【ゲスト寄稿】Makerムーブメント前夜の出来事と電子工作コンテスト2012

寄稿をしていただくのは、岩淵技術商事の岡島康憲氏。岩淵技術商事執行役員。Webサービスからネットガジェットまで様々なものを作る社会人サークルKORESSを主宰。前職のNECビッグローブではWebサービスやネットガジェットの企画開発を担当。Webサービスからネットガジェットまで、ソフトからハードまでのものづくりに関わる岡島氏も携わっている電子工作コンテストがもうすぐ開催される。「Maker」がこれからの時代にどう進んでいくか。注目していきたい。


今、様々なメディアで「Makerムーブメント」が紹介されています。3Dプリンタなどの高性能な機材がコモディティ化したことにより、多くの人が自分が望む物を自分で制作できる時代になりました。「ビットからリアル」への進出は、クリエイターだけでなく全てのスタートアップが注目すべきトピックでしょう。

しかし、何かを作り出す道具はもちろん3Dプリンタだけではありません。これまで多くの若きクリエイター達は半田ごてや旋盤、マイコンなど様々な道具や部材を使い独自の電子工作を作り出してきました。Makerムーブメント前夜にも、彼らは魅力あふれる様々なガジェットを「Make」し続けてきたのです。

電子工作コンテスト」は、そういった全てのクリエイターに、自作の電子工作作品を発表する場を提供し、表彰する事を目的としたイベントです。本記事では、3Dプリンタの衝撃が印象に残るMakerムーブメント前夜に起きていたこと、さらにその頃始まったイベント「電子工作コンテスト」について紹介します。

Makerムーブメント前夜

今起きているMakerムーブメント前夜にも、3Dプリンタ同様の衝撃を与えるいくつかの出来事がありました。その中でも大きな事例を3つ紹介します。

1.プロトタイピング用のマイコンの登場

過去、マイコンを使った電子工作はその設計やプログラミングなどの技術的なハードルが高いものでした。そうした中登場した「Arduino」は電子回路やマイコンのプログラミングに詳しくないデザイナーにも手軽にハードウェアプロトタイピングを可能にするために開発された、プロトタイピング用のマイコンボードです。

Arduinoと簡単なプログラミング言語を知っていれば、ボタンの操作や温度センサーと連動してLEDを点滅させたり、センサーからの情報をインターネットに配信することすら可能になったのです。

日本では2008年頃からクリエイターの間で使われ始め、多くのハードウェアプロトタイプやメディアアートなどに活用されました。現在Arudinoは様々な種類が販売され、同様のプロトタイピングマイコンとして「mbed」が登場するなど、手軽にマイコンを使った電子工作を始める事ができる環境が生まれています。

2.展示機会の充実

自作の電子工作を発表する場も増えました。先日、科学未来館で開催された「Maker Faire Tokyo」の全身である「Make: Tokyo Meeting」が始まったのが2008年。

2009年には電子工作コンテストも始まりました。これら以外にも、小規模なものから大規模なもの含めて様々なイベントがこの頃に始まりました。一つの会場に多くのクリエイターが集まり自慢の作品を展示し、意見交換する場の充実は、Makerコミュニティを活発にし創作意欲を刺激するには十分な結果をもたらしました。

3.ネット上での発信

ニコニコ動画やYoutubeで自分の作品を紹介する動きも一般的になりました。文章や写真では伝えきれない魅力も、動画であればその動作と合わせて余すところなく伝えることができます。

一本の動画が一晩のうちにネット上で話題となり数日後には海外のメディアに取り上げられる、そういった出来事も起きました。こういった環境はクリエイターにとって電子工作をより魅力的な自己表現の手段に発展させました。

電子工作コンテストの誕生と発展

そうした動きの中、電子工作コンテストは2009年に第一回が開催されました。Arduino以前からロボットやハードウェアを開発してきたクリエイターはもちろん、Arduinoなどの新たなツール、部品を活用するクリエイターが参加いただきました。

コンテストを通じ、木のぬくもりを感じられる、しかし中身は高度な回路が組まれている電子楽器「らいのん」や、手をかざす位置に応じてズームした写真や引いた写真を撮ることができる一風変わったデジタルカメラ「UBI-CAMERA」など、多くの優れた作品が表彰されました。

第一回から回を重ねるにつれ、応募作品や開催規模は順調に成長し、今年開催される電子工作コンテスト2012では176点の応募作品が集まり、賞の数も30を越える過去最高の規模となりました。幅広いジャンルを集める自作ハードウェアのコンテストとしては国内でも指折りの規模となっています。

この電子工作コンテストにて優秀な作品に対し様々な賞を授与する表彰式イベント「電子工作フェスティバル」は,、2012年12月9日に秋葉原に近い「3331 Arts Chiyoda」で開催されます。イベントでは表彰式の他に、優秀作品の展示やプレゼンテーション、どなたでも参加可能な電子工作ワークショップも実施いたします。

Makerムーブメントや「Maker Faire Tokyo」の成功もあり、注目も集まっております。皆様是非ご来場ください!

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