スパム電話撃退アプリ「Whoscall(だれ電)」のiPhone版が、日本・アメリカ・台湾・香港でリリース

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最近悩ましいことがある。アベノミクスの副次的効果かもしれないが、週末になると、ここぞとばかりに、いろんなセールスの電話がかかってくるのだ。非通知着信を拒否にし、当該の発信元電話番号をケータイ上でブロック設定することで、同じ番号からは二度目以降の電話が着信しなくなる。

しかし、どうやらこの手のブロック設定は、国内に居る間しか機能しないらしい。ひとたび出張で海外に出ると、このセールス電話はローミングされてかかってくる。もちろん、電話してくるテレアポさんは、私が違うタイムゾーンに居ることなど知る由もなく、私は異国の地で、真夜中にもかかわらず、不要不急の電話で叩き起こされることになる。その電話を取った瞬間、数百円のローミング着信料を電話会社に支払うことになるが、そんな不満を伝えてみても、架電してきたテレアポさんに事情を速やかに理解してもらえることは稀である。

国内に居ようが海外に居ようが、期待しない相手からの電話の着信はスパム以外の何者でもない。これを解決するアプリが iPhone 向けにリリースされた。台湾の Gogolook(走著瞧股份有限公司)が提供する Whoscall(日本語名:だれ電) だ。Whoscall は電話がかかってくると、通知された電話番号をもとに、Gogolook のデータベースに照会し、スパム電話を発信されやすい番号かどうかを特定し、そうであればブロックしてくれる。現在、Gogolook のデータベースには台湾のみならず、世界中の6億件の電話番号が登録されており、電話番号から発信元が誰かを逆引きできるようになっている。メールのスパム探知のしくみを、電話の世界に応用したソリューションだ。

私が「だれ電」のことを初めて知ったのは、2012年6月に台湾を訪れたときのことで、CEO の郭建甫(Jeff Kuo)と CFO の Jackie Cheng が私のところへやってきて、熱心に説明してくれたのを覚えている。Android 版は昨年リリースされており、ダウンロード数は400万件に及ぶ。それから1年以上経過して iPhone 版リリースと至った背景には、おそらく、このアプリを iOS 上ではバックグラウンドに常駐させ、電話着信とユーザ操作の間にアプリを介在させることが、Android に比べて技術的に難しかったのではないかと推測している。

以下は、CEO の郭氏のコメントだ。

信頼できる連絡先ネットワークを作るというビジョンの中で、iPhone 版のリリースは我々にとって重要なマイルストーンでした。コミュニケーションの原点に立ち返って、よくわからない人からの電話を受けずに済み、重要な電話だけに集中できる環境をユーザに提供したいと考えています。

「だれ電」はこれまでに、2012年アジア・モバイルアプリ・コンペティション金賞、Google 台湾ベスト・イノベーション・アワードを受賞している。「だれ電」の定価は $4.99(日本円では450円に設定)だが、昨日のリリースから6月9日までの3日間に限り、$0.99(日本円では85円に設定)で販売されている。今後は、韓国やサウジアラビアなどでもサービスを提供する計画だ。

なお、この分野には、Android / iOS の両方の環境用に、Number GuruTrueCaller などの複数の競合アプリが存在する。今後、どのアプリが最大のマーケット・シェアを取るかは、データベースの情報量・更新頻度・精度、ユーザ・インターフェースの善し悪しに依存するだろう。

余談ながら、世の中というのは常にイタチごっこなので、このようなツールが提供される以上、電話をかける側にも新たなソリューションが提供されることになるだろう。テレマーケティングが極端にオプトイン志向にシフトするとか、電話番号のブロックをかいくぐるために、発信者番号を毎度ランダムに変えられるサービスを電話会社や VNO が提供するなど。スパム電話は迷惑だが、業界や技術トレンドがどちらの方向に進むのかは興味津々だ。

「だれ電」を開発した Gogolook はこれまでにエンジェル投資家から50万ドル(約5,000万円相当)を資金調達し、Trinity Venture Capital の支援を受けている。

<更新> 日本市場向けのローカライゼーションは、東京のモバイルアプリ開発会社 HEROZ によって提供されている模様

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