変化の兆しを感じとれ – アクセルマーク尾下氏が語る、ベンチャービジネス理想と現実7つのヒント

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スタートアップ経営者は理想を掲げてまい進するが、現実は必ずしもうまくいくわけではない。理想と現実を把握し、それでも着実と前へと進み続ける経営者だけが事業を成功させることができるのではないだろうか。

ネットベンチャー経営者、フリーランス、ベンチャーキャピタリスト、再度ベンチャー企業の経営者というキャリアを歩んでいるアクセルマーク株式会社代表取締役の尾下 順治氏は、ベンチャービジネスとの繋がりが深い。

尾下氏が「MOVIDA SCHOOL」で語った、ベンチャー企業の理想と現実についてまとめた。

多様なベンチャービジネスへの関わり方

新卒で入社した会社を二年で退社し、2000年に大学時代の友人と起業。2003年末に退任してフリーランスに。フリーになってわかったのは、自分の性格のことを考えると自分の生きる道はベンチャービジネスの領域だということ。ただ自らが中心となって起業するほど自分の中に渇きがなかった。そのためフリーになってから1年後、2005年にベンチャーキャピタルの会社に入社。

入社後は現アクセルマークと合併した会社、エフルートに出向。事業支援を行った後、エフルートの社長に就任。エフルートとアクセルマークが合併した後、アクセルマークの社長に就任した。ベンチャービジネスに対して、いくつもの視点から関わってきている。

スタッフのモチベーション維持、どれだけ腹をわって話そうとしているか

エフルートに出向し、取締役として日中ほぼすべての時間を会社に費やしているにも関わらず、違和感が拭えなかった。一生懸命、過去の自分の経験や考えを会社に提供しても、いまいち社内の人間には伝わらない。

「尾下さんって、この会社の人じゃないですよね。会社が潰れても尾下さんだけは職を失わないじゃないですか」と言われ、自らの「言霊」が足りないという結論に至った。そのため出向という形ではなく、エフルートに移り、会社のメンバーとなった。どれだけ腹をわって話そうとしているかを相手に伝えることはとても重要。

現在では、会社のスタッフに2つのことを必ず理解してもらうようにしている。「変化して当たり前」「目の前のことをやりきる」。この2つを理解していないと、社員はベンチャーのスピードの速さについてこれなくなってしまう。

投資家は誰に、何に投資するのか

ベンチャーキャピタリストは、人か事業に対して投資をおこなう。誰に対して、何に対して、投資をするのかという視点を持つことが重要。経営者に対してなのか、事業に対してなのか。ここで株主との見解の相違がないようにする必要がある。経営者に対して投資が実施されていれば、事業が変わっても問題ない。事業に対して投資が実施されているのであれば、経営者が変わっても問題ない。

エフルートは事業内容も経営者も変わった。その結果、社内の混乱が起きてしまった。

事業の利益の分配について

会社で事業を展開すると顧客、従業員、投資家などステークホルダーが複数存在することになる。すべてのステークホルダーを満足させるための利益の分配は、以下の3つの順番で実施する。

①顧客に投資する。つまり、新規事業投資する
②従業員に返していく
③投資家に返していく

3つのステークホルダーをすべて満足させるためには、この順番しかない。

ベンチャービジネスに最も必要なことは、Opportunity(好機)

そこに変革の兆しがあるか、その兆しが見えるかどうかがすべて。変化の波を意識せずにビジネスを構築することはどんな大企業でも不可能。

新卒の学生などにはこんな話をする。TOYOTAは今でこそ世界一の自動車会社となっているが、元々は機織り機の会社だった。潜在的なニーズをつかみ、自動車業界に参入した結果、大きな事業へと変わっていった。機織り機を作る事業を続けていても、世界一にはなっていなかっただろう。

Opportunityを無視して大きなビジネスを作ることはできない。そのOpportunityを感じ取れるかどうか。

では、エフルート創業当時のOpportunityとは何だったか。それまで、モバイルはインターネットとしてではなく、コンテンツ売り場のような捉えられ方をしていた。auがパケット定額制を開始した時、これで世界が変わり、モバイルはパケット定額制によってもっと盛り上がると感じた。

モバイルサイトが多く登場するはずで、サイトに必要なのは検索エンジンだろうということで検索エンジンの提供をスタートさせた。

変わらない経営理念

Opportunityに合わせて、ビジネスの内容は変化し得る。事業内容が変わったとしても、「コンシューマーに向き合っていきたい」という理念は変わらない。一個人として持っている理念は、真のインターネットの普及、インターネットの大衆化を果たしたいというもの。

テレビが日常の中で欠かせないものになっている人は大勢いる。どういう仕組みで動いているのかはわからないけれども、生活には欠かせないものとなっているのがテレビ。それは大衆化した状態、大衆が受け入れた状態であるということ。

なぜインターネットだけが過剰なリテラシーを求めたがるのか?iモードの功績はインターネットを大衆化したこと。誰でも簡単に使えるインターネットを作り出した。ブルーカラーまでインターネットを使える国はほぼ日本だけ。

仕事を楽しむ簡単なコツ

仕事を楽しむためには、興味を持つこと、深く知りたいというモチベーションを持つことが大事。興味を持つと、構造が見えるようになる。自らの働きかけで見えていた構造に少しでも変化が起きるとそれが楽しい。いろんなことに興味を持つことができれば、仕事が趣味になって、毎日がパラダイスになる

自分の中に埋もれた才能はまだあるかもしれない。いろんなことに興味をもって、いろんな挑戦をする。自分の人生の幅を広げるためには好奇心が重要。

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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