スマデバとクラウドで変わる教育サービスーー国内で教育市場を攻める4つのスタートアップの挑戦

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2013.5.30

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Photo by Sean MacEntee

国内の教育ビジネスといえば、学習塾、資格取得、英会話など、ややネットサービスからは遠い存在だった。市場規模も1兆円(※)ほどの数字が聞こえてくるし、プレーヤーもベネッセやECC、公文など大きな名前が並ぶ。

一方で北米の教育ネット市場を見渡すとやはりソーシャルネットワークが強く、2008年創業のEdmodoが「教育界のfacebook」として1000万ユーザーを獲得し、大きな存在感を示しているといわれる。

ところで先月開催されたカンファレンスであるセッションに注目が集まっていた。

ソーシャルゲームのノウハウは使えるーー次に狙うは「教育アプリ」マーケット #bdash

北米がソーシャルネットワークという文脈でEdmodoを生み出したように、日本はモバイル、ゲームからアプリが生まれていると読めるかもしれない。しかし一方でクーポンやゲームの時のような、多くのプレーヤーがこの市場を目指しているという話も聞こえてこない。

ウェブ系教育マーケットはビジネスになるのかどうか。本稿では日本国内の教育系サービス(知育、ゲーム、生涯教育など)をいくつかピックアップし、この市場の一面を伝えてみたいと思う。

広がる教育系サービス、カテゴリは広大

まず、SD JapanのDATAに登録されている教育系サービスを眺めてみよう。カテゴリはschooのような社会人教育、スマートエデュケーションは幼児向けの知育だし、英語教育ではLang-8もこのカテゴリに近いだろう。

ストリートアカデミーCyta.jpのような学びのマーケットプレースもあるし、manaboは家庭教師のリプレイスになるかもしれない。分類すると次のような感じだろうか。

総合教育:従来Eラーニングと呼ばれていた者がクラウドへ移行:Schoo
語学教育:SNSやスカイプによる語学教育関連:スカイプ英会話、Lang-8
知育関連:スマートデバイスの登場で変わる知育教育関連:スマートエデュケーション

家庭教師:クラウドとスマートデバイスによる場所を選ばない個人指導:manabo
教育マーケットプレース:オンラインマッチングによる教育マーケットプレース:Cyta.jp

上の三つは教育テーマ、下の二つはマッチング手法による分類だ。様々な切り口があるが、注意すべきなのはニッチに寄り過ぎないということだろう。

Eラーニングは変わるーーschooがスタートアップできた理由

schoo(スクー)は2011年の暮れに立上がったオンラインスクール。従来Eラーニングと呼ばれていたカテゴリだ。スクー代表取締役社長の森健志郎氏によると、近年の環境変化でこのEラーニングに再来の兆しが起こっているのだという。

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schooを成立させるインフラと国内最適化

ひとつ目はいわゆるインフラの進化だ。クラウドや回線の高速化はスタートアップにもリアルタイムストリーミングの教室を開校できるだけの環境を用意してくれた。そしてそこにもうひとつ、森氏が指摘する「日本の教育環境への最適化」という要因が重なれば、新しいモデルができるのだという。

「昔、Eラーニングと呼ばれていたモデルは北米のコピーでした。広大な北米には元々『距離』の問題がある。教育の質もバラバラで、廉価に受講ができるEラーニングには需要があったんです。一方で日本で義務教育を受けられないような人はアメリカに比べて圧倒的に少ない。だからコンテンツをアップするだけでは商売にならなかった」(森氏)。

森氏の考えは、距離や教育を受けられないという北米の課題ではなく、ソーシャルが発達した今だからこそできる「みんなで熱狂する面白い学習体験」の提供にこそチャンスがあるというものだ。

「ハイエンドの学びではなく、ちょっとした身近な内容の学びをB2C市場で展開しています。受講者のコミュニケーションが活発で、授業あたり平均で1,000人が見ているという状況になりました」(森氏)。

