アジアにカーシェアリングを広め、車の所有コストや交通渋滞の課題解決を目指す「iCarsclub」

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【原文】

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アジアはカーシェアリングの将来有望な市場となるかもしれない。どこに住んでいるかにもよるが、車は高すぎるか、もしくは渋滞で役に立たないものになるかのどちらかだ。こうした問題から、カーシェアリングという取組みが始まった。それがiCarsclubがその業界の先駆け企業を目指す理由だ。

シンガポールのスタートアップであるiCarsclubは、彼らのソリューションに数ヶ月取り組んでいる。車の保険内容の取り決めでローンチが遅れたが、昨年12月12日に遂にサービスをローンチした。

車の共同購入(相乗り)は、世界もしくはアジアでさえも新しいことではない。今年は相乗りアプリが市場に登場し、ユーザがタクシーの料金を分担し合ったり、仕事に行くのに相乗りをする相手を探せるようなサービスを提供している。政府はこのコンセプトに協力的だ。これが大気汚染と渋滞の低減に繋がり、公益となるからだ。

シンガポールでは、CarClubWhizzcarなどのカーシェアリング企業が車を所有し、様々な車種が利用できるという会員向けのプランを提供している。会員は車を予約をして、サービスを提供する企業に属するサービス店のどれかに行けば、車を運転し始めることができる。

iCarsclubはこれらの2社と似てはいるが、同社のビジネスモデルは根本的に異なる。同社は現代のウェブ業界におけるスタートアップの遺伝子を持っていて、サービスの拡大と成長を目指している。Airbnbのことを思い出してみてほしい。あれはP2Pの不動産レンタルサイトみたいなものだが、iCarsclubはその「自動車版」というわけだ。

P2Pの自動車レンタルサイト

iCarsclubが2つの側面を持つプラットフォームであると見ることから、同社のビジネスを理解することができる。言い換えれば、同サービスは2つのグループの顧客を結びつけ、双方のニーズに互いが応え合うことのできるマーケットプレイスであるということだ。

同サービスを利用すれば、車の所有者は車を使っていない時にはそれを貸し出して副収入を得ることができ、車の利用者は高い維持費を負担しなくても車を街で走らせることができる。iCarsclubは単に、これらの人々を結びつけ、便利な方法でサービスが利用できるためのプラットフォームとインフラを提供しているだけだ。

だから、iCarsclubは実際には車を所有していないし、維持費も払う必要がない。維持費は車の所有者が負担するものだからだ。同社が唯一最高の状態に保っておかなければならないハードウェアは、キーがなくても車に乗れるシステムで、これは顧客が車に乗る前に携帯電話で車のドアを開けることができるというものだ。

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理論上では、iCarsclubは利用料を下げることができる。事業の運営費を抑えているからだ。実際、同社設立者でCEOのJamie Wang氏は、同社の利用料金は計算してみるとライバル企業よりも30~50%安いと述べている。

だが、分かりやすい利用料金の比較をすることは簡単ではない。利用料金の構造が本質的に異なるからだ。例えば、月曜日の朝にスズキの「スイフト」マニュアル車を3時間契約で両サービスから借りたとしよう。両社の料金はだいたい同じだった。iCarsclubの料金は39ドル(シンガポールドル、以下同じ)で、前払いのガソリン代が含まれている。一方、CarClubの料金は、利用者のプランにもよるが、26.6ドルか35.9ドルのどちらかになる。

これを見ると、CarClubのようが安いように見えるが、状況は複雑だ。CarClubは、利用時の料金以外に、1度のみのサービス利用料100ドルと月利用料10.7ドルをユーザに請求しているからだ。その一方で、iCarsclubは入会無料で、料金体系もはるかにシンプルなので、受け入れやすい。iCarsclubは単に、利用ごとの料金から20%の手数料をとって収益をあげている。

iCarsclubのビジネスモデル

長期的な競争でiCarsclubを優位に立たせるものは同社のビジネスモデルだ。CarClubのビジネスモデルよりもはるかに事業拡大が可能で、しかも収益性の可能性も高い。大手のCarclubは所有する車の数で事業が限られる一方で、iCarsclubは車の所有者を増やすだけで簡単に事業を拡大できる。車が空いている時に車を貸して副収入を稼ぐのを嫌がる人はいないだろう。

同スタートアップの課題は、顧客の信頼を築き、他のユーザが車を傷つけるかもしれないという懸念を減らすことだろう。iCarsclubは事故に備えて保険も提供しているが、もし借り主が何かを盗んだり、例えば、バックミラーが壊されたり、たまたま車の塗装に傷がつけられた時はどうするのだろう?

いずれにしても、iCarsclubがサービスを上手く運営すれば、来年にもシンガポールで初期段階のトラクションが得られる可能性は高い。同社は、市場にあるプロダクトよりも良いであろうサービスを市場に導入しているので、数ヶ月のうちに何百人という人がユーザ登録をすると私は思う。同サービスには、車の所有者を惹き付ける能力があるだけでなく、レンタル料を下げられる可能性もあるので、市場の拡大さえしてしまうかもしれない。

iCarsclubはJamie Wang氏とEddy Zhang氏によって設立された。両氏は、シンガポールのモバイルソーシャルネットワーキングサービスのプロバイダMozatの同僚だった。Wang氏は同社でシステム開発を行い、Zhang氏はソフトウェアのリサーチエンジニア兼中東事業の責任者だった。昨年、両氏は自分たちのスタートアップに取り組むためにMozatを退社した。

2人ともスタートアップ業界では新参者だが、Wang氏はNUS在学中にクラスメートの腰痛を解決することに取り組んで枕を販売するという事業を始めたことがある。一方、Zhang氏はFounder Instituteを最近卒業し、同氏のP2Pの車レンタルサービスのアイデアを構築した。だから、この2人の共同設立者には、スタートアップのアーリーステージに不可欠な技術的な知識があるのだ。

iCarsclubがシンガポールを越えて上手くサービス拡大ができ、グロース・ステージまで到達できるのかどうか、今後が楽しみだ。アジアのカーシェアリング市場はまだ未発達で、アジアのカーシェアリング・クラブには約15,000人ほどの会員しかしない。これは、ヨーロッパやアメリカと比べても、それぞれの地域の20%にも満たない数だ。

だが、先に挙げた、車の維持費と交通渋滞は、北京と上海(iCarsclubがいずれサービスを拡大したいと思っている都市)でも深刻な問題だが、それが通勤者にカーシェアリングを利用する動機になり、政府がカーシェアリングのような取組みを支援する要因にもなりうる。

主要な市場での需要については、気をつけなければならない別の要素となる。つまり、中流階級に仲間入りするアジア人が増えるにつれ、車の所有は1つのステータスを表す。今まさに中国がそうだ。発展途上国のアジア人が、環境もしくは実利的なコスト節約のために、車を所有するのではなく、車をシェアするという考え方に納得できるかどうかは分からない。

今は買えないが、いずれ車を所有するライフスタイルを夢見る中間層が多いこの発展途上の地で、iCarsclubが成功すれば、自らのニッチな市場が新たに誕生することになる。そして、同社にとってシンガポールは海外進出の拠点、そして防波堤の役目を果たすことになるだろう。

【via SGE.io】 @SGEio

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