法律を理解することが最初の一歩−−AZX法律事務所雨宮氏が語るスタートアップに必要な「法律のいろは」

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法律というルールを順守し、適切なビジネスモデルや利用規約を作成することが、円滑なビジネス展開に求められる。スタートアップにとって、法律は切っても切れない関係だと考えておくといい。

AZX法律事務所は、主にベンチャー企業向けのサポートに特化しており、ベンチャー企業の法律相談を積極的に展開している。

AZX法律事務所の雨宮美季氏が「MOVIDA SCHOOL」で語った、スタートアップが気をつけるべき法律のポイントについてまとめた。

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法律を事前に理解し、円滑なビジネスを展開しよう

インターネットに関連した法律は、そのほとんどが2000年以降に施行されたものばかり。事前に自らのビジネスに適用される法律を理解しておくべきだ。

新しくできた法律ばかりということは、実は、その情報の多くはウェブ上にある。六法全書を買わなくてもウェブ上にある「法令データ提供システム」を見ればほとんどの法令を検索し調べることができる。「景品表示法」や「個人情報保護法」、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」や「著作権テキスト」を、スタートアップに関連する法律についての自身のバイブルにしてもらいたい。

他者の権利を侵害しない名称を作成すべき

スタートアップのサービスが順調にユーザ数を獲得したがある日、そのサービス名称が他の商標を侵害しているとして、差し止め請求をされたケースがある。こうした状況を防ぐために、事前に自己のサービス名について商標権を取得しておくべきだ。

同一のカテゴリーにおける商標が取得されていれば商標権侵害となり、仮に商標が取得されていなくても世間に広く認知されている、もしくは著名な名前と類似の名称のサービスを使うと不正競争防止法違反が問題となる。場合によっては差止めのみならず、損害賠償の対象にもなりかねない。他者の権利を侵害していないかを調べるために特許庁のIPDLを活用する他、外観や呼び名が類似だと判断されるかどうかは専門的な知識が要求されるため、詳細については弁理士へ相談しよう。

利用規約は、運営者とユーザとの間の関係を適切にする

なぜ利用規約を作成するのか。それは、サービス運営者にとってユーザの不適切な行為やクレームに対して適切に対処する、もしくは訴訟時にサービス運営者に有利な証拠として機能するからだ。

適切に対処するためには、禁止事項を明確にすべきだ。他者の権利侵害の禁止や法令違反行為の禁止等の一般的に定めておくべき事項に加えて、サービス上でユーザがやってはいけない事項をできるだけ具体的に明記しておくことが重要だ。

禁止事項に違反した際にペナルティを定めておかないと規約の意味がない。ただし、禁止事項に該当するかの判断が難しい場合もあるため、とり得るペナルティの手段に段階を設けておき、違反の度合いや回数に応じて、最初は投稿の削除、次にサービスの利用停止、最後にアカウント削除とするなどの措置を規定しておこう。

免責事項には、サービスの内容に関して責任を追わない範囲を明確に定めておくことも大事だ。消費者契約法上の規制があるため、いかなる場合も一切の責任を追わないとする規定は無効となる場合がある。運営者が責任を負う想定を踏まえ、損害賠償の範囲を限定したり、上限を定めておこう。特に有料や課金モデルを採用しているサービスは注意が必要だ。

それらを踏まえて、利用規約は自社のサービスに合わせて細かく設定して作らなければいけない。そのために他社や競合の規約を研究し、自身でドラフトをつくることで規約に対する意識が高められる。また、弁護士に相談するときも費用が抑えられるメリットもある。

同意の意志を明確に表示させる

実際の訴訟時においては、利用規約に同意を得られたかどうかが争点の一つになる。利用規約はサービスについての運営者とユーザの間のルールを定めるツール。ユーザに利用規約を理解してもらった上で、申し込みの手続きをさせよう。

同意クリックが要求されてなかったり、目立たない場所に規約が掲載されているだけや、利用規約に従って取引がなされることが明記されていなければ不十分だ。しっかりと利用規約を読ませる仕組みを作り、同意を得よう。

上記に関しては、利用規約Night vol2で片岡玄一氏がプレゼンしたスライドも参考にしてもらいたい。

その他の投稿情報の権利帰属やM&A対策も

将来的にM&Aを実施する可能性がある場合、利用規約にサービスの譲渡を前提にした条項を入れておくとよい。サービス上に投稿された情報の帰属や使用許諾範囲を明確に定めておくことが、マネタイズを含めたその後のビジネスがスムーズに展開される。様々な状況を想定し、サービスの将来を踏まえた規約を作成してもらいたい。

例えば、M&Aを想定した条項例としては、以下のようなものを踏まえるとよい。
第●条 本規約の譲渡等
1. ユーザは、当社の書面による事前の承諾なく、利用規約上の地位又は本規約に基づく権利若しくは義務につき、第三者に対し、譲渡、移転、担保設定、その他の処分をすることはできません。
2. 当社は本サービスにかかる事業を他社に譲渡した場合には、当該事業譲渡に伴い利用契約上の地位、本規約に基づく権利及び義務並びにユーザの登録事項その他の顧客情報を当該事業譲渡の譲受人に譲渡することができるものとし、ユーザは、かかる譲渡につき本項において予め同意したものとします。なお、本項に定める事業譲渡には、通常の事業譲渡のみならず、会社分割その他事業が移転するあらゆる場合を含むものとします。

