ビジネス発展のために法務意識をもて--AZX法律事務所後藤氏が語るビジネスモデルの適法性に関する10のまとめ

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ビジネスを考えるにあたり、法律の問題は無視できないものだ。ビジネスモデルが法律に抵触しているかどうか、また、自社のサービスが違法行為に利用されないためにどうすればいいか。ベンチャーから大企業まで、サービスや製品提供をおこなう企業にとって法務問題はビジネスを継続するために直面する大きな問題だと意識する必要がある。

AZX法律事務所は、主にベンチャー企業向けのサポートに特化しており、ベンチャー企業の法律相談をおこなっている。

AZX法律事務所の後藤勝也氏が「MOVIDA SCHOOL」で語った、ビジネスモデルの適法性についてポイントをまとめた。

ビジネスを継続するために法的適法性を考える

ビジネスモデルが法律に適応しないと、刑事罰による懲役や罰金、ビジネス上の契約無効による売上の減少や過去の売上の返金、もしくは裁判などの紛争に巻き込まれ、ビジネスの停止や弁護士費用がかかってしまう恐れが多い。

こうした問題は、企業としてのビジネスの継続性を不可能にしたり、または、IPOやM&Aがおこなえなくなる可能性がある。そのために、しっかりとビジネスモデルについて考えてもらいたい。3つのポイントである「適法性」「適法利用性」「非紛争性」の視点から確認してもらいたい。

ビジネスモデルの適法性を見定める

適法性については、ビジネスモデルが、法律構成として正しいかどうかの視点も重要だ。誰が契約当事者で、誰と誰の間の契約なのか、しっかりと見定めてほしい。

例えば、ある会社が、製造者とユーザーの間の取引を繋ぐ場を提供している形の場合、モノやお金の流れが同じであっても、会社が製造者からモノを購入してユーザーに販売する「売買型」と、取引自体は製造者とユーザーが行い、会社はその取引の仲介をするに過ぎない「仲介型」があり、それぞれで、売上計上、売主としての責任の所在等が異なってくる。

次に、適法性については、法令上許認可が必要であるかをチェックする必要がある。

例えば、「仲介行為」において、仲介行為自体に許認可等が必要なものがある。 貸金業の登録や宅地建築取引業の免許、旅行業の登録など、それぞれのビジネスモデルに必要な許認可を確認してもらいたい。そもそもアドバイスや飲食の提供、空室の宿泊などをユーザー間でおこなう行為によっては、許認可が必要なものがある。それが日常に行われている行為であるとまさか許認可が必要であるという考えに至らない場合もあるが、有償サービスになることで、許認可の必要を要する場合があるので注意が必要である。

金銭のやりとりにおける決済手段提供型モデルの問題

決済手段提供型モデルについても留意するべき点がある。仲介型において仲介をした会社がユーザーから取得したお金は、当該会社のものではなく製造者又はユーザーのお金であること、人のお金を預かっているということを意識してもらいたい。このような他人の資金を預かることについては、出資法、銀行法、資金決済法などに抵触しないかを検討する必要がある。しかし、短期の決済や少額の取引などにおいては、現行の法律の中でも、グレーな領域もあるため、こうした問題は、今後の法改正等の動向を見てしっかりと対応していく必要がある。

コミュニケーションサービスは電気通信事業

SNSやコミュニケーション型モデルのビジネスモデルは、場合に応じて、電気通信事業に該当し、届出をおこなう必要性がある。

特定の電気通信回線設備を設置しない場合でも、他人の通信を媒介する場合には、電気通信事業法上の届出が必要な場合がある。マンションインターネットや他社のメルマガの媒介、SNSのメッセージ機能、電子メール運用のホスティング、クローズドなSNSや出会い系などがそうだ。届出が必要な場合、電気通信事業者としての各種規制を受けることになる。

また、他人の通信を媒介せず、特定の電気通信回線設備を設置しないサービスであっても、届出を要しない電気通信事業とみなされる場合もある。オンラインストレージやオープン型チャット、電子掲示板、ネットオークション、オンラインゲームなどが該当する。この場合、検閲の禁止の対象となり、また、通信の秘密の保護などの法律順守を求められる。

自社のコミュニケーションサービスが該当するのはどれか、しっかりと確認してもらいたい。

アイテム付与モデルは、賭博性に注意

ソーシャルゲームで問題になっているものとして、アイテム付与などが存在する。そのときに争点となるものの一つは、「賭博」に該当するかどうかだ。

賭博とは、偶然の勝敗により、財物や財産上の利益の損得を争う行為であり、対戦型やゲーム参加についての固定フィーでも該当の可能性がある。また、賭けたコインなどの財物と等価が認められないものが交換される場合も賭博に該当する可能性がある。

