北九州のスタートアップはものづくりの夢を見るか

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クリス・アンダーソン氏のMAKERSが出版されてからというもの、にわかにものづくりの話題が増えてきた。ものづくり系を集めたイベントやワークショップ、3Dプリンターを揃えたスペースに加え、新たにスタートアップするものも出現している。

注目を集めているのは数年来、ネット家電や電子工作といった分野で戦ってきたスタートアップ、クラウドファンディング系のサービスは作ったものの販売と開発資金の調達が同時にできることから同じテーマで語られることが多い。

また、ものづくりはウェブサービスと違い、機材の設置や在庫の置き場所としてある程度のスペースが必要になることから、コワーキングなどのスペースも改めて注目されている。

2月22日、私はあるワークショップを取材するため、北九州を訪れた。「FabIT Summit」(ファビットサミット)はその名の通り、ものづくり(Fabrication)とITの融合がテーマで第一回目の開催となる。会場に詰めかけた聴衆に向けて、第一声を上げたのは孫泰蔵氏だ。

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「”北九”は元来、八幡製鉄所という官民の力を合わせた当時のベンチャーを産んだ土地。周囲にはものすごいものづくりの腕を持った職人さん達がいらっしゃる」。

九州で生まれ育った孫泰蔵氏はここ、北九州にはものづくりの「文化的なDNA」があると続ける。「ハリウッドで映画が、シリコンバレーでウェブサービスが世界を獲ったように、”北九”は世界に誇る画期的なプロダクトが生まれる可能性があると信じている」。

しかしものづくりが身近になったとして、今の時代、大概のものはあるし、どういった物を作ればいいのだろうか。ヒントはやはりウェブサービスにある。

「3Dプリンターのような機材の出現で造形のモックアップが身近になった。資金はクラウドファンディングという方法で、プレオーダーも取れる方法が世界中に広がっている。大資本でなければ作れない、という世界観が自分達の手元に降りてきている」。

ウェブサービスの開発は「リーン」の言葉を持ち出すまでもなく身近になった。一方でサービスは過多になり、次のアイデアを求めている。「ソフトウェアとハードウェアの組み合わせが新しい世界を作る。化学反応を起こす画期的なプロダクトを作れる時代が来ている」(孫氏)。

北九州はものづくりに縁が深い。北九州市ではマイスター制度を制定しており、製鉄に関連するような溶接や機械加工などの技術を認定、これを次世代に伝承するような活動を実施している。

こういった熟練の技術者と、新しいものづくりの流れを汲む人材の交流が成功すれば、さらに他の国にない、日本ならではの展開が生まれる。

ものは従来作って売って終わり、という世界観だった。しかしウェブサービスは広告や課金、ECなど複合したビジネスモデルを構築することができる。もし、ハードウェアとウェブサービスが融合すれば、「売って終わりではない、ビジネスモデルが可能になる」(孫氏)。

ものづくりの波はこの北九州から始まるのだろうか。

追記:イベントの後半にはワークショップが開催された。

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北九州イノベーションギャラリーの工作室。旋盤とか工作機械が一杯。

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北九州が誇る職人、マイスター達。

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マイスターがアクリルを磨くとここまで透明になるそうです。

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「パズルドライブ」だそうです。

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合計、8組のみなさんが発表されました。

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