメリカ・シリコンバレーで二十年ほど滞在していた間、ベンチャー投資業務を通じて、アメリカ、台湾、中国など世界各地の人材に多く接触した。今回、TechOrange(科技報橘)は、新しいスタートアップを訪ねて訪台した鄭氏を招き、二十年間観察してきたシリコンバレーでのベンチャートレンドに照らして、台湾のベンチャー文化を向上するためのアドバイスをもらった。

あるアメリカ人が台湾のバーに着いた。店先に人が並んでいたところ、急に大騒ぎが起こった。混乱した列の中で、人々が頭を出したりひそひそ話をしたり、起きた状況を知りたがっているように騒ぎ立てているが、しばらくすると静かになった。

そのアメリカ人にとって、印象深かったは台湾人がルールを守っていたことだけでなく、「何が起こったのか」と前への人に聞いていた人が、誰もいないことだった。

このエピソードを聞いた私たちは驚かいだろう。「わからないことを誰かに尋ねない」というのは、台湾人の生まれ持った気質だからだ。「時が経てばいい」という民族性こそ、台湾の創業者が全体を把握できない最大の原因だと、Harbinger Venture 創業者・鄭志凱氏が指摘した。

アメリカ・シリコンバレーで過ごした二十数年で、鄭氏のベンチャー投資はアメリカ、中国、台湾の至る所に及び、テック業界の多くの人々に接触し、産業の発展、将来性に対する考察、事業管理にまで及ぶ彼の見識は大変深い。台湾の事業環境について、鄭氏の一般的評価は「不確かなもの」である。

台湾は「規模の経済」を作り、SOP(標準作業手順)に依存した経済が出来上がった

鄭氏は指摘する。台湾の産業は経済の規模を求めて、目標を達成するため、台湾はパネルなどのハードウエアに重点を置いてきた。規模の経済を作るためには、標準化を追求しなければならない。そこでSOP(標準作業手順)が運用されるようになり、規格化によって、多くの制限や縛を持つようになった。

毎日の生活を標準化しても、人の考え方は変わらない。世界は変化し、すべての人は革新に沿って生きている。世界では新しいビジネスが絶えず生まれており、仮に私達が標準化を続けても、どこに見込みがあるだろうか。

台湾人は「大きな問題」を探し出して解決することを知らない

鄭氏が観察してわかったことがある。どんな領域であろうと、台湾人の注意の対象は、ただ台湾に対してだけである(海外ニュースが少ない、台湾のテレビのニュースが最も良い証拠である)。

Skype、Angry Birdなどのソフトウェアは、私達の技術でも可能だ。しかし私達の思考は、台湾の問題を解決することしか考えていない。

Skype のように、全世界のネットユーザーの、基本的なニーズを解決しようとするサービスを作り出す考え方は、台湾では本当に珍しい。政府が牽引して、クラウドだの、ソフトパワーだのと叫んでいるが、実際にはアプリを作り続けている。そして、台湾の若者たちが狂ったようにアプリを作り続けるのを見ると、とても複雑に感じた、と鄭氏は言う。

アプリの創業での成功例はもちろんあるが、ベンチャーの道を歩む上でさらにユニークな価値を持ち、コピーされづらく、そして、地域への依存がそんなに高くないサービスを作ることはできないものですかねぇ。

彼が指摘したこれらの問題点の多くは、根本的の環境や民族性によるものだ。しかし、台湾にはベンチャー創業のチャンスはあるのだろうか? 「シリコンバレーは起業家の聖地である」と言われるが、それはなぜだろう?

シリコンバレーのエコシステムは巨大、起業家はそこで育つ

鄭氏は指摘する。シリコンバレーは整ったベンチャー・エコシステムを持っていて、エンジニアは十分な信用を得ることができ、大きな試みに挑戦する。このエコシステムには豊富な人脈があり、資金などの創業に不可欠な資源を、多くの事業主へ供給するのだ。

台湾人のふるまいは大胆ではない。エンジニアにベンチャー欲はなく、Dropbox のような多額の資金が必要なベンチャーを支えるために、大胆な投資をする人が台湾にはいない。報道によれば、台湾での資金調達の規模は100万ドルだが、中国本土では1500万ドルに及ぶ投資案件が生まれている。まさに台湾のそれは、大海の一滴だ。

Insider の考え方を重視すべき、外部に才能を求める姿勢が不足している

鄭氏は説明する。心から技術を楽しみ、技術に身を捧げる人を「insider」と言う。ビル・ゲイツ、マーク・アンドリーセン、マーク・ザッカーバーグ。彼らのような者をの「insder」と呼ぶのだ。有名なこれらの成功した創業者はinsiderについて十分な認識があって、どのように発展させるべきかを知っていて、自分のサービスを合理的なものにする。

鄭氏は付け加えた。最も重要なのは、これらのinsiderは自分に足りないものを知っていることだ。だから、ザッカーバーグは、自分よりもすごいnerdを探すことを知っていて、持っていた技術を発展させ商業化した。その上、シリコンバレーのnerdは、商業化することが低俗だとか、浅ましい商売だとは思っていない。

創業の話から始まって、国家間の競争力にまで拡がった。鄭氏は、インタビューの終わりに「台湾の競争力が今まさに落ちている。もう一度立て直したいのなら、台湾積電(台湾セミコンダクター)のような企業の力に頼ってはいけない」と語った。

台湾人がイノベーションの意味を理解していると期待している。売れているものの寄せ集めであってはいけない。多くのサービスが、どうでもいい問題を解決しようとしている。台湾のベンチャーは、大きな視野で解決すべき問題を見つけることを学ぶべきだし、ユニバーサルな立場に立って問題を見つめ、自分の住んでいる地域だけの殻に閉じこもってはいけない。

彼は国際的な問題を解決したいと願う。第一歩は中国市場をマスターだ。中国の極めて大きな市場に対応することをマスターしてこそ、初めて国際市場に入るチャンスがあるという。

また、台湾のベンチャーの雰囲気は、ややトーンダウンしている。だが、人々が称賛するシリコンバレーの精神と雰囲気は、決して一朝一夕で完成したものではない。個人、企業、メディアは、少しずつ経験し、激励を分かち合い、そうすれば、台湾のベンチャーの小さな火を、野原に燃え広げることができるだろう。

【via TechOrange】 @TechOrange


著者紹介:鄒家彥(ゾウ・ジァヤン)

人々のため記事を書きたいと思っている。興味深い話、読んでほしい話、見逃せない話を執筆してきた。起きているときはリラックスし、寝ているときは 夢を見るのが好き。最近見た印象的な夢は、俳優・余文楽(Shawn Yue Man-Lok)が TechOrange(科技報橘)で仕事していたシーン。

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