スマホから出る電磁波の量を検出するアプリTawkonが日本版をローンチ

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CC BY-NC-SA 2.0:
via Flickr by Tricia Wang 王圣捷 

携帯電話から出る電磁波が、人間の脳に悪い影響を与えるという話には、昔から枚挙にいとまがない。「ハンドセットを耳に当てて電話するのは、脳ミソの横に電子レンジを置くようなもの」という表現も飛び交ったことがあった。ただ、実際のところ、アナログ携帯電話の時代に比べれば、デジタル化によって電波の強度は格段に小さなものになったし、筆者も普段は、携帯電話の電磁波のことなど、全く忘れて生活している。

2009年、イスラエルのテルアビブで、 Tawkon(トークオン)というスタートアップがローンチした。彼らが提供するアプリは、独自のアルゴリズムにより、携帯電話から発せられる比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate)を予測し、浴びた電磁波の量に応じて、ユーザに警告を発する。同じスマホであっても世代が違えばチップが異なるし、基地局に近いところから電話するのと遠いところから電話するのでは、携帯電話から出る電波の強さも異なってくる。それらを総合的に判断して、ユーザに注意を促し、スピーカーホンやヘッドホンを使うなど、スマホを耳から離して電話することを求めるのだ。何回電話したか、どの程度の電磁波を浴びたか等のデータが、レポートとして週に一度メールが送られてくる。

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その Tawkon が日本版のアプリをリリースした。英語、ロシア語、ヒンディ語に続いて、4つ目の言語対応となる。Tawkon は国外では無料で提供されているが、日本の Google Play アプリストアでは300円で提供されている。価格が異なる理由について、数ヶ月前、Tawkon の CEO Gil Friedlander から日本市場への参入について相談を受けたとき、彼はこう語っていた。

日本という市場は、他の国と比べて特異だ。他の国の市場については、イスラエルから遠隔でアプローチすることが可能だが、日本はローカルパートナー [1] を得て、レベニューシェアで共に仕事しようと考えている。

レベニューシェアを実現するには原資が必要なので、日本市場向けには300円という料金設定になったのだろう。Gil は日本市場でのローンチにあたり、プレスリリースの中で次のように抱負を述べている。

日本にはガイガーカウンターのような、身の回りの電磁波を測定できる携帯電話は多く存在するのに、携帯電話自体から発せられる電磁波を測定できる携帯電話が存在しない。我々は電話ユーザに、電話から発せられる電磁波(非電離放射線)について関心を持ってもらいたいと思っている。電磁波の放射をモニターし、ユーザに電話の掛け方の習慣を(スピーカーホンやヘッドホンを使うように)変えてもらうのだ。

Tawkon はローンチからの1年で50万コールの電話発呼をモニターし、のべ50万分に上る電磁波被爆を防いだとしている。

Tawkon はローンチ当初 iPhone 用アプリとしての展開を試みたが、Apple から不承認アプリと認定されてしまい、結局、それ以来、Android 以外のプラットフォームでのアプリリリースには至っていない。本来なら、スマホのOSにネイティヴに備わっていてもよい機能に思える反面、電磁波の問題は、デバイスメーカーやモバイルキャリアにとって、政治的にセンシティヴな要素を含んでいるのかもしれない。(…ということは、かつての Apple の判断と同様に、スゴ特コンテンツやauスマートパスのアプリ・ラインナップに含まれる可能性も高くないのかもしれない。)

たまたま別件で、Tawkon に投資しているVCと連絡をとる機会があったので、筆者は彼らに進言しておいた。

日本人は健康意識が高い民族だが、電磁波や放射線について言えば、ここ数年は、〝福島第一〟という大きな問題に直面しており、人々の注意はそちらを向いている。日本の消費者から一定のユーザベースを獲得するには、Tawkon が提供するソリューションに、相応の工夫が必要かもしれない。


  1. 日本では、CP&C Partners 社がマーケティングを担当していると推測される。ローカリゼーションにあたっては、別の日本のスタートアップが関与しているとの情報を得ているが、未確認であるため、本稿では具体名に言及しない。 ↩

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