ユーザにとって何が一番価値なのかを考える−−コーチ・ユナイテッド有安氏が語るユーザ視点とKPIに関する9つの視点

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サービスを運用していく上でつねに考えなければいけないのは、経営的な視点とそれに伴うKPI、そして、数字だけでなく実際にサービスに触れているユーザの満足度だ。ビジネスモデルとしての発想だけでなく、そうしたあらゆる問題を解決してこそ、事業は継続性をもつことができる。

コーチ・ユナイテッド株式会社の有安伸宏氏は2007年に起業し、「プライベートコーチのCyta.jp」というC2Cのプライベートコーチレッスンのサービスを運用している。現在では、130種類、全国2800ヶ所でレッスンがおこなわれ、C2Cの事業としても大きな成長を遂げているサービスだ。

有安氏が「MOVIDA SCHOOL」で語った起業における経験や、事業における重要なポイントをまとめた。

ユーザにとって、最も意味のあるものは何かを考える

コンセプト重視なサービスは、ときとして、ユーザに価値のないものを作っていることがある。それよりも大事にすべきは、ユーザにとって最も価値を見出すことができるプロダクトとビジネスモデルだ。

そして、そのために必要な最低限のサービスの品質を決めること。Cyta.jpでは、C2Cにおけるプライベートコーチングのサービスを提供している。買い手である生徒にとっての満足度は売り手である先生のクオリティーに左右される。また、オンラインではなく、対面で教えられるからこそ意味のある事業だと考えている。そのため、先生を希望する人はすべて直接面接をおこない、スキルやコミュニケーション能力などをしっかりと見極め、クオリティーを担保した。

自社のサービスにおいて最も重要視すべきはなにかを考える。そして、ユーザにとって最も価値を提供するものはなにか。そのためのクオリティーコントロールをしっかりとおこなうことが大切だ。

ユーザや市場の学習スピードに合わせる

Cyta.jpのように、買い手と売り手の双方がいるツーサイドプラットフォームにおいては、売り手と買い手を集め、質を担保し、運用をおこなうという要素がある。そうした事業において、すぐさま資本調達をおこなえばスケールするものではないと考えている。

あまりに時期尚早な事業拡大は、ユーザが抱える問題からサービスが遠ざかっていくリスクがあり、結果として満足度が落ちてしまう。大事なのは、ユーザと市場のサービスにおける学習スピードだ。あるアクションをするとユーザがどう動き、どうコミュニケーションしたらどう反応するか、という仮説検証をつねにおこないながら事業を成長させていく。そして、ユーザの成長とニーズに合わせてサービスを開発していくべきだ。

売り手と買い手の双方からサービスの満足度を向上させる

Cyta.jpでは、ユーザである買い手だけでなく、売り手である先生へのサポートも充実している。先生たちに対しては、こちらが独自に設定した採用項目を通じて面接をおこなう。さらに売り手のクオリティーやモチベーションをあげる施策をとっている。例として、評価の高い先生のコツや方法論などを運営側で編集しコンテンツを先生たちだけに限定で公開している。ノウハウを共有し、どうすると満足度があがるかということを理解してもらう。

これにより、先生同士の競争と協調が生まれる仕組みを作り、率先してサービス向上に努めるようになる。これらすべては、結果としてユーザ満足度につながり、サービスとしてのクオリティーが増すのだ。

客観的なデータをもとに組織の見える化をおこなう

サービスの価値をユーザに委ねてはいけない。Cyta.jpでは、先生の面談と実際のサービス提供時は対面だが、それ以外はすべてオンラインでデータ化し価値を客観視する仕組みを築いている。決済やレッスンの感想、レッスンの状況、個別の先生に応じたレッスン数や体験レッスンからの入会率など、あらゆるデータを計測している。そして、すべての情報を見える化し、組織内全体でシェアすることで、客観的な判断をもとに経営判断をおこなうことができる。

正しいKPIを設定し、それに向けて試行錯誤する

あらゆる数字をKPIとして設定し、その数値向上に向けて試行錯誤する。失敗してもいいから方法を模索する。数字が顕著に下がったならば、そこには原因があるはずだ。その原因を探し当てることで失敗も糧にできる。Cyta.jpでも、先生への反応が落ちたならば、何か原因があると判断し運営側からコミュニケーションし原因について探る。売り手買い手双方とつねにコミュニケーションしながら、設定した目標達成を目指している。

決して、市場にある神の見えざる手に任せず、積極的にコミットしていくことだ。そして、できるだけコストを削減しつつ、費用対効果の高い運営をおこなっていく。日々これをくり返すことが大切だ。

数字を手段とし、目的のための方法論を確立する

なぜこれだけ数字で語るかというと、教育事業はサービス業だと考えているからだ。いまの教育市場は見える化がおきておらず、主観だけでまわされている。そうではなく、市場原理をどうきかせ、見える化を図り競争すること。そして、数字を中心に経営をおこなうことで、チームとしての考えを浸透させサービスを強くしていける。それによってフェアなマーケットができると考えているからだ。

しかし、数字を集めることは手段であり、そのサービスが目指す目的と大きな目標を設定し、その目的を達成するために必要な数字を集め、リファレンスとして機能させることだと意識しておく。これを意識しないと、ただのデータ遊びになる。気をつけてもらいたい。

組織全体を統一し、意思決定をおこなう

これらすべての仕組みをCyta.jpでは社内で開発している。すべての仕組みを自前で作り上げることで、売り手の情報や買い手の情報、レッスンなどのコンテンツの情報などのすべての情報を追うことができる。そして、あらゆる情報やデータを把握し、全体で議論する。

また、数字だけでなく、日頃から社内では統一モデリング言語であるUMLを使い、機能の実装などについてやりとりをおこなっている。そのため、新卒の社員もバイトもすべて非技術職であろうとUMLを書き、非エンジニアが技術者に合わせることで社員全体がロジックをもって話すことができるようになる。これによって組織全体が統一され、一定の意思決定に応じて運用することができる。

作る、計測する、学習する、というサイクルをまわす

作り、計測し、学習する。この一連の流れを重視し、できるだけ早くまわすこと。そして、作る前に、ペーパープロトタイピングでできるだけコードを書かずにテストをつくり、テストする。これにより、作る前に機能としての価値が理解できる。ユーザビリティよりも、その機能がユーザにとって価値があるかどうかをつねに考えていきたい。

日々、客観的な意見のフィードバックをもらう環境をつくること

ユーザの満足度を日々探求するために、つねにフィードバックを得られる環境をつくることがなにより大切だ。その中で、サービスのことを知ってる人からは、ポジティブな声が聞こえやすい。しかしそうではなく、サービスをまったく知らない人からのシビアで客観的な声をきちんとひろうことで、ユーザにとっての価値を理解できる。そのために、正しいメソッドをもってユーザと会い、謙虚に話を聞くことが大切だ。

ときに、サービスの覆面調査などをおこない、サービス運用全般に関しても厳しい意見をもらうことがあるが、これによって組織全体のアライメントがとりやすくなる。こうして、社内における学びの機会をつくることを大切にしていきたい。

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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