東アフリカで大きなシェアを占める中国のモバイルフォン—でも、いいことではない

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【原文】

つい先日、中国の規制面におけるソフトパワーの失敗について書いたが、今日もまたソフトパワーの失敗に関するニュースがある。といっても、政府の責任によるものではないのだが。この素晴らしいCaixin(財新)の記事は、中国のshanzhai(山寨機、意味:低価格の模造品)携帯電話メーカーが東アフリカのモバイルフォン市場でいかに大きなシェアを握っているかについて書いている。現在、東アフリカに流通している中国の携帯電話は、ほとんどすべてが偽物もしくは無名の安物なのだが、東アフリカ全域の携帯電話市場の約50%を占めている。

そういうと、アフリカが中国のブランドを支持して、中国のソフトパワーが勝っているように聞こえるが、そうではない。なぜなら、中国企業が中国国内で質の悪い携帯電話を売り歩いた時に、中国人が示した悪い反応を、アフリカ人はより顕著に示しているからだ。Caixinの記事を引用すると、

「これらの低価格で、時にはすぐに壊れてしまう携帯が、ケニア人の「中国製」に対するイメージを作り上げている。それも、悪いイメージの方が多い。さらに、安価な携帯電話をケニアに流し込んでいる中国の卸業者は中国とケニアの関係に亀裂を入れているという人もいる。」

私はずっと、中国の低価格(だが質の良い)スマートフォンにとってアフリカは理想的な市場かもしれないと思っていた。ほとんどのスマートフォンが100~300米ドルのAndroidフォンだ。だが、Xiaomi(小米)のような企業が準備を整えて市場に参入した時には、安く質の悪い模造品の携帯電話によって、アフリカの消費者は、中国のブランドは安物のくずだと認識し、市場は完全に台無しになっていたのかもしれない。

その一方で、低価格の模造品をつくるメーカーが最初にアフリカで携帯を売り歩くという事実は、中国の携帯電話市場が成熟していることを示している。中国でも、これらの粗悪な携帯電話が数年前まで全般的に飛ぶように売れていた。アフリカで携帯電話の販売を行う無名ブランド「Tecno」の営業部長Rocky Wang氏はCaixinに次のように語った。

「当社は早期に中国およびアジア市場から撤退し、アフリカに特化しています。アフリカ全土には10億の消費者がいます。本当に大きな市場です。」

だが、もちろん、中国には10億人以上の消費者がいて、それ以外のアジア諸国にもおそらく少なくとも10億人はいる。Tecnoや同種の企業がアジアを撤退してアフリカに参入した本当の理由は、偽薬を販売して街から街へと旅する行商と同じだ。つまり、商品がくずだと見破られたら、市場が枯渇し、次の市場へと移動せざるを得ないということだ。

中国の消費者は、はじめは価格が安い低価格の模造携帯を受け入れ、その後に評判の良い国内外のブランド携帯を購入し、それらの模造携帯をけなすという過程に比較的短期間で移行していった。中国市場における低価格の模造携帯の需要はここ3~5年で劇的に縮小している。

Caixinの記事からすると、多くのアフリカ人もすでにそういう行商スタイルに気付いているようで、これらの粗悪な携帯電話が同地域における中国テック産業の大使となってしまったことは残念なことだ。また、アフリカもおそらく品質に関わらず、どこかの国から携帯電話を大量に輸入したいとは思わないだろう。

もしそうすれば、国内の携帯企業の成長を抑制してしまうことになるからだ。だが、そうは言ったものも、アフリカ市場で成功し幾らかの歓迎を受けることができたかもしれない真の中国ブランドが、今、同地域に参入しようとしても、厳しい試練に直面するのではないかと思う。

第一印象は変えられないとよく言うように、中国の模造携帯メーカーは中国の携帯電話に対するアフリカ人の第一印象をかなり悪いものにしてしまった。

(興味深い関連話なのだが、中国の営業マンのなかには本当に偽薬の行商スタイルを行っている人がいるようだ。「バックッパッカー」と呼ばれる彼らは安い偽造携帯を街から街へ売り歩き、消費者の関心が無くなれば、次の街へと移動するそうだ。)

【viaTech in Asia】 @TechinAsia

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