アクションがなければ何も始まらない−インフィニティ・ベンチャー・パートナーズ小野氏が語る「起業家の精神」

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本企画は起業家向けスクール「MOVIDA SCHOOL」で語られた、業界キーマンの語録をお伝えするシリーズです。MOVIDA JAPANの提供でお送りします。

ベンチャーと人生は似ているかもしれない。日々の新しいチャンジから巻き起こる失敗や経験を通じて成長するか、現状に満足して時が過ぎるのを待つか。どうするかは自分の強い気持ち次第であり、強いビジョンを描けば描くほど、その先にある経験や成長も大きい。

小野裕史氏は2000年にCAモバイルを立ち上げ、日本のモバイル広告市場を大きく築いた人物だ。現在はインフィニティ・ベンチャー・パートナーズ(IVP)として日本と中国の架け橋となり、中国のベンチャーの日本進出や、日本の成功事例をもとに中国の市場に展開したい企業らの支援をしている。

また年2回のInfinity Ventures Summit(IVS)を開催し、日本のスタートアップと経営者などのネットワークをつくっている。また、100キロマラソンや南極大陸マラソンなどを走るランナーとしても有名な人物だ。

VCでもあり起業家でもある小野氏が、ベンチャー経営とマラソンの話を軸に「MOVIDA SCHOOL」で語った、ベンチャーに必要なビジョンとアクションの大切さについてまとめた。

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現状とビジョンのギャップをどう埋めるか

VCの仕事は現状を把握し、未来を読むこと。将来伸びる可能性のあるものを探し、その分野や市場について考え、どうやってのばしていけるかを探求していく。IVPは、それだけでなく場合によってはベンチャーを自分たちからつくることもある。ゼロから経営陣をつくりあげ、ビジネスモデルを構築する。現状を分析し未来の市場を開拓していく思いを持っている。

ベンチャーに必要なものはビジョンを描くこと。そして事業モデルやマーケットの状況、競合の様子、人事、財務、戦略などあらゆるものを分析していく。そこから、現状と描いたビジョンとのギャップを埋めるために必要なことを、常に考えていかなければいけない。

ビジョンを具体化するためにKPIを把握する

現状からビジョンへのギャップを埋めるためにはKPIを設定しなくてはいけない。漠然とKPIを考えようとしてもつかみにくい。そのために、現状分析からKPI設定に至るまでのシミュレーションをして考えてみる。

例えば、とあるベンチャーが日本一のラーメン屋を目指したいとする。市場調査によると日本のラーメン市場は4027億規模で店舗数は15800店。1店舗当たりの平均は2500万円。また、日本一のラーメン屋は1社で売上が140億円、店舗数は195店。これを一つのターゲットとして考え、10年で年商150億円、店舗数は300店舗を目指すことをKPIとする。

この数字をブレイクダウンしていく。150億円で300店舗、つまり店舗平均売上が5000万円。そこから客単価や年間の顧客数を設定する。客単価を800円とすると年間約62500人であり、それをデイリーで割ると1日172人の顧客を獲得する。店舗の1日の回転率などから計算すると、席数は約22席は必要かもしれない、ということが導き出される。

このように、最初の年商150億という数字から次第にブレイクダウンしていくことで、具体的な数字がそれぞれ見えてくるようになる。ビジョンから具体化へのブレイクダウンを常に考えてもらいたい。

PDCAで一番重要なのは「Do(アクション)」すること

KPIを設定しそこから数字を導き出す。しかしこうした数字もすべては机上の空論。うまくいくことはほとんどない。そのため、PDCAサイクルをまわしながら、日々改善が必要だ。

その中でも一番重要なのは「Do」すること。ラーメン屋の例だと、日々の売上を向上させるためにどうするか。やって始めて分かることがあり、その経験をもとに改善案を導きだす。例えば客単価をあげるためにメニューを追加してみたり、店員のオペレーションを改善し回転率を高められるかもしれない。具体的な数字の中で、限られたKPIをどう修正し目標へと到達するかを、改善点やプランの修正しながら進めていくことが大切だ。そのためにも、まず始めることが大事だ。

