オンライン家庭教師の「速解先生」が正式ローンチ——学習塾や学校とも連携し、受験生向け年中無休Q&Aサービスを提供

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東京に拠点を置くスタートアップ「速解先生」は今週初め、受験生が質問したいときに、難関大学の学生がいつでも応えてくれるサービス「速解先生」を正式リリースしたと発表した。ユーザ(受験生)は3,000円のデポジット・チケットを購入し、60円/分の料金を支払うことで大学生(先生)に質問に応えてもらうことができる。言わば、家庭教師のオンライン版だ。

インターネットを用いた対面型教育サービスとしては、レアジョブラングリッチなどの英会話サービスが筆頭に上げられるが、(Schoo に代表される MOOC的なサービスは除いて)それ以外の教育分野で、対面型サービスがシステマティックかつ大規模に運営されているケースは、そう多くは例を見ない。これはおそらく、サービスのスケールが考えにくいか、そもそもサービスを構築しにくいか、のどちらかだろう。しかし、「考えにくい」や「構築しにくい」は、不可能であることとは同義ではない。ひとたび、サービスが軌道に乗れば、そこはブルーオーシャンである。

「速解先生」の創業者兼CEO の林直人氏に、今後のサービスの展望やこれまでの軌跡について話を聞いてみた。

世間には、予備校、塾、家庭教師など、あらゆる教育支援サービスがあふれています。受験生にとっては、学校で勉強をすることもできるでしょう。「速解先生」はどのような問題を解決しようとしているのですか。

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速解先生CEO林直人氏

弊社の一番の目的は、すべての人々に成功への機会を提供することです。この「成功」という言葉の定義は「なりたい自分になること」です。

この目標を達成するためには、居住地や親の経済状況、現在の学力に関わらず「なりたい自分になれる」ようなサービスを展開する必要があります。そのために居住地にとらわれずに、一流大学の学生から個別指導が受けられるインターネットによる指導を選びました。親の経済状況に関わらず指導が受けられるように3000円からの指導が受けられるようにしました。現在の学力に関わらず夢が叶えられるように、個別指導という指導法を選びました。弊社の「速解先生」という業態は、すべてこの目標・理念から生まれています。

蛇足ですが、私や共同創業者らのチームメンバーが皆、不登校・引きこもり経験を持っています。そうした経験もあり、私たちはこの企業目的を心から信じ、その実現のためにサービスを開発しています。

林さんは以前、「零円授業」というプロジェクトを展開されていましたね。このプロジェクトのコンセプトは、教育デバイドを世の中から無くすべく、無料で提供するという観点では、manavee に近いように思います。「零円授業」のときに考えられていたコンセプトが変化して「速解先生」になったのでしょうか。

「零円授業」の際は、良質な集団指導を無料で広げることで教育格差を無くすというコンセプトでしたが、教え子様の指導を通じて分かったことは、集団指導には限界があるということです。教え子様おひとりおひとりに寄り添い、教え子様が納得するまで指導することにおいては、やはり個別指導に強みがあります。

しかし、個別指導は一時間単位の受講が前提で、どうしてもコストが高く付くという側面があります。そこで、一回あたりの指導に掛かる時間を十分程度に少なくし、そのかわり質問に来ていただく頻度を多くすることで学習効果が上がるのではないかという仮説を立てました。10人程度の教え子様で実験してみたところ、9年間不登校だった教え子様が慶應SFCに合格される、国語偏差値40程度だった教え子様が早稲田大学の法学部に合格されるなどの実績が出ましたので、この仕組みをもっと多くの方に広げようと正式リリースに踏み切りました。合格実績が出てから今日までは、Skype連携ができるようにシステムを作り直したり、テストをしていたりということをしていました。

manavee 的なサービスと共存するサービスになるのか、ということについては、無料の動画授業に関しては、今後弊社でも展開していく考えです。弊社ではあらゆる商品は、お客様にとって切実な需要がある場面でないと決して買っていただけないと考えているからです。「24時間365日勉強の質問・悩みにすぐ対応するサービス」が切実な需要を持つ場面というのは、たとえば大学入試の過去問解説動画を見ている時ではないかと思います。ですから、こういった場面から流入を確保するための方策は、どんどんやって行きたいと考えています。

