最高のビジネスマンになれ−−ヤフー宮澤氏が語る経営者に必要な「志と勘定」

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買収によってスタートアップから企業の一員となる場合もある。その中で活躍の場を見つけることもあるだろうし、また新たなチャレンジをするのもいい。いずれにせよ一人のビジネスマンとしてどう道を歩んでいくか、そうした長期的な視点を持つことは大切だ。

かつて、モバイル広告プラットフォーム事業を展開していたシリウステクノロジーズの宮澤弦氏。2010年にヤフーに買収され、現在は最年少本部長として企業経営に携わっている。

宮澤弦氏がMOVIDA SCHOOLで語った、ビジネスマンとして持つべき意識についてまとめた。

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スタートアップ、そして買収

22歳で大学卒業と同時に、モバイルの広告プラットフォームを提供するシリウステクノロジーズを創業。位置情報からユーザの興味の場所に応じたローカル広告や、モバイル向けのSEO事業などを展開していた。モバイルを中心に広告事業をしていたが、大きなメディアと共に歩まないと広告ビジネスの発展は難しい。そこで、マーケットシェアを取ることにこだわり、大手メディア企業へのバイアウトを考えて事業運営を進めた。そして2010年8月、シリウステクノロジーズはヤフーに買収されることになる。

現在は、マーケティングソリューションカンパニーのNo.2である事業推進本部長に就任し、日々を過ごしている。また、個人としてもエンジェル投資家としていくつかのベンチャーに投資をおこなっている。

マーケットシェアで1位を目指す

シリウステクノロジーズ時代から意識したのは、マーケットにおけるシェア1位を狙うことだ。シェアを取れば、マーケットの成長と共に自社も伸びていく。また、大手企業の買い手も現れやすい。

インターネット事業全般に共通することとして、シェアは最も重要な要素だ。事業を発展させるためにはマーケットが伸びる余地があるか、もしくはシェアがあるかどうかのいずれかが必要。中でもシェアの1位と2位では極端に違い、1位のサービスには人も金もモノも集まる。それくらい大きな差が生まれてくる。

スタートアップが常に意識すべきは、マーケットの可能性とシェア1位の重要性だと認識してほしい。

マーケットの風を読む

マーケットが伸びている時は大きな突風が吹く。しかしマーケットが伸びない、もしくはそもそもマーケットがない状態はとても辛い。今でこそスマートフォンの登場によって成長しているモバイルだが、ベンチャー時代、特にロケーションサービスは無風の状態であり、とても辛かった。

しかし、モバイルSEO事業は大きな需要が見込め、需要に供給が追いつけないくらいの突風だった。ベンチャーをやっていたら突風も無風も、ちょっとしたそよ風な時も突然やってくる。どんなに考え尽くしたサービスだとしても、時代のニーズにタイムリーに当てるのは難しい。だからこそマーケットの風を読んで、チャンスの時は一気に攻め、風がない時は耐えられるような姿勢をとれる意識を持とう。

いかにチャンスの打席に立つか

ビジネスチャンスを掴むためには、いかにしてチャンスの打席に立てるかだ。私たちがいるIT業界全般はスピードも早く、チャンスが巡ってくる機会も多い。ここまで多種多様なチャンスが巡ってくる業界はない。ここぞというチャンスで打席に立ち、バットを振っていくことが大事だ。空振っても、もう一度打席に立てば次はヒットやホームランが出るかもしれない。

大事なのはいかに多くの打席に立つか。それだけのチャンスを掴む努力をすることだ。

志の高さと商売の勘定を意識する

周囲から「次は何をやるの?」とよく聞かれるが、今はまだヤフーで修行の身だと感じている。それは井上元社長や現在の宮坂社長、孫正義氏らと間近で接した時に、経営者の凄みをヒシヒシと感じるからだ。すでに大企業として成功しているにも関わらず、未だに少しでも高みへ到達することを貪欲に追求する飽くなき向上心や、現状に満足していないその姿勢に感銘を受けているからだ。

