クローズドSNS「Path」はなぜインドネシアで大きな人気があるのか?

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【原文】

path top

Pathはテック業界の多くの人が頭をかしげているソーシャルネットワークだ。見たところ、Path自身以外に同サービス、つまりモバイル機器専用のFacebook風のサービスのことを理解している人はほとんどいない。これまでにも、Pathの存在についての疑問はあった。

実質、アメリカで同サービスを利用している人はいない。同サービスには約600万人のユーザがいるが、その約半数はアメリカ以外の国に住んでいる。アメリカ発のその他有名なソーシャルネットワークサービスと比べると、同サービスのユーザ数はかなり少ないのに、どうしてそれがジャカルタでそんなに人気なのだろう?PathがインドネシアのAndroid、iOSユーザの多くに利用されているその理由とは何なのだろうか?

(編者注:この記事は、パーソナル/グループメッセージ機能やスタンプ、アプリ内ストアを追加したPath 3.0がリリースされる前に書かれている。)

私たちは昨年6月にPathに関する記事を書いている。それは、Pathが数々の新しい対応言語を導入した時で、私たちはPathのユーザが同サービスを好きなのは、Pathがモバイルでシンプル、そしてパーソナルだからだと指摘した。限られた数の人とだけシェアができるという特徴に、インドネシアの多くのPathユーザが共感した。だが、そのことには多くのアメリカ人が魅力を感じていない。なぜなら、アメリカ人はそれをFacebookで行っているからだ。

スタンフォード大学の大学院でマネージメントを教え、心理学と消費者行動の専門家でもあるNir Eyal氏に話を聞くと、なぜPathが利用されているのか理解できないと語る。同アプリはシリコンバレー以外では耳にしないサービスで、同サービスの名前を聞いたとしても、TwitterやYelp、Foursquareなどの似たようなサービスと比べると、テック業界のなかではそんなに人気がない。

path interface

Eyal氏によると、Facebookは乱用され始め、プライバシーがなおざりにされていることで、Facebook上のユーザ行為に影響が及びつつあるが、同サービスはすでに限られたサークル内でシェアするというニーズを満たしているとのこと。

もっとも、すでにFacebookを利用している人は同サービスの環境に満足していて、同ネットワーク上でつながりを築いているために、他のサービスに切り替えようとは思わないだろう。

Pathがインドネシアで広く受け入れられている大きな理由は、Facebookが大いに乱用されているということのようだ。アメリカの多くの人にとって、Facebookは、ユーザと友人そして家族親戚との親密な関係を維持するツールとなっている。

ユーザはFacebook上にメッセージを書き込み、思ったことや発見したことを投稿し、ニュースや写真を共有したり、一緒にゲームで遊ぶこともあれば、会話をすることもある。だから、一般的には、同ネットワークを使って、身近な友人や家族親戚と連絡を取り合うことに活用されている。

インドネシアでは、Facebookはマーケットプレイスになっている。そう、Facebookはソーシャルネットワークなのだが、かなり乱用されており、ユーザは同ネットワーク上のつながりを上手く活用し、パーソナルページを使ってプロダクトやサービスを宣伝・販売している。インドネシア人の多くがそれぞれのFacebookページを使って、販売する商品の写真をアップロードしたり、新しいアイテムの販売開始を発表するために、すべての人や犬にタグ付けをしている。さらには、ゲームへの招待もある。こういう不快な招待が来た時にはぞっとする。

インドネシアのFacebookユーザのほとんどにとって、同サービスはユーザ数が最も多いソーシャルネットワークであるかもしれないが、その稼働率は疑わしい。下降傾向でなければ、おそらく停滞状態だろう。ユーザは、数多くの異なる理由で他のアプリやネットワークに乗り移っている。そこで、Facebookは最近、インドネシアユーザの活用度を高めるための新たなスタッフをシンガポールオフィスで募集し始めた。

path

Facebookはインドネシアのユーザの間で輝きを失いつつある。そして、Pathは、ユーザが身近な友人や家族、親戚ともっと自由にシェアできるというFacebookの提供する親密なつながりとプライベートな環境に取って代わるには絶好のタイミングで登場した。友人150人限定というリミットは、できるだけ多くの人とつながっていたいと思うインドネシア人にとっては数が少なすぎると思われているようだが、彼らがこの制限の重要性に気付けば、Pathは広く利用されるだろう。

ジャカルタにあるコワーキングスペースCommaの共同設立者Ario Pratomo氏は、同氏がPathを気に入っている理由はこの150人という制限があることだと語った。同氏は、Path上に自身の結婚式の写真や新婚生活に関する話だけでなく、日常生活や旅行についての話もアップデートしている。

UXデザイナーでコンサルタントのインドネシア人Evan Hindra氏(カナダ在住)は、Pathは裕福なインドネシア人が利用していて、観察するには素晴らしいツールなので、同サービスを大変気に入っていると言う。

「控えめに言っても、彼らは興味深い人々です。彼らは私が知っている他のグループとは全く異なる行動をします。裕福な家庭の子供は、自分たちの生活をPathで公開しています。彼らのソーシャルプラットフォームは絶え間なく変化していますが、推測するのは簡単です。要するに、Pathは私が行き詰ったと感じる時に私自身を奮い立たせてくれます。」

Pathをよく利用する最大の理由として、多くの人がプライバシーを挙げている。それに対する明らかな反応は、Facebook上ではもっと責任を持ってシェアし、同サービスのプライバシー機能をもっと理解するよう呼びかけることだが、Pathにはそういうオプションがない。シェアするか、しないかのどちらかだ。シェアすれば、Path上の友達みんながシェアしたものを見ることができる。身近な友達が誰かはユーザが決めることで、150人の枠をすべて埋める必要もない。

おそらく「身近な」というのは適切な言葉ではないだろう。Path上で直接つながっている人たちというのは、自分がこの人たちなら何かをシェアしても構わないと感じている人たちだ。彼らは客観的で、自分が経験することを理解し、いつも一緒に過ごすというわけではないが、とてもくつろいだ気分にしてくれる。

Pathは順風満帆に進んでいるわけではない。昨年は、サービス中断、エラーに悩まされる日々、未解決のバグなど、運営上の問題を数多く経験している。週末にPathを利用するのは最悪のようで、他の曜日と比べて、アクセスできないことが頻繁に起こり、アクセスできない時間がはるかに長くなる傾向にある。アップデートのストリームを読み込むのを拒否したり、アップデートの投稿も拒否することがある。週や月単位ではなく、数日前までしかスクロールできないこともある。最近導入したサーチ機能も時々使えないことがある。

これらの問題があるにもかかわらず、Pathは利用され続けている。Pathは「明らかな欠点のあるゴージャスなガールフレンドみたいなもの」と、TeknoJurnalの共同設立者Putra Setia Utama氏は言う。Pathは確かにゴージャスだ。綿密にデザインされ、自分がやって欲しいことを正確に行い、素晴らしいパーソナルな体験を提供してくれる。ほぼ完璧なソーシャルネットワークだ ——Pathがプライベートメッセージをしさえすればの話だが。

【via DailySocial】 @DailySocial

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