資金を使い時間を有効活用する

あらゆるベンチャーにとって資金が重要になる。ラーメン屋の例だと、1店舗をつくるのに初期コストとして1500万円かかると言われている。月間利益が50万円だと計算すると、2店舗目をだせるのに30ヶ月かかる。300店舗の目標に達するには192ヶ月もかかってしまう。これだと当初の10年に間に合わない。

しかし最初に1億5000万円があればどうなるか。最初から10店舗出店し、月間利益が500万円になる。計算すると300店舗には94ヶ月で到達し、これで目標の10年に間に合う。

こうした事業計画をもとに、資金によって時間の有効活用ができる。その支援をおこなうのがVCだ。銀行などの融資だと返済があるが、出資は返済ではなく株式をシェアする。事業リスクをともに考え、ベンチャーの新しいチャレンジを応援していくことがVCの役割だ。資金をもとに、ビジョンへの最短距離を走りだしてもらいたい。

ビジョンを強くもつことで、会社の方向性が決まる

ラーメン屋の例で説明したが、ネットのビジネスもラーメン屋と同じ考えだ。GoogleやFacebookでさえ、クリック課金広告を高めるために広告表示とクリック単価という計算式を日々おこないながら、KPIを設定しPDCAをまわしている。アプリも、どれだけDLさせどれだけコンバージョンするかという計算式をもとにしている。

これらの数字は現状分析をするためのツールであり、そのツールをうまく使うためには、強くて明確なビジョンが前提になければいけない。自分のビジョンが強固でなければ、何をしていいか分からなくなり、さまよいはじめる。その会社がどこに向かおうとしているのか。しっかりとした強いビジョンをもってもらいたい。

アクションがなければ何も始まらない

僕は個人的にマラソンをしている。南極100キロマラソンや北極マラソン、ゴビ砂漠マラソンに参加したところ、多くの仲間との出会いや、辛い経験から得られた感動があった。

けれども、最初にランニングを始めたのはほんの数年前。ダイエットしよう、と思ったのがきっかけだった。はじめは5キロが限界だった。やっていくうちに10キロ、20キロ、フルマラソンと走れる距離が伸びてきた。それに応じて、もっとチャレンジしてみようと思うようになった。最初から100キロマラソンを走ろうと思うと心が折れそうになるが、つねに目の前の小さなマイルストーンを目標にやっていくことで成長ができた。

最初から自分がマラソンを走ることを想像していたわけじゃない。けれども、小さなきっかけでもいいから何かチャレンジをすることで見えてくるものは多い。アクションがなければ、待っていても何も始まらない。

ココロの羅針盤を頼りに全力で走り続けること

自分になにができるか、どんな未来が待っているかは誰もわからない。けれども、ゴールを目指すのではなく「ココロの羅針盤」を頼りに、大きな自分の方向性だけ見失いようにすればいい。時に大失敗をするかもしれない。けれども、それは動いたから見えたものであり、動かなかったら見えなかったものかもしれない。その失敗を自分のPDCAとして改善を図れることで次への成長ステップを踏むことができる。

Appleのスティーブ・ジョブズも最初からiPhoneを作ろうと考えていたわけじゃない。けれども、事業の失敗も成功も経験し、自分と向き合い見えてきたものがあるからこそジョブスの活躍があった。同じように、まず僕らもチャレンジしてみることから始めよう。僕の言葉で表現すると「ノータイムポチリ(ノーポチ)」。思った瞬間に後先考えずに行動することを大切にしてもらいたい。

最後に、動いたことで出会うはずのなかったたくさんの仲間と出会ったり、その出会いを通じて一期一会の大切さも実感してきた。そして、いかにたくさんの人に支えられて自分が生きているのかがわかる。人生は有限で一回限りだからこそ、今日一日を懸命に生き、日々チャレンジを忘れずに行動するべきだろう。

(企画/協力:MOVIDA JAPAN)
(担当ライター:江口晋太朗)

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