自分がスタートアップをやっていた時は、志だけでどうにかなると思っていたが、実際はそうではない。志と勘定の両方が必要で、綺麗事だけでは何もできない。大山倍達先生の言葉から引用した孫氏の言葉に「力なき志は無力。志なき力は暴力」がある。自身の志は何か、そのために必要なものは何か。志と実行力がないと無力だと教わった。まさにそれは20代の自分へと向けられた言葉であり、自分はまだ力なき志だと感じた。

大企業に入りベンチャーとの大きな差に驚いたのは、損益計算書(PL)の規模と組織力の強さだ。ヤフーに入り二千億円規模のPLを分析するようになった。また組織で成果を上げるための人事制度の緻密さなど、まさにベンチャーと大企業の明確な違いを実感している。個人や小規模な組織ではなく、大組織として会社を動かす重要さを今は学んでいる。

ベンチャー起業家から大企業のマネージメントに入り、もっと大きな視野で経営を見るようになった。志とそれに必要な力を持つことが、これからの新しいチャレンジの1つの成長になっている。こうした志と勘定の意識は、スタートアップの人もぜひ持ってもらいたい。

KPIは前週比で比較

スタートアップのPLは規模は大きくなく、自分たち自身で稼いでる意識を持ちやすい。しかし、大企業になると桁が違いすぎて稼いでいる意識を持ちにくい。そうした中で、数字をベースに議論し結果を出すことが求められる。そのため、大企業は対前年比をベースに細かく分析していく経営管理プロセスが大事。

しかしスタートアップは対前年比は役に立たない。シリコンバレーを通じて学んだものは、スタートアップは対前週比で比較することだ。シリコンバレーは多様な国の人たちが集まるからこそ、統一した考えを持ちにくい。そのため、UIやUXなどの検証はまず実施してみて、そこから対前週比でどれだけ数字が変化したかを徹底的に分析する。

ウェブ中心な世界では、数字で議論することは効果的だ。主観だけではない客観的な軸を通じて経営していく。そのためにも、対前週比で比較しながら日々成長を続けるための施策を打とう。

創業メンバーにこだわる

モノを売る業界と違い、IT業界は自身の頭で考えたモノがそのまま商売になる。そのため、優秀な人材と結果が求められる。だからこそ、創業メンバーは自分に無い能力を持ち、良いアウトプットを出せるメンバー構成を組んでほしい。

良いアウトプットは良いサービスへとつながる。良いサービスが生まれると事業は成長しやすいため、人材への投資は惜しんではいけない。100人の平凡なエンジニアよりも、1人の優秀なエンジニアを集めよう。

会社として1日の大半を過ごすからこそ、優秀でありかつ一緒にいれる人間であるかどうか。1つの判断基準として、一緒に旅行に行けるかどうかだ。一緒にいて仕事ができ、目の前の問題から逃げず困難や課題に強い優秀な人間をぜひ集めてもらいたい。

20代のベンチャーは優秀なビジネスマンとして成長する

ベンチャーは自分自身で経営に関する全てを手がける。これは普通の企業に入っていたら経験できない。特に大企業はセグメント化されており、営業からマーケ、広報などのビジネスに関する全ては経験できない。つまり、ベンチャーの経験はビジネスマンとしてバランスの良い人材に育つ。20代の経験は、30代になった時に大いに活きる。20代で苦労した内容を振り返ることで実感が湧くことは多い。

例え今のスタートアップが頓挫しても、ビジネスマンとして優秀であればいい。再度チャンスが巡ってくるその時に、打席に立って挑戦すれば良い。どんな経験も無駄にはならない。ビジネスマンとして優秀であり続けることが大事だ。自身に力をつけ、どんな状況でもここぞという瞬間に力を発揮できる、最高のビジネスマンになってほしい。

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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