ネットゲームなどで、ゲーム内で得られた架空の財産を現金で売り買いする行為であるRMT(リアルマネートレーディング)との連動は、賭博性を高めるので注意してもらいたい。また、カード合わせ、絵合わせ(コンプガチャ)による景品類の提供は、射幸心をあおるものとして、全面的に禁止されている。

口コミは、広告とみなされることがある

事業者が、口コミやブログへの書き込みを依頼した場合、口コミやブログの記載も「広告」とみなされる場合がある。品質に関する優良誤認表示や、取引についての有利誤認表示については、景表法や不正競争防止法において禁止されている。

また、他人の業務を妨害するような口コミ等の書き込みは、民法に基づく不法行為や刑法の業務妨害罪などに問われる可能性がある。

クラウドファンディングを法的に3つに分類する

近年、クラウドファンディングによる資金の調達をおこなう企業なども多いため、クラウドファンディングの法的適法性についてまとめた。クラウドファンディングは、おもに3つに分類される。「ファンド型」「購入型」「寄付型」だ。

ファンド型は、メリットとして、利益に応じた分配がされるが、クラウドファンディングサービス提供者は原則として、第二種金融商品取引業としての登録が必要である。購入型は、商品・サービスの購入というシンプルな形だが、対価が見合っていない場合は贈与・寄付とみなされ、また、購入された商品の品質に関して責任が生じるので注意だ。寄付型はお金を払った人にとっては寄付であり、商品に対するクレームなどは生じにくい。しかし、支払った方が法人の場合、寄付金損金不算入の問題が発生し、また、受領者が個人の場合は贈与税の問題などが発生する。

それぞれのモデルに応じたメリットとデメリットを確認してもらいたい。

ビジネスモデルの模倣は専門家と相談

他社のビジネスモデルの模倣が、ときに適法性について問われる。そのときの争点としては、機能、ソースコード、デザイン、サービス名・ロゴがおもに争点となるため、それぞれの点において、権利侵害の有無をチェックする必要がある。

特定の機能などを模倣する場合には、特許権の侵害の有無が関係する。この点は技術面も含めた専門判断が必要であるため、弁理士に相談してもらいたい。なお、特許出願が公開されていない時期もあるためヘッジできないリスクもある。ソースコードやデザインにおいては、著作権の侵害に関係する。もちろん、結果として似たものになる可能性は十分にある。そのため、元となるものに接することができない体制の設備が考えられるが、デザインについては、アクセスしていないと立証することは難しい。デザインは、変えた方が安全だ。

サービス名やロゴに関しても、 商標権の侵害が関わってくる。結果として類似商標にならざるをえない可能性もあるが、しっかりと専門家と相談するほうがよい。

サービスを違法に利用されないための対処を

サービスが適法であっても、サービスを違法行為に利用される可能性も高い。違法コンテンツのアップロードや著作権の侵害、名誉毀損、麻薬、盗品などの売買、不当な詐欺的取引への利用、殺人その他の犯罪共同者の募集など、様々な違法利用の例がある。

自社のサービスが違法行為に利用されると、共犯(ほう助)としての刑事罰、共同不法行為としての差止請求や損害賠償請求などが発生する。また、現時点では適法でも、規制する法律が制定されるリスク、企業における事業やサービスに対し悪評が広まり、顧客の信頼を失うレピュテーションリスクなどが考えられる。

違法利用性に対処するためには、違法行為の法的な排除可能性の確保や利用規約による禁止の明示、登録取消などのペナルティ、違法行為の検知体制や通報制度などの体制や仕組みを整備してもらいたい。IPOの引受審査等ではこうした違法行為を排除するための仕組み、体制、運用実績が問われ、これらを十分に説明できるようにしておくことが大事だ。

サービスによって争いが起きないために注意すべきこと

サービスによって、裁判などの争いごとが発生する可能性がある。中には、紛争性が一般的に高いと考えられるビジネスモデルもある。サービス内容等が不明確なモデルや匿名性が高いモデル、プラットフォーム依存型や商品優劣の表示、ユーザー同士が出会うモデル、解約金が生じるモデル、特許等が入り乱れる分野のモデルなど、様々なものが考えられる。

そうした紛争から対処するために、サービス内容のアウトプットの定義の明確化や免責規定、損害賠償の範囲や期間の限定、保険の適用、解約の予防や知的財産権による保護、弁理士等の専門家への相談など、責任の明確化や対応策の処置について専門家との密なやりとりをおこなってもらいたい。

それぞれのビジネスモデルに応じた個々の詳細をしっかりと見つめ、問題解決を図ってもらいたい。

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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