ベータ版ローンチから正式ローンチまでに、10ヶ月程度の時間を要しています。スタートアップとしては、少し長い期間のような気もするのですが、正式ローンチに向けたサービス改善などに時間を要したのでしょうか。

正式ローンチが遅れた理由としては、当初大手予備校と提携し、独自システムでβ版ローンチしたものの、講師のアクティブ率が上がらず、Skype と連携したシステムに作り替えたことなどが挙げられます。また、24時間365日複数教科に対応できるようにするために多くの登録講師を集める必要があったということもあります。

バリデーション(ユーザ検証)という観点では、教育系のサービスは、他業種のサービスに比べて、その仕組みで果たして教育効果が得られるかどうかの検証のために、いささか時間がかかる傾向はあります。速解先生の場合、「一回あたりの指導に掛かる時間を10分程度まで圧縮し、そのかわり質問に来ていただく頻度を多くすることで学習効果が上がる」という仮説を立てました。そして、昨年10月から今年2月にかけて、いつでも質問に来て良いという方針で教え子様への指導をさせていただき、その教育効果を検証しました。その結果として、9年間不登校だった教え子様が慶應大SFCに合格される、国語偏差値40程度だった教え子様が早稲田大法学部に合格されるなどの実績を上げましたが、ここまでいたるには約半年が必要でした。このように教育効果の検証は、他業種と比較すると時間がかかるものなのです。

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「速解先生」のビジネスモデルは、予備校や塾などを介して、ユーザである受験生にサービスを使ってもらう、B2B2C と考えてよいのでしょうか。

来年度まではB2C中心の展開を考えています。客単価を上げたり、ユーザの継続率を高めたりする上では、ブランドが前面に出るB2Cユーザーの方が魅力的ですが、企業としての信用を高める上ではB2B2Cというモデルが適切でしょう。来年度以降、B2B2Cでのサービス展開したいと考えています。

ユーザが講師を選ぶにあたっては、出身大学や得意教科などで絞り込めるようになっていますが、それらの要素と、人に物事を教えるのが上手かどうかとは、また別問題のようにも思えます。講師の採用基準や評価基準は存在するのでしょうか。

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採用基準としては、まず既存の講師からの紹介がなければ採用いたしません。現に弊社のサイトには、講師募集の応募フォームを設けていません。採用に際しては Skype か直接で面談をする、毎日指導法が書かれたメールマガジンを送る、指名を受けた回数・指導時間数・リピート率などを把握する、苦情をすぐ受けられるように私自身の携帯電話番号を公開するなどの取り組みをしています。サイト上に個別の評価レビューも公開していますが、ネガティブな評価があった場合、講師を務める大学生の就職活動にも影響を及ぼす可能性があるので慎重に考えています。

評価基準については、基本的に指名本数、それもリピートで指名していただいた本指名の本数が一番大きいでしょう。評価の高い講師に対しては、時給を上げるというよりも、大手予備校との提携時のコラボレーションにより、映像授業講師など別の単価の高い仕事を優先的に提供するなどして、彼らの働きに報いたいと考えています。

へき地に住んでいたり、家庭の事情で困難な状況にあったりしても、MOOC や速解先生などの登場によって、付加価値の高い教育を受けやすい環境が整いつつある。社会的に必要なサービスだから、ビジネスとして成立するかというと、残念ながら、必要条件ではあるが十分条件ではないので、このスタートアップの将来を保証するものはない。しかし、教育が立ち行かない国は滅ぶわけで、そうすると、我々もスタートアップをやっていられなくなってしまう。「速解先生」のもたらす良い影響の幾ばくかが、日本の教育環境の向上につながることを願ってやまない。

速解先生は、シードラウンドでこれまでに、サムライ・インキュベートと役員から870万円を資金調達している(創業者拠出分を除く)。今回の正式ローンチに際し、日本の数多くのスタートアップで役員を歴任した公認会計士の造田洋典氏をCFOに迎え、数名のエンジェル投資家にも第三者割当増資を実施したことを明らかにしている。この分野には、競合として、スマートフォンで家庭教師サービスを提供する Mana.bo などが存在する。