個人情報だけでなく、利用者情報を考慮

いままでのプライバシーポリシーは、個人情報の観点から事前に公表しておくべき事項を、網羅的に定めるものとされてきた。そのため、個人情報を対象にした使用目的の特定や第三者提供のルールの明示、開示・変更請求等への対応などが規定されていた。

しかし、現在のスマートフォンを使った環境においては、個人情報だけでなく通話履歴や位置情報、端末固有IDといった様々な利用者の情報を取得していることが多い。個人情報だけでなく「利用者情報」に配慮したプライバシーポリシーを作成しよう。総務省が発表した「スマートフォンプライバシーイニシアティブ」を踏まえたものを作成することが望まれる。

*参考資料
個人情報の保護に関するガイドラインについて 
個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン
・ウェブサービスでは特に経済産業省分野のガイドライン が重要
個人情報保護法に関するよくある疑問と回答
MCF「スマートフォンのアプリケーション・プライバシーポリシーに関するガイドライン」

ECにおいては支払いや広告は明確に表示すべき

インターネットでものを売る際には、特定商品取引法上の「通信販売」にあたる。この規制内容は「消費者生活安心ガイド」を確認してもらいたい。BtoCのような消費者から直接お金を頂くものは基本的に全て該当する。規制の対象や表示すべき事項の規制、前払いにおける通知義務や、申し込みの画面遷移の際に誤解させない仕組みを構築しなければならない点は、注意が必要だ。

返品に関しては、返品の可否がどちらであっても明確に規定しなければいけない。規定をしていなければ、法律の定めにより返品が認められてしまう。これはいわゆるクーリングオフとは異なり、明確に返品特約が定められていれば、その定めに従わせることができるというものだ。通信販売に関しては、ユーザの意志が抑圧される程度が低いため、ユーザはクーリングオフ制度は適用されない。返品特約が効力をもつよう、サイト上で認識しやすい表示をする必要がある。さらにECでは、最終申込みのページでも返品特約を表示する必要がある。返品特約がしっかりと明記されているか、あらためて確認しよう。

そのほか、景品表示法や薬事法のチェックや、メール広告においては「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」に注意するといった、対象物や対象サービスによって別の法律が適用される可能性もある。

ECに関する法律に関しては、ガイドライン含めて頻繁に改正されるため、最新の情報を確認することが必要だ。摘発事例を反面教師として把握しておくことも重要だ。

*参考資料
電子メール広告をすることの承諾・請求の取得等に係る 「容易に認識できるよう表示していないこと」に係るガイドライン
インターネット消費者取引にかかる広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項
不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針―不実証広告規制に関する指針
不当な価格表示についての景品表示法の考え方

契約上におけるお金とモノの流れを明確に把握する

クラウドソーシングサービスのような、製造者とユーザとの間に取引を繋ぐ場を提供している形式の場合は、契約上の形態に応じて対処が違う。モノやお金の流れが同じであっても、会社が製造者からモノを購入してユーザに販売する「売買型」(当事者型)と、取引自体は製造者とユーザがやりとりをし、会社はその取引の仲介をするだけの「仲介型」があり、それぞれに応じて責任の所在が変わってくる。

売買型では、担保責任を負うことになるが製品に関しての品質管理ができる。仲介型では、その仲介行為についての許認可が必要だ。貸金業の登録や旅行業といったそれぞれのビジネスモデルに最適な許認可を確認しよう。

売買型や仲介型以外に決済手段提供型のモデルの場合は、自社が一時的であれ受け取ったお金は製造者もしくはユーザのお金であり、人のお金を預かっている意識を持って欲しい。他者のお金を預かることについては、出資法や銀行法、資金決済法に抵触しないか、法律と照らし合わせながら対応すべきだ。

どういったビジネスモデルであれ、誰が契約者当事者で誰と誰の間の契約なのか、契約上における「モノとお金」の流れを明確に把握しておくことが大切だ。

この論点については、AZX代表の後藤勝也弁護士が登壇されたモビーダスクールレポートも参照してもらいたい。

著作権の意識を常に持とう

ウェブサービスにおける画像等の取り込みはどこからが著作権を侵害するものとして違法なのかを注意しなければいけない。日本の法律では、無断で他人の著作物をコピーすることや改変を加えることは原則として著作権法違反となる。著作権者の同意を得るか、著作権法上の使用が認められる私的複製の要件等を満たせば問題ない。しかし、著作権を侵害していなくても他社のビジネスを侵害する恐れがあるものは、不法行為として違法になる可能性がある。

先般の著作権法の改正で著作権者の同意なしに著作物を利用することの範囲は少しは広がったが、包括的なフェアユースの規定は制定されておらず、その範囲はいまだ限定的である。むしろ、判例は厳しくなる一方である。

ウェブは安易に転載ができてしまうからこそ、著作権に対する意識を常に厳しくしてもらいたい。

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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