ビジネスは月謝だけではない

また、ビジネスについても現在のような課金に加えて面白いアイデアを聞いた。コマースだ。学習というのは自己投資で単価も高くなる傾向がある。さらにユーザーは受講テーマでターゲティングされている状態でもあるので、関連するコンテンツや書籍、サービスなどを提示しやすい。現在もAmazonなどから関連書籍を表示するなどテストを進めているのだそうだ。

スマートデバイスの普及で浮かび上がった「知育」大陸

知育関連は今がチャンス。ここ一年ぐらいの結果で市場の可能性は感じているーー幼児向けの知育(幼児向け教育)アプリケーションを展開するスマートエデュケーション経営陣はこう口を揃える。

2011年にスタートアップした彼らが提供する知育アプリのDL数は350万、月間のアクティブユーザーは80万人で、「2012年の暮れ頃に月次で数百万円単位で売上がついて市場の可能性を感じた。現在はそこからさらに伸びて倍以上の成長をしている」(同社取締役の日下部祐介氏)と新たな大陸がそこにはあると話す。ビジネスの中心はアプリ内で追加のコンテンツを購入する課金モデルだ。

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この成功の兆しの裏にあるのはスマートデバイスへの注力だ。幼児でも使えるiPadなどのスマートデバイスの普及はそのハードルをクリアしてくれる。さらに競合に関しても従来からある学研やベネッセといったプレーヤーが存在するものの、ここまでスマートデバイスに最適化しているのものは少ない。

また、規制緩和で閉鎖的だった幼児教育現場が変わり、株式会社化された幼稚園などに実験的な導入が進んでいるという状況など、まだ未開拓の市場で「今」スタートアップする理由が揃いつつあることを教えてくれた。

ネットの得意技「マッチング」が示した個人指導の未来

冒頭で語られた北米の教育系アプリのトレンドのひとつに「個人教育の最適化」というものがあった。家庭教師や個人レッスンは決して効率の良い方法ではないが、そのマッチングを効率化することでそのひとつの解となりうる。

マッチングといえばマーケットプレースだ。この分野にはCyta.jpを筆頭に、ストリートアカデミーやスカイプ英会話のマーケットプレースなど、いくつかのプレーヤーが出てきている。

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以前、Cyta.jpを運営するコーチ・ユナイテッドの有安伸宏氏に話を聞いたのだが、このビジネスの裏側は非常に手がかかっている。教える側の教師の質を担保しなければならないし、教室など物理的なスペースも必要になる。彼らは表ではなく、管理システムによって徹底的に効率化してこのビジネスを成立させていた。

国内で教育系ソーシャルネットワークは可能性があるのか

冒頭にも書いた通り、北米では学びのfacebook「Edmodo」がこの分野で影響力を示している。一方国内で教育に特化しているソーシャルネットワークで絶大といえるポジションを獲得しているものはない。ただ、語学系Lang-8はその可能性を徐々に示しつつある。

問題はビジネスモデルだ。バカみたいにスケールすればマーケティングという手法もあるかもしれないが、Lang-8は開始して既に数年経過して順調に成長しているものの、爆発にまでは至っていない。今後の可能性としてスマートフォン対応があるが、ユーザー数が数十万、数百万人レベルであれば地に足の着いたビジネスモデル(彼らはチューター課金などのモデルを考えていた)が重要になってくるだろう。

おしまいに

ーー正直、この記事は大変骨が折れた。教育系スタートアップはそれぞれ微妙に手法や教育テーマが違っている。それだけにビジネスモデルもアプリ販売や月謝課金、マーケティングなどバラバラだ。市場自体は大きいものの、各カテゴリ、プレーヤーが分散しすぎてそれぞれがまだ独自の試行錯誤をしている、という印象はある。

逆にいえば、これらのフロンティアたちがビジネスの可能性を示した瞬間、そこには多くの競合がやってくることになるのではないだろうか。引き続き主要プレーヤーの動向を追いかけたい。

※一橋総合研究所 業界地図 最新ダイジェスト2012年度版参照

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