「すすきのには行かず深夜まで話してました」ーーグリー、サイバーエージェント、ミクシィが語る強い経営チームの作り方 #IVS

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これは、札幌で開催されている Infinity Ventures Summit 2013 の取材の一部である。このイベントについて、さらなるレポートはこのリンクから読むことができる。


創業期のスタートアップで経営陣の仲が悪い、コロコロ変わる、あの人何やってるの、という話題はたまに耳にする。人との出会いは理屈ではない、とはいいながらも経験でより良くすることも出来る。

札幌で開催されているIVSのセッションで国内主要プラットフォーム三社の経営陣が語った経営現場の話題は、普段まとめて聞けるような内容ではないだけに、比較も含めて興味深いものだった。

セッションに参加したのはグリー代表取締役社長の田中良和氏と同社取締役副社長の山岸広太郎氏、サイバーエージェント取締役副社長の日高祐介氏と同じく取締役の曽山哲人氏、そしてミクシィ取締役の荻野泰弘氏と同社執行役員の川崎祐一氏。プロノバ代表取締役の岡島悦子氏がモデレーターを務めた。

社外取締役はオススメーーグリーの経営陣

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成長が続くグリーは経営陣がほとんど変わっていない。

「答えのない世界。創業者で会社を大きくして経営している経営者もいる。楽天にいたこともあって、三木谷さんを見ていたので自分もそうなればと思うことはある。成長しているのであれば同じ人でもいいのではないか。ただ創業者で大株主で、ということになると自分の思い通りの取締役会になってしまう」(田中氏)。

創業社長であればよくある話だ。グリーではこの課題に対して社外取締役の招聘を進める。

「ここ数年で拡大しているので、会社にも色々な問題が起きてくるのだが、65歳ぐらいでグローバルに製造業をやっていた経験者を社外役員として招聘したことで、普遍的に経営に必要なことを聞いて貰っていますね」(山岸氏)。

田中氏は経験を積んだ社外取締役を「自分を律する鏡のような存在」と話していた。また今後、役員の変更があるのかということについては「会社規模が大きくなれば追加すればいいんじゃないか」と拡大の可能性にも言及していた。

CA8で役員の新陳代謝を図るーーサイバーエージェントの経営陣

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グリーが経営陣を安定させている一方、サイバーエージェントは全く違う手法を取っている。二年毎に役員を変更させる「CA8制度」ができた背景には、社員から消えなかった「上が詰まっている」という不安があったと明かす。

「CA8は藤田が一任で決めている。人事制度や福利厚生はオリジナルで決めていこうと話していた。ワークするものは残っていくし、CA8はマイナス面もあるけれど、プラスが圧倒している」(日高氏)。

また若手の登用についても「藤田や日高は23歳で創業している。その年齢から彼ら以上の経験を積ませないといけない」(曽山氏)と積極的で、新卒入社組の社長は40人もいるのだそうだ。「会社も違うのでどういう手段がいい、というのはない。形にして正解にした人たちがかっこいい」(日高氏)というのが正しいのだろう。

また、会場からCA8に外部からの登用があるのか、という面白い質問があった。

これに対して日高氏は「企業文化を理解して貰える状態であれば、買収してタレントにはいってもらっても上手くいくと思っている。ただ、買収をやってこなかったのはそういうチャンスがなかったから」と、自分たちで育成する手法に慣れているので、それが続くだろうと話していた。

成長基調が続いていれば、特にドラスティックな方法はいらないということなのだろう。

踊り場を迎えた場合の経営刷新とはーーミクシィの経営陣

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さて、ミクシィにとってはタイムリーな話題だ。冒頭に川崎氏は「スーツで来ました」と挨拶。会場の笑いをさそいつつ、経営刷新の裏で荻野氏は「前者の二社と違い成長は踊り場を迎えている。こうなるとどうなるか。社内でいわゆる足の引っ張り合いとかそういうことが起こる」と社内の雰囲気が低調気味だったことを明かす。

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ミクシィ執行役員の川崎祐一氏

「2010年の頭に買収されて入った。丁度踊り場を迎える頃。上ばっかりを見ていた人間としては、独特な雰囲気を持っていた。外向きにファイティングポーズを取って、世界を目指すとかそういう会話が少なかった」(荻野氏)。

また会場に集まる多くの起業家に向かって体験を共有する。

「こういう時期になったら考えてもらいたい。冷たい河を渡ろう、という過渡期にはトップが本気で変わらないと現場はその覚悟の浅さを見抜く。でもたった数人が変われば組織は変わるんだということを学んだ」(荻野氏)。

2011年に朝倉祐介氏、2012年に川崎氏を買収で迎え入れたことでボードメンバーは起業家だらけになる。「通帳で飛び起きた経験があるか、それって大事なことだと思う」(荻野氏)と、ビジネス、特に利益にこだわり抜く陣容になったと話していた。

役員同士はどうコミュニケーションすべきか

サイバーエージェントは週に1回、木曜日に2時間ほどお昼を挟んで8人が集まって雑談から始まって決議と議論するものをその流れえ決めていく。三カ月に1回は1泊の合宿で中長期の事項や役員会で後回しにしている先送り事項を決めているそうだ。

また、グリーは法的な役員会は毎月1回実施、事業責任者だけ数人集めて別の会議を持って、事業に必要な決定はそこでコミュニケーションしているという。

サイバーエージェントとグリーを足して2で割ったような内容というのがミクシィだ。

「法的な取締役会は月に1回、火曜日、木曜日に決議するためだけの会議がある。月・水・金には役員5名で10時前に集まって雑談しています。こういうところで何を成し遂げたいのか、価値観の共有を行っている」(荻野氏)。

ちなみに札幌に来ても「すすきのにはいかず12時まで話してました」というミクシィのボードメンバーは、本当に一心同体になっているらしい。会場から(登壇者全員に)役員はいつ辞めるべきかという質問が投げかけられていたのだが、明確に数字を挙げた荻野氏の回答が印象的だった。

「ベンチャーやってる人は近い考えを持っていると思うが、10年生きながらえるというのはあり得ない。3年後に成長が期待できない程度だったらひとつのタイミングかもしれない」(荻野氏)。

ミクシィの印象は本当に変わった。

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